空気を読まないオンライン会議は効率的

白河 在宅の経費とリスクを伴う出社、どちらにも配慮しているということですね。そして、今後もしばらく在宅勤務原則の方針を続けると、発表されました。どういう狙いでしょう。

夏野 はい。理由は2つあって、まず1つは、やはり従業員の安全優先の姿勢です。ワクチンも特効薬も確立していない新型コロナウイルスとの闘いは長期戦になるはず。その前提に立ち、「外に出なくて済むのなら、できるだけ在宅で働こう」という姿勢を続けていこうと考えています。

そして、もう1つは、この3カ月の試行によって、「在宅でも案外できるじゃん」という確信が組織内で浸透したという事実。特に、これまで「リモートでは難しい」と思われてきた取締役会や経営会議といった組織として上位の会議ほど、リモートのほうが効率はいいことが分かってきたんです。

白河 なるほど。食わず嫌いだったテレワークを体験したことが大きかったのですね。お忙しい人ほど、リモートのほうが集まりやすくなるのでしょうか。

夏野 それもありますが、一番は議論そのものが効率的に進むようになったというのが大きいですね。どういうことかというと、オンライン上で議論をするために事前準備をきちんとするんですね。もちろん、リアルの会議でも準備はしていましたが、「配布資料が当日配られて、一言一句読み通して説明するところから始まる」といったことは往々にしてありました。

しかし、それは時間の無駄ですし、オンライン上でそれをやられるとストレスになるので、読み上げは禁止に。結果、会議に要する時間は半分になりました。遅くとも前日には配布資料が行き渡っていて、全員が目を通した前提でスタートするので、非常に効率がいいですし、資料の精度も高まりました。

白河 オンライン会議のほうがより本質的な議論をしやすい、という意見はあちこちから聞かれるのですが、まさにそう実感されている。

夏野 実感していますね。すごくいいと思うのは、オンライン会議では「忖度(そんたく)」ができないんですよ(笑)。リアルに対面した会議だと、社長である僕が何か意見を言ったときに、皆は僕の顔色を観察しているわけです。ニコニコしながら言っているのか、真面目な顔で言っているのか、はたまた他の人はどういう反応をしているのかというのを、皆がうかがいながら賛成・反対を決めている。オンライン上ではこの「空気を読む」という行為ができないので、結果、「空気を読まない発言」が増える。これがとてもいいなと思っています。

白河 忖度しない! それはイノベーションがより起きやすくなりそうですね。

夏野 空気を読みようがないから、仕方なく自分の意見を言うんです。それは僕の考えとはまったく違ったりして新たな気づきを得られる。社内の本音を知ることができるのは、経営者にとって大きなメリットです。

政府の委員会でも同じ変化が起きています。空気を読まない発言が増えると、仕切り役は苦労するんですが、皆が自分の意見を言うようになることで本質的な議論が可能になる。リモートワークの可能性はもともと感じていましたが、実際にやってみることで確信を得られました。

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ハードルはやはり「紙とハンコ」