最新技術で発見 隠れていたマヤ文明最大の遺跡の正体

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/6/27
ナショナルジオグラフィック日本版

アグアダ・フェニックスの巨大基壇(暗褐色)の3D画像。この構造は、3000年ほど前に作られたもので、航空機から「LiDAR」と呼ばれるレーザー技術で検出した(PHOTOGRAPH BY TAKESHI INOMATA)

中米メキシコで、マヤ文明が栄えた地域としては最古かつ最大の構造物が発見された。南北1400メートル、東西400メートルにわたって広がる土の基壇(上に建物を建てるための基礎部分)で、今から3000年前に造られたものという。2020年6月3日付の学術誌「ネイチャー」に論文が発表された。

マヤ文明の最盛期は「古典期(西暦250年~900年)」とされるが、近年の研究では、その1000年以上前により大きな構造物が造られていたとする見方が広がりつつある。今回の発見は、この考えを支持するものだ。

発見場所は、メキシコの首都メキシコシティーから東に約850キロ、タバスコ州にあるアグアダ・フェニックス遺跡。この遺跡は、マヤ文明発祥の地とされるマヤ低地にある。

発端は17年の高性能センサー「LiDAR(ライダー)」による調査。レーザー技術を使い、航空機から密林の樹冠の下に広がる構造をとらえる調査方法だ。すると、何百年もの間、なかば森に埋もれ見過ごされてきた放牧地から、驚くべきものが浮かび上がった。巨大な基壇と、そこへ通ずる少なくとも9本の道路だ。

アグアダ・フェニックスの航空写真。LiDARなしでは、遺構がなかば森に埋もれた放牧地にいかに「隠されていた」かがわかる(PHOTOGRAPH BY TAKESHI INOMATA)

なぜ、これほどの遺構が今まで見つかっていなかったのだろう?

「説明が難しいのですが、この巨大な構造は、現場を歩いてもよくわかりません」と、論文の筆頭著者である米アリゾナ大学の考古学者、猪俣健氏は話す。「高さは9メートル以上ありますが、水平方向にあまりに大きいため、その高さを実感できないのです」

「想像するしかない儀式」

放射性炭素による年代測定の結果、基壇の建設が始まったのは紀元前1000年頃とわかった。

しかし、アグアダ・フェニックスでは、これ以前の建造物は見つかっていない。つまり、少なくともこの時期までは、この地域の住民(おそらく古典期マヤ人の祖先)は、一時的な野営地を転々とし、狩猟採集生活を送っていたとみられる。ではなぜ、どのようにして突然こうした巨大構造物の建造に至ったのか。

猪俣氏の推定によると、基壇とその上の建造物の総体積はおよそ370万立方メートルと、エジプト最大のピラミッドすらもしのぐ。また、建造には5000人が終日働いても、6年以上を要したと算定した。

「ここは儀式場だったと、我々は考えています」と同氏は話す。「想像に過ぎませんが、おそらく行進やその他の儀式に関連して人々が集まった場所だったのです」

この構造物の上や周辺から住居は見つかっていないため、近くに住んでいた人数は不明だ。しかし猪俣氏は、基壇の巨大さから、アグアダ・フェニックスを作った人々は、徐々に狩猟採集生活を離れていったと考えている。トウモロコシの栽培がこれを促進した可能性が高く、遺跡からはその証拠も見つかっている。

ナショジオメルマガ
注目記事
次のページ
共同の社会から縦社会へ
ナショジオメルマガ