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解除後も全社員が在宅勤務 光熱費も支給するドワンゴ

夏野剛ドワンゴ社長(上)

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NIKKEI STYLE

動画投稿サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴは5月29日、全社員約1000人を原則、在宅勤務にすると正式発表した。7月から本格導入するという。緊急事態宣言が解除される直前の5月21日、夏野剛社長とオンラインで対談をした。

社員に自宅の光熱費を支給

白河桃子さん(以下敬称略) 新型コロナウイルスという危機は、日本の働き方のパラダイムシフトを起こしました。夏野さんが社長を務めるドワンゴでは、早くから在宅勤務を推奨でなく原則と決めていましたね。

夏野剛さん(以下敬称略) はい。全社的に在宅勤務を原則に切り替えたのは2月17日の月曜日。最初は5営業日の試行でしたが、感染拡大が続く状況を鑑みて延長を重ね、5月末までの継続を決めています。

白河 夏野さんも在宅勤務を?

夏野 はい。どうしても出社しなければいけない用事があれば出社しますが、それも週に1回程度。今日はたまたま出社していますが、ほら、ご覧のとおり(注:カメラ越しに見せていただいたオフィスは真っ暗)。他には誰も来ていません。99%の社員が毎日在宅勤務をしていて、出社の必要があるときには社長の僕へ報告が必要というルールにしています。

そんな働き方をもうかれこれ3カ月続けた結果、社内からもいろいろな反応が出てきました。どういう要望や意見が出てくるのか知りたかったので、マネジャークラスから日報をあげてもらって、「困ったことがあれば、全部書いてほしい」とお願いしていたんです。

白河 この3カ月の検証ができるんですね。どんなリクエストが出てきたんですか?

夏野 例えば、2週間たったくらいで目立ってきたのが「自宅の光熱費が気になる」という意見です。確かに、ずっと家で働いているのですから、電気代はかさむはずですよね。さすがエンジニアが多い当社らしいなと思ったのは、自分でメーター表を見て電気料金表と照合し、「こういう通信機材を使った場合、1カ月あたり追加される電気代はおよそ○円になります」と計算してくれた社員がいたんですよ(笑)。すると、だいたい平日の昼間の料金換算で、5日間で450~500円くらいだということが判明しまして。1人当たり週に551円、手当として支給することにしました。大した額ではないんですが、「心配しなくていいから助かる」と喜んでもらえています。

白河 週に551円ですと月に2204円。全社員となると、それなりのコストになるのでは。社員の皆さんは今、何人いらっしゃるんですか。

夏野 本社勤務だけで約1000人です。加えて、お子さんがいる社員には、「休校中の子どもが家庭で過ごす分の電気代もかかるでしょう」という考えから、さらに551円。いずれも2月まで遡って支給しています。

白河 素晴らしい。在宅しなさいだけでなく、経済的な負担についても支援しているのですね。ちなみに、やむなく出社しなければいけない社員の方には何か特別な配慮をされましたか?

夏野 実際、4月にどうしても開催する必要のあったオンラインイベントがあり、その期間に出社が増えた社員もいました。特別手当として1人10万円ずつ出しています。

空気を読まないオンライン会議は効率的

白河 在宅の経費とリスクを伴う出社、どちらにも配慮しているということですね。そして、今後もしばらく在宅勤務原則の方針を続けると、発表されました。どういう狙いでしょう。

夏野 はい。理由は2つあって、まず1つは、やはり従業員の安全優先の姿勢です。ワクチンも特効薬も確立していない新型コロナウイルスとの闘いは長期戦になるはず。その前提に立ち、「外に出なくて済むのなら、できるだけ在宅で働こう」という姿勢を続けていこうと考えています。

そして、もう1つは、この3カ月の試行によって、「在宅でも案外できるじゃん」という確信が組織内で浸透したという事実。特に、これまで「リモートでは難しい」と思われてきた取締役会や経営会議といった組織として上位の会議ほど、リモートのほうが効率はいいことが分かってきたんです。

白河 なるほど。食わず嫌いだったテレワークを体験したことが大きかったのですね。お忙しい人ほど、リモートのほうが集まりやすくなるのでしょうか。

夏野 それもありますが、一番は議論そのものが効率的に進むようになったというのが大きいですね。どういうことかというと、オンライン上で議論をするために事前準備をきちんとするんですね。もちろん、リアルの会議でも準備はしていましたが、「配布資料が当日配られて、一言一句読み通して説明するところから始まる」といったことは往々にしてありました。

しかし、それは時間の無駄ですし、オンライン上でそれをやられるとストレスになるので、読み上げは禁止に。結果、会議に要する時間は半分になりました。遅くとも前日には配布資料が行き渡っていて、全員が目を通した前提でスタートするので、非常に効率がいいですし、資料の精度も高まりました。

白河 オンライン会議のほうがより本質的な議論をしやすい、という意見はあちこちから聞かれるのですが、まさにそう実感されている。

夏野 実感していますね。すごくいいと思うのは、オンライン会議では「忖度(そんたく)」ができないんですよ(笑)。リアルに対面した会議だと、社長である僕が何か意見を言ったときに、皆は僕の顔色を観察しているわけです。ニコニコしながら言っているのか、真面目な顔で言っているのか、はたまた他の人はどういう反応をしているのかというのを、皆がうかがいながら賛成・反対を決めている。オンライン上ではこの「空気を読む」という行為ができないので、結果、「空気を読まない発言」が増える。これがとてもいいなと思っています。

白河 忖度しない! それはイノベーションがより起きやすくなりそうですね。

夏野 空気を読みようがないから、仕方なく自分の意見を言うんです。それは僕の考えとはまったく違ったりして新たな気づきを得られる。社内の本音を知ることができるのは、経営者にとって大きなメリットです。

政府の委員会でも同じ変化が起きています。空気を読まない発言が増えると、仕切り役は苦労するんですが、皆が自分の意見を言うようになることで本質的な議論が可能になる。リモートワークの可能性はもともと感じていましたが、実際にやってみることで確信を得られました。

ハードルはやはり「紙とハンコ」

白河 しかしIT(情報技術)企業であるドワンゴでも、会社として今回のような、全社一斉、長期の在宅勤務を推進する上でのハードルがあったそうですね。

夏野 やはり紙とハンコの縛りですね。紙の郵便物は会社に届いてしまうので、それを取りにいくためだけに出社することもあります。請求書に関しては、うちが支払う側になる取引はすべて電子化しているのですが、逆に支払っていただく場合には先方のルールに従うしかない。「紙で発行してください」と言われたら、プリントアウトして封筒に入れて投函(とうかん)するために出社します。無駄でしかないと思っているので、政府の規制改革会議でも「行政手続きと民間取引の双方で、文書の電子化を進めましょう」とガンガン意見しています。

白河 ぜひ進めていただきたいです。某有名IT会社ですら、契約書の公印が持ち出せないルールがあったので、今回変えたそうです。ハンコはクラウドサインへと移行していくイメージでしょうか。

夏野 そもそもハンコが不要な手続きを減らしていかないとダメですよね。印鑑証明を伴う実印の手続きに関しては電子署名に変えていくべきですが、三文判を使用するケースは、クラウドサインすら要らないんですよ。特定できる個人にひも付くメールアドレスから送信されている文書で、かつ、双方の会社の法務部門をccに入れていれば、公正な文書の証明として十分に成り立つんです。ハンコを伴う習慣の9割以上が、「これまでやってきたから」というだけの理由で続けられている無駄です。

白河 たしかに、「その気になればなくせるものだ」と、コロナショックを機に気づいた組織は多いと思います。私も個人事業主ですので取引先の企業から請求書を求められる機会が頻繁にあるのですが、これまで「データのメール添付ではダメです。紙での郵送が社内規定なので」と突っぱねられていた企業があっさりと方針を変えたりしていました。

夏野 すごくいい流れが起きましたよね。コロナは人類にとって大きな試練であることは間違いないのですが、日本社会がこの20年の間で蓄積してきた「IT化によって省けるはずなのに手をつけてこなかった無駄」を一気に洗い流していくチャンスです。

もちろん混乱はありますが、命には代えられないという理由で、多少の混乱はいとわずにオンライン化へ一気に加速しています。このままアフターコロナの未来へ突入できるのか、再びビフォーコロナに戻るのか。日本の意志が問われている重要な時期なのだと強く思います。

白河 私もそう思います。働き方改革についてもここで一気に進もうとしています。後戻りしないようにしないと。

夏野 全員が振り切ったことで、得られた気づきは大きな収穫ですよね。僕自身、従業員の方にとって「通勤」と「通勤に伴う準備」がどれだけの負担になっているのか、意識を向けるきっかけになりました。当社の場合、通勤時間の平均は40~45分くらいで往復にして1時間半が通勤にかかるんですね。さらに、それだけじゃなくて、通勤のための身支度も考えるとプラス1時間はスケジュールに入れないといけない。それが在宅勤務だと会議の30分前に起きたって構わない。家で働くのを原則にするだけで、自分や家族のための時間がかなり充実するのだということを、僕自身も実感しています。

ということで、緊急事態宣言が解除され、これからコロナが収束に向かっていき「平時」を取り戻したとしても、今の働き方を続けるべきだと考え、6月以降も在宅勤務原則の方針を決定しました。

ただし、部署によっては「時々、顔を合わせて議論をしたほうが業務は進みやすいのでは」という仮説も立っているので、それが1週間に1回がいいのか、2週間に1回でいいのか、6月は最適な頻度を探るための月間にしたいと思っています。

白河 6月はお試し期間にするというわけですね。今こそ貴重なデータがとれるチャンスなので、検証とお試しをしてほしい。

夏野 はい。フル在宅勤務はすでに3カ月間試したので、次は「在宅×オフィス」をどういう加減でやっていくかのバランス調整の段階に入ります。その最適値がつかめた段階で、正式な制度として整えていくつもりです。

(以下、明日は在宅勤務で明らかになる社員の能力、情報化で変化する個人と組織の関係、在宅勤務で変わるオフィスの使い方などをお聞きします)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(文:宮本恵理子)

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