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「食べ進めるにつれて、食べ手が感じ取るうま味が刻一刻と変化する。幾種類もの素材をバランス良く配し、そんな1杯を創り上げたかったのです」。提供された「中華そば(醤油)」は、まさに、店主が語る構成どおりに仕上がっている。その「決まり具合」に、思わず、感嘆のため息がもれた。

食べ手に喜ばれる1杯を創り出せるかを考え抜くのが、ラーメン職人の醍醐味と店主はいう

素晴らしいのはギミックだけではない。ベースとなるスープも、実に丁寧、かつ、しっかりとした造りだ。鶏・豚ゲンコツ・豚足等の動物系を丁寧に炊き上げ、煮干し等の魚介素材を、店主が最適と考えるバランスで掛け合わせただしは、鶏の滋養味を豚のコクがしっかりと支え、煮干しの和風味が花を添える盤石のでき。

丹念な手もみが施された『浅草開化楼』製の太麺のすすり心地の良さ、たくましい太麺が巻き上げるスープに含まれるうま味の分厚さも、特筆に値する。気が付けば心身ともにすっかり魅了され、レンゲを運ぶ手が止まらない自分がいた。

1杯の丼に物語(ストーリー)がある。同店が、今年の最注目の新店のひとつであることは、もはや疑いの余地はない。

(ラーメン官僚 田中一明)

田中一明
1972年11月生まれ。高校在学中に初めてラーメン専門店を訪れ、ラーメンに魅せられる。大学在学中の1995年から、本格的な食べ歩きを開始。現在までに食べたラーメンの杯数は1万4000を超える。全国各地のラーメン事情に精通。ライフワークは隠れた名店の発掘。中央官庁に勤務している。
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