日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/6/29

4月下旬の発表は誤りだった

4月下旬、米デューク大学の研究者たちが、飼い主らが新型コロナウイルス検査で陽性とされた後、ウィンストンという名のパグ犬の唾液から同ウイルスを発見したと発表した。この話はインターネット上などで広く拡散したものの、その後、米農務省による検査で感染はしていなかったことが判明した。

「ウィンストンはウイルスが付着した人あるいは物を舐めた可能性があり、それで唾液が陽性と判定されたのかもしれません。ですが、血流や呼吸器の中にウイルスが入り込んで感染していたわけではありません。イヌの口の中にウイルスがいるとしても、感染しているかどうかは、また別の問題です」と、米獣医師会会長のジョン・ハウ氏はニューヨーク・タイムズ紙に語っている。

デューク大学の研究チームが陽性の結果を発表したのは米農務省が再検査を行って確認する前だった。この発表はメディアによる報道やソーシャルメディアを通じて大きく広がり、米国で初めてイヌが感染との見出しが各所に踊った。

対して、ブロンクス動物園は米農務省が確認するまでトラの陽性結果を発表しなかった。公的に確認される前に動物の陽性結果を発表することは、メディアにとっても一般市民にとっても混乱の元だということかもしれない。

「ここから学ぶべきは、ニュースは科学ではない、ということです」と話すのは、フィラデルフィア市ペンシルベニア大学獣医学部臨床微生物学分野のトップ、シェリー・ランキン氏だ。同氏はウィンストンの検査には関わっていない。「研究者は調査結果を公表する前に、農務省による検査を経るべきです」と言う。特に、ウィンストンの事例のように、陽性結果が「獣医学検査施設におけるものではなく、研究のための調査によるものであった場合には」

ナショナル ジオグラフィックは、デューク大学の研究関係者にこの件についてコメントを求めたが、米国における本記事の掲載時までに回答はなかった。

それでも…うちのイヌを心配すべき?

新型コロナウイルスに感染したペットの多くは罹患した人との接触後に感染が確認されているため、ヒトが一定の状況において動物にウイルスを広げるということはあり得そうだ。

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ペットから飼い主に感染する?