アフターコロナのアイドル 脱・事務所、SNSで輝きツインプラネット・矢嶋健二社長に聞く

コロナの影響でアイドルのライブも様変わりしそうだ(ツインプラネット所属のアイドルグループたけやま3・5)
コロナの影響でアイドルのライブも様変わりしそうだ(ツインプラネット所属のアイドルグループたけやま3・5)

新型コロナ感染症の拡大は様々なビジネスを変えつつある。エンタメビジネスも例外ではなく、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が重視され、所属事務所に縛られない活動が可能になったり、アイドルのライブも非接触、社会的距離が前提となったり、大きく変わりそうだ。タレントの鈴木奈々やアイドルグループ、SKE48の須田亜香里らが所属する芸能事務所、ツインプラネットの矢嶋健二社長に、アフターコロナで変貌するエンタメビジネスの行方を聞いた。

――コロナによって芸能人の活動も大きく変わりました。

「タレントにとってテレビの重要性が低下し、ユーチューブ、インスタグラム、TikTok(ティックトック)などSNSを活動の場として重視するようになった。自粛期間中に芸能人のユーチューブ動画が急増し、テレビに出なくても有名になれる流れを一段と加速している。ある著名女優がインスタでトークライブをやっていたら、仲の良い大物女優がどんどん乱入してきて、大盛り上がりになった。テレビではあり得ない組み合わせがSNS上なら、簡単に実現する。位置付けとしては個人のSNSに、友人である個人がからんだだけなので、所属事務所が規制するのは難しい。会社の枠組みを超えた、まったく別の世界が広がっている」

――こういう新しい流れをビジネスチャンスと捉えているのですか。

やしまけんじ 1980年京都府出身。大学中退後、上京し22歳でレコード会社勤務、2004年つばさレコーズ(現つばさプラス)代表取締役。06年26歳の時に株式会社ツインプラネット設立、代表取締役

「このたびビジネスパーソナルシップという新しいサービスを始める。個人で活動するタレント、他の事務所に所属するタレントでも、その人にふさわしい仕事、活躍の場を提供する。スポーツ選手、文化人も対象だ。コロナによって会社を離れ、フリーになる人が多い。隠れた才能があっても、それに気づかなかったり、売り出し方がわからなかったりする場合もある。そんな人材を会社や所属といった縛りから自由な世界で輝かせたい」

「営業活動の支援、売り込みだけでなく、SNS上の誹謗(ひぼう)中傷、権利侵害などから守るリスク管理にも対応する。活動資金が必要な場合、プロジェクトファイナンスなど資金調達の手助けもする。経理や納税、現場へのマネジャー派遣なども担う。フリーで活動するタレントはこのあたりが不安なので、需要は大きいと思う。他の事務所に所属しているタレントでも、これまでと違う路線で売り出せばうまくいくと思う場合や、今までと違うファン層を開拓したい場合など、ニーズはあるはずだ。大物シニアタレントから、SNSによる発信が不得手なので、そこをサポートしてほしいという要請もある」

――ビジネスパーソナルシップの対象となる人材はどのように発掘しますか。

「候補者は社長の私が面談し、各分野の専門家の意見を聞いて決定する。光る個性や技能があり、セルフプロデュース力があり、新しいファン層を開拓できるような人だ。例えば、弊社所属タレントの須田亜香里は、個性を生かし、新しい世界を開いた。須田は接客の能力が高かった。そこを生かし旅館の女将修業をするという企画を立てたら、すぐに地元愛知県の老舗旅館との協業が実現し、地元テレビ局も乗ってきた」

「これまでのタレント活動は、例えばCMの仕事だったら、まず新商品があり、その商品にふさわしいタレントは誰だ、という流れだった。これからは、まずタレントありきで、そのタレントの個性や技能が生かせる商品は何か探し、当該企業に売り込むといった、これまでと逆の流れが増えてくるだろう」

――なぜそのようなビジネスモデルを考えたのですか。

「ツインプラネットはもともと、広告代理店からスタートしている。芸能プロダクションの機能は後から付いてきた。今も社員の6割は広告やマーケティングのプロだ。取引先には多くの一般企業がいる。だからタレントありき、そこから適合する商品や企業を探し、売り込むという流れが実現できる。逆に言うと、自分の個性がはっきりしなかったり、持ち味、勝負できる世界がなかったりするタレントは、アフターコロナの時代に埋没する」

――コロナの影響でアイドルのライブ活動も大きく変わりそうです。

「握手会や(即席写真を撮る)チェキ会などは当面、難しい。ライブも無観客で再開するから、ネット配信が基本になるし、グッズ販売もネットにならざるを得ない。弊社はグッズの販売サイトを開設した。自粛期間中、インスタでライブを配信するアイドルも登場した」

「お客さんを入れたライブが再開できても、収容人数は大幅に減る。ソーシャル・ディスタンス・ライブだ。そうなると、ライブの価値観を高めるしかない。回数を減らし、席数を減らし、プレミアム感を高めて、チケット代を高くする。これまでのアイドルは頻繁にライブを開いた。ライブ会場でファンになって、そのアイドルのツイッターをフォローする、といった流れが多かった。アフターコロナの時代は、まずSNSで気になるアイドルができ、生で見たいと思ったら高いチケットを購入してライブ会場に足を運ぶという、これまでと逆の流れになるだろう」

「アイドルが大人数でステージに上がることも難しくなり、ファンの声援で盛り上がるという場面も少なくなるだろう。アイドルにとって、高いチケット代を払って見に来てくれるファンのために、これまで以上に魅力あるステージをみせないといけないし、掛け声で盛り上がらなくても満足させられる歌唱力やダンス力、ライブの構成力などが重要になる。真の実力がないと、アフターコロナの時代、アイドルは生き残れなくなる」

(聞き手は編集委員 鈴木亮)

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