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料理で自分を表現、もっと自由でいい 成沢シェフ

NARISAWA 成沢由浩オーナーシェフ(下)

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NIKKEI STYLE

「ガストロノミー(美食)とサステナビリティ(持続可能性)の融合」をテーマに掲げ、日本の里山にある豊かな食文化を尊重する「イノベーティブ里山キュイジーヌ」(革新的 里山料理)という独自のジャンルを築き上げた「NARISAWA」の成沢由浩シェフ。2018年には食文化の世界的権威「国際ガストロノミー学会」(本部フランス)が選ぶシェフの最高賞、「国際グランプリ」を受賞。アジアの料理人では初めてだ。成沢シェフは深化することで進化すると話す。(前回の記事は、「美食をあきらめない、今は個を極めるとき 成沢シェフ」)

――09年、約1000人の美食家(フーディー)らによる投票でランキングする「世界のベストレストラン50」に20位で初ランクイン。以降11年連続で入賞し、世界のガストロノミー業界に大きな影響を与えています。

ガストロノミー(美食)とサステナビリティ(持続可能性)の融合をテーマに掲げたのは、ちょうど同じころです。畑や海、家畜の現場を見る中で、これでは次の世代につなげられないという危機感を抱くようになりました。生産者や先人の話を聞いても環境は急激に悪化しています。森に元気がなくなり、海に栄養が行かなくなる。自然のサイクルが崩れていくことを感じました。料理は自然の恩恵を受けている以上、環境に責任を持つ必要があります。

そんな思いで掲げたテーマに最初に反応したのは海外のジャーナリストとシェフでした。それは何なのか、料理で表現して欲しいと。海外でも同じような意識を持つ人がいたのでしょう。学会のテーマも技術から哲学へと移っていき、頻繁に呼ばれるようになりました。ステージで料理を作るのではなく、環境問題やスタッフの働き方、社会貢献のあり方などをテーマに話すのです。

10年のブラジル・サンパウロの学会ではすばり、サステナビリティがテーマでした。シェフや学者、国際機関の関係者などが集まって議論します。ここから5年ほどは毎月海外に出向き、イタリアのマッシモ・ボットゥーラやデンマークのレネ・レゼピなど、同じ問題意識を持ったシェフらと毎月どこかの学会やイベントで会い、議論しました。

当時の日本ではまだ、フランス料理や中華料理など、きちんとジャンル分けされたインターナショナルな料理が日本でもてはやされていました。しかし食材を輸入に頼っており、伝統的な食文化や産業が失われていくのが気がかりでした。確かに何百年も前にできあがった料理は長い年月をかけていろいろな人が研究しているので体系化されており、料理のイロハを学ぶには適しています。偉大な料理の歴史を守ることは大切だけれど、それだけでは誰が作っても同じです。

もっと自由でいい。自分は何を表現するのか、突き詰めると自分のアイデンティティーに行き着きます。体系化されていない料理でも、その土地で生まれた料理には理由があります。ペルー料理もチリ料理も、現地の料理人は地場の食材にこだわり、食文化が人々のアイデンティティーと深く結びついているのです。

私自身は「これからは自国の食文化を深く掘り下げていく時代になる」と感じました。では自分は日本で何を表現するのかといえば、日本で生まれた料理です。日本の地理と気候条件から生まれる料理、それは日本料理とも違います。日本人は昔から自然と近い場所に暮らし、自然と共生してきました。人と自然が共に作り上げたのが里山文化です。

でもガストロノミーを諦めてはいけません。よりおいしく、楽しく、美しく。ガストロノミーが入ったイノベーティブな料理、それが「イノベーティブ里山キュイジーヌ」です。

ただ当時の私の料理は外国人には喜ばれましたが、日本のお客様にはあまり理解されませんでした。「これは何料理なの?」と。フランス料理でも日本料理でもない、ジャンルを超えた先にあるガストロノミーの世界を面白がってくれるようになったのはこの5年くらいです。「日本料理より日本を感じられる」と言われるようになりました。

―――最近は日本での活動が増え、2年前にはレストランのほかにバー「BEES BAR by NARISAWA」も運営するなど活動の幅を広げています。

レストランには音楽も絵もありません。純粋に料理を感じ、森を食す場です。例えば「森のエッセンス・里山の風景」というメニューでは木のだしを提供します。木にはそれぞれ特徴があり、最終的に選んだのはナラとスギのブレンドでした。考えてみればナラはワインやブランデーのたるに使われ、スギは日本酒のたるに利用されています。昔の人たちはアルコールに木で色や香りをつけ、森を楽しんできたのです。バーを開いたのは、レストランとは違う形で森を楽しめないかと考えたからです。バーには森の写真を飾り、ウイスキーやワイン、日本酒などを楽しんでもらっています。

――その「BEES BAR by NARISAWA」で5月末から、地方の飲食店を招いたPOP UPイベントを始めました。第1弾は富山のすし店「鮨し人」。店主の木村泉美さんは「これまで9割が東京と海外からの来店客だっただけに、東京で営業する機会をもらえて助かった」と話していました。

飲食店が厳しい状況にあるのは世界共通ですが、日本のガストロノミーを見ると東京以上に地方が厳しい。外国人と東京からの来店客が多いので一足先に緊急事態宣言が解除されてもすぐに回復できるわけではない。もともとバーは若いシェフや地方の店主などがイベントなどで使えるようにしたいとも思っていたのでいい機会でした。

8日間のイベントでしたが、毎日一緒に過ごす中で、世界中の人がなぜすしが好きなのか考えました。やはりカウンターを挟んだ主人との関係性があるのではないでしょうか。タイミングを見ながら出来たてを食べてもらい、自分で客に説明する。そのホスピタリティが魅力であり、作り手と食べ手の関係性についてとても考えさせられました。料理を食べておいしいのはもちろん大切。でもコミュニケーションも食事の魅力の1つです。

木村さんはコメを炊いている間もずーっと火を見ていて微動だにしない。そういった姿勢からも多くを学びました。変化することは悪いことではありません。見渡せば自分の周りにも先生はたくさんいます。何歳だから完成するというものではありません。今自分が何をすべきか、人の素晴らしいところを見ながら考え、これからも前に進みたいと思います。

成沢由浩(なりさわ・よしひろ)
愛知県常滑市出身。洋菓子店を営む実家で育ち、高校卒業後にフランス、スイス、イタリアと欧州を渡り歩いて腕を磨いた。世界の美食家らが選ぶ「世界のベストレストラン50」は11年連続で選出。2013年から始まった「アジアのベストレストラン50」は初回に1位を獲得して以来、8年連続で10位内にランクインしている。ミシュランガイド2020は二つ星。2018年に国際ガストロノミー学会(本部フランス)が選ぶシェフの最高賞「国際グランプリ」を受賞。51歳

(中村奈都子)

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