オンライン飲み会を楽しく 生ビールもテークアウトで
新型コロナウイルスの影響を受けている飲食店への救済措置として、国税庁が酒類のテークアウト販売「期限付酒類小売業免許」を付与することになり、ビールや日本酒などを料理と一緒にテークアウトできる飲食店が続々と増えています(「居酒屋で酒のテークアウトOKに 家飲みにレアな一品」を参照)。今回は都内のお薦め酒付きテークアウトをご紹介。自宅で飲食店の本格的な料理を楽しみながら乾杯! 緊急事態宣言が解除されたとはいえ、苦戦が強いられている飲食店の応援にもなります。
まずはクラフトビールブルワリー「ヤッホーブルーイング」のドラフトビールを存分に味わえる専門店「YONA YONA BEER WORKS」。都内に8店舗ある全店で酒のテークアウトを実施しています。
テークアウトできる料理は、看板メニュー「国産鶏のローストチキン」(ハーフ税別1800円~)や、クラフトソーセージ12種(3ピース税別1800円~)、サラダなど。ビールは樽(たる)生のクラフトビール10~12種や、ヤッホーブルーイングの缶ビール9種が持ち帰りできます(缶ビールのみのテークアウト販売はしていません)。
さっそく恵比寿東口店でテークアウト。単品の注文でもいいのですが、料理とビールのお得なセットがお薦め。一人暮らしの人やオンライン飲み会などにお薦めの「Cセット」(税込み3500円)は、料理4品に選べる缶ビール3本が付いています。店舗で単品注文した場合に比べ、910円もお得だそう。
ほかに「Aセット」(料理8品+選べる缶ビール10本、税込み1万円)や、核家族などによさそうな「Bセット」(料理7品+選べる缶ビール7本、税込み7000円)もありました。これらのセットは全8店舗で共通のもの。
「Cセット」の料理は、クオーターサイズの「国産鶏のローストチキン」に「森のヤッホーサラダ」と、「ポテトサラダツナソース」と「クリームチーズ&いぶりがっこ」の前菜2種。サラダはイートインの場合は、ベーコン&キノコをフライパンで熱々に熱したものを客の目の前で生野菜にかけてくれるのですが、テークアウトでも自宅の電子レンジでベーコン&キノコを温めて、自分で野菜にかけて仕上げることができます。ベーコンやキノコが温かいので、うま味や香りが口の中いっぱいに広がります。
同店支配人の畠山亜裕子さんは「ローストチキンはオリジナルとスパイシーの2つの味から選べますが、より当店のビールと相性がいいのはオリジナルの方。沖縄の岩塩などを使い、しっかりマリネしてお肉に味を染み込ませています」と説明。チキンの表面はパリパリしていて、中の肉はやわらかくジュージー。確かに骨の近くの部分までしっかり塩味が効いていて、自宅では味わえない本格的なおいしさです。
缶ビールは軽井沢限定の「クラフトザウルス」シリーズ(ペールエールとブリュットIPA)と、2020年限定の軽井沢高原ビールを選んでみました。関東のスーパーでは入手できない希少なものもラインアップ。畠山さんは「缶ビールでもぜひグラスに注いで飲んでみてください。クラフトビールは香りも楽しむものなので、ワイングラスなど先端がつぼまったグラスがお薦めです」と教えてくれました。
樽生ドラフトをテークアウトする場合は、グラウラー(専用容器)をデポジット制でレンタルできます。税込み3300円を支払ってビールをテークアウトし、グラウラーを返却すれば全額返金されます。サイズは750~2000ミリリットル。もちろん自前のグラウラーを持参すれば、ビール代だけの支払いに(価格は種類により変わる)。店ではグラウラーの販売も。樽生にも人気の「クラフトザウルス ブリュットIPA」があるので、缶ビールの「クラフトザウルス」と飲み比べも楽しめます。
続いては日本酒と料理のテークアウト。「地鶏焼とりや新宿総本店」(東京・初台)と「焼鳥とワイン&日本酒の店 鳥つた」(東京・恵比寿)では、鶏料理などを詰めたおつまみ9種盛りと一緒に、日本酒もテークアウトできます。
両店とも四合瓶(720ミリリットル) のほかに一合瓶でも日本酒が購入できるのが魅力で、「新政」(秋田・新政酒造)の希少なお酒も持ち帰りできるので、「いろんな種類を少しずつ飲み比べしたい」「入手困難なレアな酒を制覇したい」といった方にもお薦め。今回は「地鶏焼とりや新宿総本店」で実際にテークアウト。
もともと約30種類の日本酒を取りそろえ、「新政」だけで8種もラインアップしている同店では、5月9日から酒のテークアウト販売もスタート。店内の地酒(1合税込み500~3000円)や、「本日の地酒3種セット」(1合×3本、瓶代1本税込み200円、価格は2000~3000円前後で変動)、「東洋美人 純米大吟醸」(税込み500円・1合)が購入できます。「新政コスモス」「新政No.6(X-type/S-type)」といった大変希少な酒も含まれるので「新政飲み比べ」も楽しめ、日本酒ファンの間で話題に。
テークアウト料理は「比内地鶏親子丼」(税込み800円)、「鶏鴨そぼろ弁当」(税込み800円)、「比内地鶏カレー」(税込み800円)など。バラエティー豊かに料理が盛り込まれた「とりや特製お重」(税込み2000円、ライス付きは+税込み200円)は近隣オフィスの会議での食事としても購入されているそうです。ほとんどの料理が夜のコースで提供しているものと同じなので、外出自粛で頻繁にお店に来られない常連客には「大好きなあの味!」と感激されているのだとか。
同店店長の浜中和也さんは、「『とりや特製お重』は味の濃いタレ味の焼き鳥から、薄味の野菜の煮物までいろいろ入っているので、どんなお酒にも合わせやすいです。比内地鶏と新政で秋田ペアリングも楽しめます」と説明。看板メニューである比内地鶏の焼き鳥(もも・ぼんじり・きつね)や卵焼きの味は濃厚で、専門店ならではの味わい。どの料理も風味豊か。おうちご飯にはないワンランク上のおいしさで、あえてテークアウトする価値を感じました。
一方、姉妹店「鳥つた」では「鳥つたおつまみ9種盛」(税込み1800円)(料理の内容は新宿店と少し異なる)や焼き鳥、やきとり弁当などがテークアウト可能。日本酒は全部で約15種類をラインアップ。3種セット(税込み2700円)には「新政」の酒も入るそうです。ほかにワインのテークアウト(税込み4000円~)にも対応。同じく姉妹店の「比内地鶏焼き鳥とワインの店 Toriya Premium」(銀座と赤坂)の2店でもテークアウトに対応していますが、こちらでは酒はワインやシャンパンなどになるようです。
外食企業のプロダクトオブタイム(東京・品川)では全21店舗中17店舗で料理のテークアウトを実施。そのうち酒のテークアウトにも対応しているのは「クラフト麦酒CRAFTMAN」(東京・五反田)と「Craft Beer Mex-Italian CRAFTSMAN」(横浜市)、「CRAFT BEER×ITALIAN BAR CRAFTSMAN Sendai」(仙台市)、「Hemel」(東京・渋谷)、5月末にオープンしたばかりの「麦酒宿まり花」(東京・三軒茶屋)の計5店舗。今回は五反田店で実際にテークアウトしてみました。
同店では「シャルキュティエによる本日のソーセージ」(税込み1248円)などの定番メニュー約40種と、樽生のクラフトビールがテークアウト可能。ビールは通常は31種そろえていますが、新型コロナの影響で今は15~20種と種類を絞っています(5月中旬時点。今後31種に戻す予定)。
さらに同社のソムリエが五反田店の料理に合うようにセレクトしたワイン(750ミリリットルで税込み1300~5000円/赤ワイン5種、白ワイン5種)もテークアウト可能。常連客がいつもの料理といつものワインで、セットで持ち帰りしているようです。
自前のグラウラーを持参してビールを注いでもらう客もいれば、同店のオリジナルグラウラー(1892ミリリットルと946ミリリットル・いずれも税別3980円)をこの機会に購入する人も。また耐圧構造の炭酸用ペットボトル(500ミリリットル・容器代税込み100円)に入れて持ち帰ることも可能です。封印リングも付いているので密閉効果も高く、開栓しても吹き出さないものです。
同社・クラフトビール統括マネージャーの栗林圭さんは、「もともと今年度から会社全体で酒販免許を取得する予定で、店のオリジナルロゴ入りグラウラーも作っていたので、コロナの影響で計画を前倒しにしました。クラフトビールは酸素に多く触れるとせっかくの風味や香りが失われてしまうので、本来はグラウラーの使用をおススメしますが、手軽にお持ち帰りいただくのに専用ペットボトルも用意しました」と説明していました。
同店では国産クラフトビールは1ミリリットル当たり税別2.5円で、海外産クラフトビールは同2.7円で量り売りしています。テークアウトするお客の約7割はIPA(インディアペールエールの略でホップの苦みが特徴的。海外でも人気のビールスタイル)を購入します。
「IPAの新しい開栓情報をSNS(交流サイト)で投稿すると、すぐに買いに来られるお客様が多くいらっしゃいます。特にHazyIPAというにごり系のジューシーなタイプ(写真のもの)が大人気です」と栗林さん。貴重な樽生クラフトビールが飲める店として、SNSなどを通してファンの間で口コミが広がり、現在はリピーターも多いようです。
新型コロナウイルスの終息の行方はまだ不透明で、飲食店での飲み会の完全復活はもう少し先のようです。飲食店の酒付きテークアウトを利用しながら、巣ごもり生活を楽しく安全に送りましょう。
(フードライター 古滝直実)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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