検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

美食をあきらめない、今は個を極めるとき 成沢シェフ

NARISAWA 成沢由浩オーナーシェフ(上)

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

東京・南青山にあるレストラン「NARISAWA」は、世界中の美食家(フーディー)たちが旅の目的地とするデスティネーションレストランだ。その店でしか味わえない料理を求め、世界中を飛び回るフーディー約1000人の投票でランキングする「世界のベストレストラン50」に、日本では唯一11年連続で入賞している。オーナーシェフである成沢由浩氏は、日本の里山にある豊かな食文化と先人たちの知恵を生かした「イノベーティブ里山キュイジーヌ」(革新的 里山料理)という独自のジャンルを確立した。新型コロナウイルスの影響で外国人客が激減する中、ガストロノミー(美食)の世界はどう変わっていくのだろうか。

――店に対する休業要請や人々の外出自粛によって飲食店は大きな痛手を受けました。訪日外国人客も激減し、緊急事態宣言が解除されても来日客が戻るには時間がかかりそうです。

レストラン「NARISAWA」はこれまで、外国人客の割合が80~90%でした。時には全員が外国人客で「各大陸からお客様がいらしている」なんてことも。3月に入って外国人客は減りましたが、代わって日本人客が増えました。ところが中旬になると日本人客も外出を控えるようになり、大変なことになってきたなと感じました。

とはいえ立ち止まるわけにはいきません。1軒のレストランにはシェフとスタッフだけでなく、様々な生産者が関わっているからです。私たちは約200軒の生産者と取引をしていますが、今は大量のフードロスで食材が廃棄されています。店は席数を半分に減らし、18時ラストオーダーで営業を続けました。

スーパーなどでは野菜や肉が売れているようですが、レストランと取引する生産者は自然農法や有機栽培などこだわりの食材を作っており、一般の流通にはなかなか乗りません。だからレストランは営業を継続する必要があるのです。生産者と消費者を直接結び付けるサイト「keep in touch with farmers」も立ち上げました。

――4月からは高級な持ち帰り商品の販売を始めました。その狙いは何ですか。

外出自粛を余儀なくされているとはいえ、人は生きている限り毎日食べ続けます。それは家でもレストランでも同じこと。だったら形を変えて食事を提供すればよいと考えました。最初はバーの「BEES BAR by NARISAWA」(東京・港)でカジュアルなテークアウト商品を販売しましたが、同様の商品は多くの店で販売しています。

NARISAWAらしさとは何か。店にはこれまで、誕生日や結婚記念日などの特別な日に利用されるお客様がたくさんいらっしゃいました。外出を控えている間にも記念日は訪れます。プロが作るごちそうを食べたいと思うときもあるでしょう。そうしたシーンに楽しんでいただけるよう、自宅で楽しめるごちそうを作ることにしました。

現在は主に1万5000円(税込み)、2万5000円(同)、3万5000円(同)の3種類を販売しています。いずれも8種類の日替わり料理を盛り付けています。どれもメーンに近いボリュームのある料理なので、夫婦でシェアする方もいます。持ち帰りのほかにデリバリーや宅配便での発送も手掛けており、それぞれの時間に合わせて作っています。食材の調達量はコロナ前より多いくらいです。生産者も驚いています。

発売してからの2カ月間でメニューは3回変えました。5月なら山菜やホタルイカ、サクラマスなどがおいしい時期。6月に入りホワイトアスパラやグリーンアスパラが旬を迎えています。タケノコ一つをとっても京都の白子タケノコや山形の月山筍(がっさんだけ)など旬の食材は変わっていきます。毎回食べれば日本の旬を食べ尽くすことができるでしょう。

5月には高級シャンパーニュ、ドン・ペリニヨンとコラボレーションした「NARISAWA × Dom Perignon Stay Home Collaboration」を発売しました。「ドンペリ」といえば誰もが知っているぜいたく品。困難に打ち勝って祝杯をあげるときに使われる、力強さの象徴でもあります。6月は新政酒造の日本酒と、そのあとは鹿児島の芋焼酎ともコラボレーションする予定です。次の時代に向けて、よりおいしく、より美しいものを求め続けることは諦めません。

――19才から8年間を欧州で過ごし、帰国して自分の店を構えてからは日本の食文化を世界に発信してきました。世界各地で経済活動は再開されつつあります。ガストロノミーの世界はまた、活発な交流が復活するのでしょうか。

日本に限らず、フランスやイタリア、アメリカなど世界中のガストロノミー(美食店)で海外客はほぼゼロになりました。世界中の人々が自由に海外を行き来できるようになるにはしばらく時間がかかるでしょう。イタリアやスペインは外国人客の比率がとても高かったのでダメージは大きいと思います。日本の場合は国内にも多くのフーディーがいます。それはとても心強いことです。

今回の新型コロナウイルスをきっかけにライフスタイルは変わっていくと感じています。今はそのスタート地点。夏祭りやライブの形は変わっていくでしょうし、レストランもコロナ前を懐かしむだけでなく、戻るものと変わるものを見極めながら前に進む必要があります。

5~6年前ですが、私が父のように慕っているスペインの巨匠、フアン・マリ・アルサック氏と、現地で記者のインタビューを受けたことがあります。サン・セバスチャンにある彼の店「Arzak」はミシュラン三つ星の名店です。ジャーナリストから「これから先、スペインにガストロノミーが存在する意味はあるのか」と聞かれました。当時からスペインは外国人観光客への依存度が高かったのです。彼は「食は文化であり、存在することに意味がある」と答えていました。私も同感です。

世界中のシェフが交流し、互いに刺激し合うことでガストロノミーは発展してきました。一方で、独自性が失われつつあるとも感じます。シェフが華やかさや希少な食材を使うことに注力する時代は終わりました。環境破壊が進み、ローカライゼーションが重要視されつつある中で発生した、今回の新型コロナウイルスです。これからはよりローカルを意識するようになると思います。

日本は鎖国をしていた江戸時代に自分たちを深く掘り下げることで独自の文化を発展させてきました。大きな流れとしてのグローバル化は変わりませんが、今は海外を意識することなく、目の前のことに集中できる時間と環境を与えられたと考えることもできます。それぞれのシェフが自分たちを見つめなおし、気候風土や生活様式を踏まえて料理を追求すれば、それぞれの個性が出てきます。しばらくして海外を自由に行き来できるようになったとき、それぞれの違いが面白さとなって出てくるのではないでしょうか。大変な時期ではありますが、そう考えればこの先が楽しみになってきます。

成沢由浩(なりさわ・よしひろ)
愛知県常滑市出身。洋菓子店を営む実家で育ち、高校卒業後にフランス、スイス、イタリアと欧州を渡り歩いて腕を磨いた。世界の美食家らが選ぶ「世界のベストレストラン50」は11年連続で選出。2013年から始まった「アジアのベストレストラン50」は初回に1位を獲得して以来、8年連続で10位内にランクインしている。ミシュランガイド2020は二つ星。2018年に国際ガストロノミー学会(本部フランス)が選ぶシェフの最高賞「国際グランプリ」を受賞。51歳

(中村奈都子)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_