変化に強い日本人、コロナで不安になり過ぎない

――リーダーは失敗に学ぶと言います。

「僕は失敗だらけですよ。たくさんの失敗を経験したけど、失敗例を抽象化すると、必勝法が分かってくる。例えば研究者としてスタートした際、英語の論文が落とされまくりました。でも失敗を重ねていくうちに、論文の完成度を高める方法が分かってきたんです。国の研究費を獲得するときも、10~20連敗した後やっと1勝しました。その勝因を考え、分析して2勝目、3勝目につなげて、今ではほぼ100%勝てるようになりました」

東京・本郷をAIの街にしたい理由の一つとして、「研究室の学生を連れて歩きやすいから」を挙げる。「最初に2、3人のスタートアップに行って、熱気を感じてもらいます」。次に起業して数年から中堅に育った企業を複数回って、ビジネスにチャレンジする現場を体感させる。「最後に大きくなったパークシャのロビーやオフィスを見ると、学生は『おおっ』となります。俺も起業しよう、と火が付いて上がりです」

――新型コロナウイルスの影響もあり、ストレスがかかると思います。解消法はありますか。

「ストレス解消法はまずは寝ることですかね。たぶん理論的には寝るのが一番いいのではないでしょうか。この5年間は研究モードと社交モードに完全に分けて生活しています。研究モードになると4~5日、完全に引き籠もって『おたく』状態になって、誰とも会わないようにして論文を読んだり書いたりします。一方、社交モードの時は朝8時から夜の会食まで30分刻みでずっと詰まっています。追加の1件を入れる限界コストは極めて小さいので、いくらでも予定を入れてもらって結構。つまり2つのモードを完全に切り分けたほうが効率がいいわけです」

「新型コロナの影響で、一気にオンライン化が進んだ点は評価できます。テレワークが浸透すると、仕事のデジタル化も進みます。どんどんデータも収集されるのでAIを適用して自動化もしやすくなります。日本人は本気になれば変化への適応能力があります。過度に不安がる必要はないと思います」

<<(上)「僕は起業家向きじゃない」 AI人材の育成こそ天職

松尾豊
1975年香川県出身。97年に東京大学工学部電子情報工学科卒、2002年同大学院博士課程を修了。産業技術総合研究所の研究員を経て05年から米スタンフォード大学客員研究員。07年東大大学院准教授、19年から東大大学院工学系研究科 人工物工学研究センター教授(現職)。17年から日本ディープラーニング協会理事長。19年からソフトバンクグループ社外取締役。

(代慶達也)

マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

ビジネス書などの書評を紹介
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら