コロナを機に教育改革 オンライン×対面で学び充実ダイバーシティ進化論(出口治明)

2020/6/27
画像はイメージ=PIXTA
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教育の現場で広がったオンライン化の波は、これまで弱者と思われていた人や組織にとってプラスに働く可能性がある。例えば地方の大学でも、魅力的な授業を公開できれば学生が集まりやすくなる。学校に行くことが難しい生徒も、オンラインなら勉強できるかもしれない。社会人にとっては学び直し(リカレント)がやりやすくなるだろう。

立命館アジア太平洋大学(APU)は上期、全ての授業をオンラインで提供している。学生に意見を聞いてみると「質問しやすい」という前向きな答えがあった。大教室では手を挙げにくいが、オンラインなら周りに分からないよう教員だけに質問することができるからだ。教員も一人ひとりとコミュニケーションが取りやすいようだ。

APUは学生の半分が外国人留学生だ。今は約半数が母国に戻っているが、インターネット環境があればどこにいても授業を受けられる。オンライン授業は初めてで教員も周到に準備をしており、対面と遜色ない授業ができそうだ。

ただ、全てがオンラインで代替できるわけではない。生物心理学者の岡ノ谷一夫・東大教授によれば、教員に対して畏怖の念を抱いている学生ほど学習のモチベーションは高い。だがオンラインでは近づきやすさと近づきにくさのバランスが表現できず、学生は畏怖を感じにくいという。

ピア・ラーニング、つまり学友と共に学ぶ観点も重要だ。人間はそもそも怠け者だが、仲間と競い合ったり励まし合ったり議論し合ったりすることで初めて学習できる。ピリッポス2世は、子どものアレクサンドロスの講師にアリストテレスを招いた。その際、マンツーマンではなく貴族の子弟も集めて一緒に学ばせた。だから後に彼らは優れた幕僚となり、アレクサンドロス大王の東征を支えたのだと僕は思っている。

電気自動車が登場したことでガソリンと電気のハイブリッド車が生まれたように、オンラインと対面を組み合わせることで今後、よりよい学びが生まれると期待している。

企業も同じだ。夜遅くまで残業することが難しい子育て中の社員でも、在宅と組み合わせれば仕事がしやすくなる。通勤時間が減り、家族との時間が増えれば働くモチベーションも上がるだろう。経営者は、社員一人ひとりが強みを発揮できるような仕組みを作る必要がある。

出口治明
立命館アジア太平洋大学学長。1948年生まれ。72年日本生命に入社、ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを務める。退社後、2008年にライフネット生命を創業し社長に就任。13年から会長。17年6月に退任し、18年1月から現職。『「働き方」の教科書』、『生命保険入門 新版』など著書多数。

[日本経済新聞朝刊2020年6月22日付]

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