「白米はダメ」ホントかウソか 栄養疫学、食文化に目ケンブリッジ大学 医学部上級研究員 今村文昭(7)

さて、白米のことを気にしている人は、同時に、代替として玄米はどうだろうかということも気になるに違い。だから、駆け足ながら今村さんの解説をまとめておく。

結論から言えば、実はこれも今のところよく分からない。さきほど挙げた日本の研究を含む長期的な疫学研究では玄米の検証はされていない。玄米と白米を比較するものとして、今村さんもよく知るハーバード大学の研究チームが観察研究で玄米の方が白米よりも糖尿病の予防によいだろうという結果を出した(※4)。しかしアメリカでの玄米の摂取とその背景にある食習慣・生活習慣などを考えると、エビデンスとしては強くはない。また今村さんも共著者として名を連ねる別の論文では、心疾患との関係はなかったと示された(※5)。つまり、健康全体との関係について、今のところ確立されたエビデンスはない。さらに先程のハーバード大学のチームが介入研究(今のところ介入研究では最大規模)を中国で行ったところ、玄米を食べたグループより、白米を食べたグループの方がLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が低いという不思議な結果が出た(※6)。

いずれにしても、エビデンスは未成熟だ。玄米は、「精製されていない」穀物という点で栄養価が高いのはよさげだが、同じく成分レベルでカドミウム、無機ヒ素、在留農薬などといったものも含まれているそうなので、その点でも、どこかでメリットとデメリットがトレードオフになるのかもしれない。

以上。

なお、「白米か玄米か」を気にしている知人にこの件を告げたところ、「どちらを食べていいのか分からない」と叱られた。「白米は悪い」と信じており、「玄米もよいかどうか分からない」としたら、何を食べていいのか分からなくてパニックに近い感覚になるという。そこで、ぼくは「当面は今の習慣のままでいいのではないか」と答えておいた。前にも書いたとおり、ぼくたちは人類史上最高水準の長寿を実現している。「今のまま」をもう少し続けたからといって、バタバタ倒れてしまうわけではない。はっきりと分かったリスクは避けるべきだし、ベネフィットは享受すればいいけれど、分からないものに振り回されるのは馬鹿げている。

今村さんが栄養疫学者としての出発点からかかわってきた「食事パターン」について。

「地中海ダイエット」「低炭水化物ダイエット」「日本食」について、できるだけ簡潔に聞いていきたい。

よく日本では、○○食を食べるのがヘルシーだというようなブームがある。最近では、「地中海ダイエット」「地中海食」を推奨する人がかなりいると思う。

トマト、モッツァレラチーズ、オリーブオイルなどで作るイタリア南部カプリ島のサラダ、カプレーゼ。地中海料理というと、こんなイメージだろうか。

文字通り、地中海に面したイタリア、スペイン、ギリシャなどで食べられているもので、オリーブオイル、野菜、果物、ナッツ、魚介類などを多めに取る一方で、肉類の摂取は少ない、というようなイメージだ。これが健康によいというのは、日本でも有効なのだろうか。

「まず地中海ダイエットというのが何なのかという問題があります。ユネスコが無形文化遺産に指定した地中海食は、モロッコからクロアチアまですごく広い範囲の国々にわたっていますし、研究の方もそれぞれ何をとりあげるのか違います。もともと心血管疾患の罹患率が低いギリシャのクレタ島の人たちの食習慣に注目して定義された後、研究者ごとに定義を修正しながら今日に至る感じです。ですので、『地中海食は身体によい』というのでなくて、『身体によいであろう地中海食はどれか』というのが妥当な表現ですね。たとえばクレタ島の人たちはお肉を摂取することが昔からわかっていたのですが、健康的な地中海ダイエットを考える際はむしろ摂取を制限してもらうというようになります。そして朝食がオリーブオイルをコップ一杯だけだったり、昼間からお酒を飲んだり、エスカルゴをよく食べたりとクレタ島だけでもバリエーションが伺えます。そんな多様性をよそにわりと恣意的な判断もあって地中海ダイエットは定められています」

(※4)Sun Q, Spiegelman D, van Dam RM, et al. White rice, brown rice, and risk of type 2 diabetes in US men and women. Arch Intern Med. 2010;170(11):961-9.
https://doi.org/10.1001/archinternmed.2010.109
(※5)Muraki I, Wu H, Imamura F, et al. Rice consumption and risk of cardiovascular disease: results from a pooled analysis of 3 U.S. cohorts. Am J Clin Nutr. 2015;101(1):164-72.
https://doi.org/10.3945/ajcn.114.087551
(※6)Zhang G, Pan A, Zong G, et al. Substituting white rice with brown rice for 16 weeks does not substantially affect metabolic risk factors in middle-aged Chinese men and women with diabetes or a high risk for diabetes. J Nutr. 2011;141(9):1685-90.
https://doi.org/10.3945/jn.111.142224

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