2020/6/18

「研究室」に行ってみた。

「やはりこれもサプリメントの話と似ていて、糖尿病患者は炭水化物の摂取について気をつけなくてはならないということを、健康な人にも外挿して考えている部分があります。実際は、健常者にとっていいかどうかははっきりとは言えません。私のメタアナリシスの解析でも糖尿病患者さんの研究で効果がみえても、糖尿病を患っていない人たちの研究では効果が怪しくなった結果が得られたので。これは、メインの結果として扱っていないのでちゃんと読まなければ分からないのですけど。健常者の研究って難しいんですよね。臨床研究はどうしても患者さんをターゲットにしがちです。彼らは病院に来る理由があるわけですから」

脂質悪者論から、お米やパンなどの炭水化物ヘイトへのうつりかわりが、平成の健康情報の一大イベントだったのではないだろうか。

こういった「外挿」、つまりエビデンスが乏しい範囲への拡大解釈は、前にも触れたようなメカニズムを語るストーリーに補強されると、もっともらしさが増す。低炭水化物ダイエットについては、定番の説明がある。

いわく──

砂糖や炭水化物をとらなくても、肝臓の中で脂肪やアミノ酸から糖を作る糖新生というメカニズムが働く。さらにケトン体回路というものが回り始めて脂質からエネルギーを生産できるから、炭水化物はいらない。

などなど。

これらのメカニズムが本当にうまく働くものだったとしても、だからといって本当に健康によいかどうかやはり質の高いエビデンスがないと分からない。また、炭水化物を絶った食生活を続けるとどうなるのかも、今のところはっきりしたエビデンスはない。

とすると、目下のところで言えることというのはあるのだろうか。

「食べる量や体重の管理は別に考えるとして、この時点で私が言えるのは、通常いわれるような健康的な食を心がけること、その中で糖尿病の人や予備軍の人は低血糖・低栄養にはもちろん気をつけて炭水化物を控えめにというところでしょうか。健康な人は炭水化物について言えば、なるべく自然のものからとりましょうといえるくらいです。脂肪についてはスナック菓子や揚げ物ばかりだとか極端な食生活は問題ですが、特に意識して避ける必要はないでしょう。ただ個人の生活や好みのばらつきもありますし、どんなダイエットにも落とし穴はありますから、できれば栄養指導のプロと会話する機会を得て個々の生活習慣全体を見直していくのが好ましいです」

とのこと。

最後に日本食。

今村さんは、日本食、和食について、ずっと関心を抱いている。

「私は、博士論文で食事のパターンを研究して、その後、地中海ダイエットのエビデンスが蓄積していくのを見てきたので、和食らしさをどう捉えて研究すればいいだろうかといつも考えます。白米などの個別の食品や、栄養成分などを多層的に見ながらやっていくべきだと思っているんですが、今のところ日本のデータにかかわる機会がないという状況です」

今村さん自身の研究はなくとも、現時点での知見からはどんなことが言えるだろう。

「日本食っぽい食事をしてる人って、つまり、白米の摂取が高くて、魚の摂取があって、塩分もそれなりに高くて、野菜をたくさん食べてて、少しのお肉を食べて、つまり満遍なくという感じですよね。地中海食と同じで共通の定義はありませんが、それでも『和食らしさ』を独自に定めて研究した論文はいくつかあって、そういった食事をしている人たちは死亡率が低いか、あるいは平均と変わらないくらいです」