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孤独な南極探検隊の体験に学ぶ コロナ乗り切るヒント

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ナショナルジオグラフィック日本版

南極探検家のアーネスト・シャクルトンは1915年、自身の船エンデュアランス号が流氷に閉じ込められ、沈没し始めたとき、最小限の荷物だけを持って脱出するよう隊員に命じた。上限は1人当たり約1.8キロだ。

シャクルトンは唯一の例外として、気象学者として参加していた陽気な若者レオナルド・ハッセーの所有物であるウィンザー社の5弦バンジョーを認めた。レパートリーは限られていたものの、ハッセーは南極の長く暗い夜に隊員たちを楽しませ続けた。シャクルトン自身も、ストレスと孤立が士気に及ぼす影響を痛感しており、ハッセーが演奏し続けることを望んだ。

シャクルトンはハッセーの音楽を「心の健康を維持する薬」と表現している。「私たちはそれを必要としています」。その後、探検隊は過酷な数カ月を過ごすことになるが、ハッセーは約5.5キロのバンジョーを携行し、週1度のコンサートや合唱会で隊員たちを元気づけた。

こうした初期の南極探検隊のような経験をしたことがある人はほとんどいないだろう。万事順調なときでさえ、彼らは家族や友人、さらには人間社会から1年以上完全に切り離されることもあった。氷と暗闇、厳しい寒さしかない空間で、自分たちの力だけで生きていかなければならず、状況が悪化したときは、文字通りとてもひどい状況に陥る恐れがあった。

1897年、南極で初めて越冬したベルジカ号の乗組員のなかには、単調な生活と孤立が原因で、精神に異常をきたした者もいた。シャクルトンはこの悲しい物語を思い出し、エンデュアランス号を放棄し浮氷に降り立つとき、バンジョーを持っていくことに決めたのだ。

それから約1世紀。世界は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに直面している。ストレスと孤立への対処法について、シャクルトンのような南極探検家たちの体験から学べることは何だろうか?

「興味深い問題です」と言うのは英国の心理学者ロン・ロバーツ氏だ。ロバーツ氏はロンドンにあるキングストン大学の教授で、南極での孤立を題材に論文を執筆している。「彼らの世界は私たちの世界と全く違うものでしたが、彼らの体験は今の私たちと大いに関係があります。ふれあい、意思疎通、運動という人間の基本的欲求は今も変わっていません」

シャクルトンは1901年、ロバート・スコット率いるディスカバリー遠征で初めて南極に行き、人間の基本的欲求を奪われることの大変さを知った。スコットが遠征隊に課したビクトリア朝の海軍の厳格な規律にいら立ったシャクルトンは、気象学者が近くの丘へ出て行う観測を毎日手伝った。シャクルトンが船から逃れるために考え出した策は、現在COVID-19による自宅待機命令に従い、外出を自粛している人々の心境に通じるものがある。

外界とのやり取りは月に1度、100語の通信

英南極調査所の副所長を務めたジョン・デュードニー氏は1966年、21歳で初めて南極に行った。「これから何が起きるのか見当もつきませんでした」とデュードニー氏は語る。「サウサンプトンを出港し、徐々に遠ざかる英国を振り返り、『私は何ということをしたのだろう?』と思いました」

デュードニー氏は2年半にわたり、英国の南極基地だったファラデー基地で12人の隊員と暮らした。夏に補給船がやって来る以外は、世間から完全に切り離されていた。基地に到着して2年目、デュードニー氏は司令官に任命された。

75歳になったデュードニー氏は今、ケンブリッジ近郊の自宅で自主隔離しながら、家族や友人と(ビデオ通話サービスの)「フェイスタイム」で連絡を取り合っている。1960年代のファラデー基地とは大違いだ。

「当時、家族や友人との唯一の接点は、月に1度だけ送ることが認められていた100語の無線電信でした」とデュードニー氏は振り返る。「200語の無線電信を受け取ることもできました。ただし、いずれにしてもプライバシーはありません。無線通信士がモールス信号でやりとりしていたためです」

デュードニー氏はさらに、「外の世界のニュースが入ることはほとんどありませんでした」と語る。「世界の出来事や映画、音楽に関しては、私にとって、1967年と1968年は空白の2年間です」

それでも、デュードニー氏は空白の2年間を乗り切り、南極調査所でキャリアを積み、極地メダルを授与されるという成功を収めた。「南極でうまくやるためのこつは、今の自分に満足することです」

「独房に監禁されているような孤独」

米海軍のリチャード・バードは1934年、南極ロス棚氷の気象観測基地でトラブルに遭い、ひとり孤独な冬を過ごした。バードは自伝「南極でただひとり(Alone)」のなかで、極度の孤立状態にあっても「ある程度幸せに生きられる人は、冬眠する動物が自分の脂肪で生きられるように、自分の知的資源だけで生きることができる人です」と述べている。

バードは孤独、極寒、ストーブの一酸化炭素に苦しみながらも、心身を忙しく保つ習慣を考案し、長い冬の暗闇、閉鎖空間、マイナス60度の気温に耐えた。

「秩序と調和のある習慣は、私が置かれた特殊な環境に対する唯一の防御でした」とバードは記している。「独房に監禁されているような孤独を感じることは無益な習慣です。私は忙しい日々を送ろうと努力しました」

バードは食事中、暇つぶしのために持参した小説を読みあさった。「一人で黙々と食べる食事に喜びはありません」とバードは記す。「食べながら読書することが習慣になりました。そうすることで、しばらく完全に没頭できます。読書しない日は、肉の塊を食べながら思い悩む野蛮人のような気分です」

心理学者のロバーツ氏によれば、初期の南極探検隊たちの体験から最も学ぶべきことはおそらく、探検家たちが孤独、退屈、絶望をかわすために考え出した習慣よりも、未来を見据え確かなロードマップを描くため、シャクルトンが発揮したリーダーシップだという。自身の船が氷の下に沈んだとき、シャクルトンは軽い調子で隊員たちに言った。「船はない。備蓄もない…だから、家に帰るんだよ」

「それがシャクルトンの才能でした」とロバーツ氏は話す。「彼は希望や信念を植え付け、ハッピーエンドになるビジョンを描き出し、それを実現するための確かな計画を示すことができました。私たちがコロナ後の未来について考えるときも、そうした資質が自分たちのリーダーを評価する際の基準になるでしょう」

(文 ROFF SMITH、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年6月13日付]

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