筋肉維持・手軽・地方発 日経POSでみるヒット食品
「日経POSセレクション2020」発表
日本経済新聞社は小売業のPOS(販売時点情報管理)データに基づき、この1年間に売り上げを大きく伸ばした人気商品「日経POSセレクション2020」を発表した。特に消費者の支持を集めた「プレミアム賞」の10商品や「ゴールド賞」50商品、「セレクション賞」のそれぞれで、筋肉量の維持をうたった商品や、調理の手軽さや健康に良い地方発の商品などが名を連ねた。
高タンパク、世代超えニーズ
「筋肉貯金」「筋肉体操」など筋肉にまつわる言葉を日々、耳にするようになった。そんな中、注目された商品がカニカマだ。テレビの情報番組で高タンパク食材として取り上げられると、売り上げが急増。ゴールド賞の紀文食品「マリーン3パック」は小分けになっている使いやすさも相まって人気となったようだ。
筋肉というとアスリートなど特別な人向けの印象が強いが、筋肉量の維持が転倒や骨折防止にも有効だとの認識が広がり、幅広い世代への需要につながっているようだ。
セレクション賞のダノンジャパン「ダノンオイコス」は昨年、タンパク質を軸にブランドをリニューアル、パッケージもヨーグルトには珍しいスポーティーな黒に刷新し、売り上げを伸ばした。マラソン大会の協賛やSNSの活用でスポーツを楽しむ層への認知を広げている。4月には全アイテムでタンパク質を10グラム以上に増やし、プロテイン路線を加速している。
日常的に、より自然に手軽にタンパク質を摂取したいというニーズは高まっている。既存商品でも高タンパクを前面に出す商品は増えそうだ。
調理の手軽さで全国区
家庭でなじみの食材を、調理の手軽さをアピールして、消費者の心をつかんだ地方企業発の商品も目立った。セレクション賞の相模屋食料(前橋市)「おだしがしみたきざみあげ」は、業務用に出荷していた常温保存可能な油揚げを、一般家庭向けに商品化したもの。甘辛く味付けしてチャック付きの袋につめた。あらかじめ刻んであるので包丁がいらず、必要な分だけ手早く使える。従来の商品にない便利さが評判になり、2018年の発売以来売り上げは右肩上がり。健康的なスナックとして酒のつまみやおやつとしてそのまま食べている人も多いという。
同じくセレクション賞の伊那食品工業(長野県伊那市)「スープ用糸寒天」は、寒天の新しい食べ方を提案した商品だ。汁物にひとつまみ直接入れるという手軽さで、健康意識の高い40~70代の女性を中心に人気を集めている。
19年はテレビの情報番組で寒天の健康効果が取り上げられたのも追い風になり、さらに売り上げが拡大した。寒天は低カロリーで食物繊維が豊富な食材。ゼリーなど一般的な食べ方とは別の提案で消費者の支持を得た。
キッチンペーパー、広がる用途
家庭用品の分野ではキッチンペーパーで大きな変化があった。ともにゴールド賞の王子ネピア「ネピア 激吸収キッチンタオル」と大王製紙「エリエール 超吸収キッチンタオル」は、水や油をたっぷり吸収しても破れにくい点で人気に。両商品はエンボス加工や巻き方の工夫でしのぎを削っており、互いに譲らない形で認知度を高めている。
セレクション賞の日本製紙クレシア「スコッティファイン 洗って使えるペーパータオル」も売り上げを伸ばした。洗うことで2、3回使用でき、1枚で野菜の水切りに始まり、食器拭き、台拭きと食事の準備から片付けまでの一連の作業ができる。商品特性を理解してもらうためのサンプル配布も奏功したようだ。同社によると「窓や床の掃除、自転車等のメンテナンスなど、従来品より使用シーンが増えた」と分析する。
キッチンペーパーはここ数年市場が拡大する。日経POSデータによると、2019年度の来店客1000人当たりの販売金額も前年度比18.3%増と大幅に伸びた。吸収力向上、長尺化などが成長を支えており、注目の分野だ。
260万点から選出 販促活用も
「日経POSセレクション」は、スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアのPOSデータを集計した「日経POS情報」を使い、2019年4月から20年3月までにスーパーで販売された加工食品・飲料・酒類、家庭用品など約260万点の中から選ばれた。
来店客1000人当たり販売金額の前年度比伸び率、店舗カバー率、日経商品分類の小分類(2000分類)内順位、メーカー別シェア伸び率など4つの指標をもとに選出した。
セレクションは伸び率の高さなどから10商品が「プレミアム賞」、50商品が「ゴールド賞」、それ以外に「セレクション賞」がある。各賞は日本経済新聞社に許諾を得たうえで、商品パッケージや店頭販促(POP)など各種販促に活用できる。
例えば、浜乙女(名古屋市)の「遠赤焙焼 味のり てりやき」は18、19年と連続して「セレクション賞」に選出された。同社は販促のために店頭POPや商品パッケージにエンブレムを利用した。「商談の際、日経POSセレクションは大いに役立った」(同社)という。同商品は19年度も売り上げ好調で「セレクション賞」の連続選出となった。5月の来店客1000人当たり販売金額も前年同期比47%増と勢いを増している。
丸大食品は19年に選出された「サラダチキン切落し ハーブ」と「ビストロ倶楽部 ビーフカレー 中辛」で、商品パッケージや店頭POPだけでなくホームページなどでも日経POSセレクションのエンブレムを使用した。「競合商品との差別化に利用できた」という。
■家庭用品部門を新設
従来は食品・飲料・酒類のみだったが、今回から家庭用品も選出対象とした。シャンプー、台所用洗剤、キッチンペーパーなど日常的に使用する商品や、殺虫剤に代表される季節ごとに大きく売り上げを伸ばす商品などが対象。幅広い分野で売り上げ好調の商品がわかるようになった。
[2020年6月17日付 日本経済新聞朝刊]
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