あいみょん 初のバラード『裸の心』、絶妙な編曲術
近年の活躍で、若手女性シンガーソングライターの筆頭的存在となった、あいみょん。彼女のニューシングル『裸の心』は、赤裸々なラブソングで、シングルでは初のバラードとなっている。
作詞・作曲は従来通りあいみょんが務めた本作で、編曲を担当したのがトオミヨウ。中島美嘉や平井堅、菅田将暉など幅広いアーティストの楽曲に携わってきたプロデューサーだ。これまでもあいみょんとタッグを組んできたトオミは、彼女との楽曲制作について、「iPhoneで録音した弾き語りのデモ音源をもらうんですが、その時点でメロディーや歌詞に加え、歌いまわしも完全に出来上がっていて。既に完成図が見えている状態なので、それに肉付けするだけでいいんです」と明かす。
本作もほぼ完成した状態で届いたそうだが、あいみょん側からは「壮大なバラードではなく、あくまでも私的な雰囲気にしたい」とのリクエストがあったという。
そこでトオミは、アコースティックギターとピアノを基調にしながらも、そこに鍵盤ハーモニカを加えた。「バラードで切なさを表現する際、僕もそうなんですが、ストリングスに頼りがちになってしまう。ただこの曲は、すごくうまいミュージシャンが集まって弾いているというより、アマチュア感を出したほうがマッチするなと。そこでチープ感のある音色が特徴の鍵盤ハーモニカを1番から鳴らすことで、"素朴さ"が心地いい違和感を醸し出すように仕上げました。2番からはストリングスも入ってきて、そのミックス具合も、面白い感じになっています」
また、冒頭から雨粒が1滴1滴落ちていくかのような音も入れている。「アレンジする際、98%は必要な音でいいと思うんですが、少しだけそこからずれた音を入れると、リスナーの耳にいい意味で引っかかるんです。前半にはドラムが入っていないので、この音がリズムの役割も果たしています」
1980年11月14日生まれ。大学時代にソロ活動と並行して、プロデュース業を始める。これまでポルノグラフィティ、玉置浩二、V6などの楽曲に参加。アコースティックからロック、エレクトロまで幅広いサウンドに精通する
2016年にメジャーデビューした女性シンガーソングライター。18年にリリースした『マリーゴールド』が、ストリーミングを中心に大ヒットし、同年末には『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たした。『裸の心』はシングルとしては初のバラードで、4月期ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)の主題歌に起用されている
(ライター 中桐基善)
[日経エンタテインメント! 2020年6月号の記事を再構成]
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