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新型コロナのワクチン候補 年内に最終段階に進むか

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ナショナルジオグラフィック日本版

有望な新型コロナウイルスワクチン候補が先日、大きなハードルをクリアした。米バイオ医薬ベンチャーのモデルナが、臨床試験の第2段階である「第2相試験」をスタートさせたのだ。これはつまり、同社の「mRNAワクチン」が初期の安全性チェックに合格し、市場に投入されるための重要な節目をひとつ越えたということだ。

モデルナは2020年5月18日、初期段階での結果について、健康な被験者が同社のmRNAワクチンに反応して「中和抗体」を産生したと発表していた。抗体とは、感染を防ぐうえで重要な、いわば免疫系の「衛兵」だ。

ただし専門家らは、中和抗体が確認できたのは、米国立アレルギー感染症研究所の臨床試験に参加した45人のうち8人のみだと指摘していた。またモデルナは、第1相試験で単に抗体を作る以上の防御反応があったかどうかを判断できるだけの十分な情報を公開していない。

それでも、公表した詳細な情報と最新の発表内容から、同社がこの先、前例のないことを成し遂げる可能性がうかがえる。世界初となるヒト用mRNAワクチンの承認を得ることだ。

「すばらしい成果です。ワクチンの安全性を示す第1相試験のデータが得られたのですから」。米アイオワ大学薬学部の教授で、薬剤開発者のアリ・セイレム氏はそう語る。

第2相試験は、8つの州の10の地域において、約600人の協力者を対象に行われる。モデルナ社は5月29日、プレスリリースを通じて、各年齢層のグループ(55歳以下と56歳以上の2組)の最初の協力者複数人にワクチン候補を投与したと発表した。

mRNAワクチンとは何か

病原体が体内に侵入すると、人間の免疫系はすぐに認識して反応する。従来型のワクチンは、不活化したウイルスそのものや、ウイルスを構成するタンパク質を体内に注入してその反応を起こさせる。

こうしたワクチンの開発には時間がかかる。理由のひとつは、特定の方法を用いて病原体を不活化あるいは増殖させたり、タンパク質を分離したりしなければならないからだ。

mRNA(メッセンジャーRNA)とは、DNAと同じく核酸でできた遺伝物質で、細胞内を移動し、体の細胞構造を形成するうえでどのタンパク質を作るべきか最終的な指示を出す。

1990年代初頭、科学者たちは、もしウイルスのDNAとmRNAの断片を製造し、それをヒトの細胞や実験動物に注入したらどうなるだろうかと考えた。細胞がその遺伝子の断片を取り込んで、ウイルスのタンパク質を作り、免疫反応を引き起こすかもしれないと彼らは期待したのだ。

理論上、この方法を用いれば、より迅速にワクチンを作れる。その単位は、数週間ではなく、数時間や数日だ。また、そうしたワクチン候補は、コロナウイルス、インフルエンザ、エイズウイルス(HIV)など、突然変異によって進化しうる病原体に、より柔軟に対応できる。

mRNAワクチンは、複数の株のウイルスに対して効果を発揮する万能ワクチンにつながる可能性をもっていると、国際ワクチン学会のマーガレット・リュウ氏は言う。

30年前、リュウ氏は研究者としていち早く、DNAおよびmRNAワクチンの使用を試みた。氏が開発したインフルエンザ用の普遍的なDNAワクチンは、初期の結果において、同種のワクチンとして初めて防御効果を発揮し、とくに有望な結果を示した。少なくともネズミにおいては。

総じて言えば、DNAワクチンとmRNAワクチンの開発初期には、薬品開発の「前臨床」段階である動物モデルでは成功例がいくつもあったものの、ヒトにおいては強力な免疫反応を引き出せなかった。

「人間の方が体が大きいせいに違いないと、だれもが考えていました」とリュウ氏は言う。しかし、ウマや魚や、カリフォルニアコンドル用のDNAワクチンが開発されるに至って、そうした仮説は信憑性を失った。

一方、mRNAワクチンは安定性に問題を抱えていた。ワクチンのmRNAは体内に入った後、DNAよりも早く分解されるため、免疫効果が限られる。さらに、mRNAは免疫細胞を刺激し、副作用を引き起こす可能性がある。こうした課題から、DNAおよびmRNAワクチンの使用は長きにわって獣医学の分野だけで使われてきた。

モデルナのアドバンテージ

この状態に変化が起こり始めたのは2005年、ペンシルべニア大学の研究者が、mRNAワクチンにちょっとした工夫(化学修飾)を施したことがきっかけだった。これによって、mRNAワクチンの耐久性が向上し、安全性が高まり、有害な免疫反応が減った。

「多くの人々が、さまざまな疾患の治療戦略としてmRNAに注目し始めたのです」と、米アイオワ大学のセイレム氏は言う。そうした状況の中で登場したのが、米ハーバード大学の研究者デリック・ロッシ氏が2010年に創業したモデルナ・セラピューティクス(現モデルナ)だ。

モデルナは設立以降、薬物送達において一般的なツールである「脂質ナノ粒子」を多用してきた。脂質を主成分とする滑りの良い粒子の中に薬を包み込む方法で、それを使えば、mRNAを容易に細胞内に送り込める。

安全性の高いmRNA技術とすぐれた薬物送達により、同社は製品の幅を広げ、がんや、インフルエンザを含むさまざまな感染症の治療法を追求してきた。

大きな転機をもたらしたのは、蚊が媒介するジカウイルスだった。

2015年にジカウイルスが登場すると、各地の研究所が適切なワクチンの探求に乗り出す。現在米イリノイ大学シカゴ校の准教授であるジャスティン・リッチナー氏は当時、複数の大学が協力して行っていた、モデルナ・セラピューティクス社製のmRNAワクチン候補の初期研究に参加していた。リッチナー氏によると、同チームは2016年、モデルナ社製のジカワクチンのひとつを人間の臨床試験にまで持ち込むことに成功したという。ただし、そこで研究は失速してしまった。

年内に開発の最終段階に進む可能性も

モデルナは、ナショナル ジオグラフィックの取材依頼に応じていないが、同社が公表している最新情報から、COVID-19ワクチンの進捗状況の手がかりが得られる。たとえば5月18日の発表では、ワクチン接種後のヒトおよびマウス体内の抗体数についての正確な数字は示されていなかった。一方で、最も安全な投与量を見極めるという、第1相試験の主目的が達成されたことが明かされている。

「人を対象とした臨床試験を初めて行う場合、ワクチンが安全かどうかが、最も重要な情報となります」。米ベイラー医科大学国立熱帯医学校の副学部長マリア・エレナ・ボッタッツィ氏はそう語る。

ボッタッツィ氏はまた、モデルナ社のワクチンが成功するかどうかがよりはっきりするのは、ウイルスに乗っ取られた自身の細胞を直接攻撃する「T細胞」について発表があったときだろうと述べている。抗体は免疫反応の一部に過ぎない。T細胞は免疫系においてまた別の役割を担っている。どちらも独自に長期間の防御を形成するが、T細胞には抗体の出現を助ける働きがある。

これが重要なのは、DNAおよびmRNAワクチンは、T細胞を誘発するのに適しているからだと、ボッタッツィ氏は言う。しかし、そうした反応を評価するのには手間がかかる。人間を対象とした臨床試験では、後半に行われるのが一般的だ。

モデルナのワクチンは、完成までにまだ長い時間がかかるかもしれない。第2相試験の被験者に対しては、少なくとも15カ月間観察が行われることになっている。それでも、もし初期の経過が良好であれば、ワクチン候補は年内に開発の最終段階に進む可能性もある。

モデルナが成功するかどうかにかかわらず、パンデミック(世界的な大流行)に打ち勝つためには、複数のワクチンが必要となるだろう。世界では現在、100以上のCOVID-19ワクチン候補の試験が進行中だ。これまでのところ、複数の企業が有望な結果を報告している。いくつもの候補があることは結局のところ強みだとボッタッツィ氏は言う。ひとつのワクチン候補が失敗したとしても、その他の候補が希望をつないでくれるからだ。

(文=NSIKAN AKPAN、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年6月3日付の記事を再構成]

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