日経Gooday

高すぎる目標を設定するから嫌になる

それでは、筋トレが続かない人は、そんな経営者とは違う、消極的な人たちでしょうか? 私はそうは思いません。

筋トレ嫌いという人は、多くの場合、トレーニングの目標を高く設定してしまっているのです。

私たちトレーナーが最初にクライアントの要望を聞くとき、挫折しやすい人は「2週間でお腹を凹ませたい」「1カ月で体重を10kg落としたい」など、非常に高いハードルを掲げる傾向があります。

高い目標をクリアするためには、食事のコントロールは厳しくなり、トレーニングの内容も非常にハードになります。すると、チャレンジしても失敗に終わり、ドーパミンは分泌されず、達成感を得られません。

こうした挫折の経験が重なると、トレーニングそのものが嫌いになってしまうのです。達成感もなく、筋トレのつらさだけを味わうのですから、当然でしょう。 逆にいうと、「正しい目標設定」さえできれば、それまで筋トレが苦手だった人も、筋トレにハマれる可能性があります。

私は、クライアントと話し合って、その人が達成できる可能性が50%ぐらいになるように目標を設定します。

達成できる可能性が低すぎるのは問題ですが、簡単にクリアできる目標にしてしまうと、達成感があまり得られません。だからこそ、50%ぐらいがちょうどいいのです。

経営者は、この目標設定の見極めがうまい人が多く、筋トレでも着実に成果を出しているように感じています。ビジネスで失敗すれば損失も大きいですし、かといって簡単に実現できる目標を掲げていても会社は成長できません。ですから、目標の設定に慣れているのでしょう。

達成できる可能性を「50%」に調節

相談者の方にお勧めしたいのは、筋トレを始める前に、まずは具体的なトレーニングプランを書き出してみることです。

例えば、腕立て伏せと腹筋運動を、「20回×3セット、週4日」やるのは難しいかもしれませんが、「20回×1セット、週1日」では簡単すぎるでしょう。それなら、「20回×2セット、週3日」なら、ちょうどいい目標設定かもしれません。

そして、目標が「楽々と」できるようになったら、回数や負荷を上げたり、種目を変えたりして、段階的に目標のレベルを上げていきます。そうすれば、筋トレによって繰り返し達成感を得られるのです。

どうしても目標設定がうまくできないという場合は、最初だけでもトレーナーなどの専門家に相談するといいでしょう。そのうち自分自身で目標設定ができるようになり、一人でも筋トレが続けられるようになります。

さて、多くの人がトレーニングの目標を正しく設定できないのは、メディアからの影響が大きいと感じています。

「1日5分でやせる」「30秒でくびれる」などのうたい文句が、あちこちで飛び交っているため、「1週間で3kgぐらいやせられるでしょう」などと、過剰な期待を抱いてしまうのです。

ところが、実際に始めてみると、そう簡単にはいきません。運動しても成果が出ないので、当然、達成感も得られないまま、失敗体験というネガティブな印象だけが残ってしまうのです。

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誰だって運動する前は嫌なもの