ポストに花が届く サブスクで費用抑えて暮らし彩る
一定金額を払うことで、サービスや商品を契約した期間、継続的に利用できる権利を得るサブスクリプション(サブスク)。音楽や動画配信サービスがすでに有名だが、最近では、自宅を彩る「モノ」を対象にしたサブスクが人気を集めている。
「Bloomee LIFE」は、季節の花が自宅のポストに届く「花の配送サブスク」だ。2016年にサービスを開始し、現在は3万世帯以上が利用している。
最も短い場合で4回の配送を受けることが契約の条件。配送の頻度は毎週か隔週で、料金は花の本数や内容により1配達500円(税抜き・送料別)から。
サービスを運営するCrunch Style(東京・渋谷)の武井亮太代表によれば、花がポストに届くサービスは極めて珍しい。生花店が選んだ花がブーケになって届き、そのまま飾れる。「仕事や家事で生花店に行く時間がなくても楽しめると好評だ」と武井代表。
契約者の8割がこれまで花を飾る習慣を持たなかった人たち。30~40代の女性が中心で、花をきっかけに子どもや夫との会話が増えたという声も聞かれる。
武井代表は「つぼみが色づいたり開いたり、花は毎日表情を変える。時がたてば枯れるので他のインテリアより取り換えの頻度が高く、その変化が会話を生むのだと思う」と説明した。
一方、絵画など現代アートの分野では「Casie」(かしえ)というサブスク型レンタルサービスがある。絵のサイズによって月額2178円(税込み)など3種のプランが設定され、1契約あたり1度に1点の現代アートが自宅で借りられる仕組みで、複数プランを同時契約する人も。作品の交換は最速で毎月1回だが、3~4カ月ごとに替える人が多い。
運営会社であるCasie(京都市)の藤本翔代表は「用意した作品は約7000点。利用者にはアートビギナーも多く、種類が豊富なぶん選びきれない人もいる」と説明する。このため利用者の好みにあわせて会社側がセレクトするサービスもあり、約6割が利用している。
作品と共に作家のプロフィルやSNS(交流サイト)のアカウントも知らされるので、利用者が作家に直接感想を届けることもできる。作品利用中は作家に報酬が支払われるので、創作活動の資金的な援助にもつながる。
「経済的理由から夢を諦める作家は多い。私自身も画家の父が生計を立てるのに苦労していた姿を見ていたことが、サービス立ち上げのきっかけだった。駆け出しの作家が創作を続けるための力になりたいと思う」と藤本代表。
家具・家電のサブスクもある。デザイン家具やブランド家電を10万種類以上取り扱う「subsclife」だ。転職や引っ越し、結婚などライフステージが変化する際に利用を始める人が多い。
subsclifeのシステムは、利用する家具や家電一点ごとに3~24カ月までの契約期間と料金を定額で決める方式。最安の場合、税込み月額500円から契約可能で、長く借りても支払額が製品定価以上になることがないよう料金設定が工夫されている。
利用者の一人の40代女性は、勤務先から独立するとき活用を始め、職場兼自宅の環境を整えた。「サブスクなら初期費用を抑えながら憧れの家具や家電が使える。これがなかったら、量販店で一番安い家具家電を買っていたかもしれない」という。
運営会社subsclife(東京・渋谷)の町野健代表は「安い家電を買い、壊れたら買い直す人は多いが、資源の持続可能性の観点からも家電や家具をサブスクで利用できるようにしたいと考えた」と話す。
在宅ワーク拡大にともない、デスクやワーキングチェアの人気が高まり、企業が社員の福利厚生として同社のサービスを活用する例もある。仕事の合間の息抜きのためにコーヒーメーカーの利用も多くなったのでは。在宅時間を豊かにするため、サブスクを使ってみるのもよいだろう。
(ライター かみゆ編集部 小沼 理)
[2020年6月20日付 日本経済新聞夕刊]
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