日本を代表するクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏。一日の多くは「打ち合わせ」で埋め尽くされているという。30を超えるプロジェクトが常時無理なく動いているという佐藤氏の仕事を支えているのは質の高い打ち合わせだ。文庫化された「佐藤可士和の打ち合わせ」から、同氏が実践する打ち合わせの極意をのぞいてみよう。
◇ ◇ ◇
社内の打ち合わせは
なるべくやらない
社内で打ち合わせが必要なのは、コミュニケーションが取れていない証拠
打ち合わせといえば、社内で同僚やチームの打ち合わせをする機会も多いかもしれません。しかし、意外に思われるかもしれませんが、僕たち「サムライ」では、いつも30を超えるプロジェクトが走っているものの、社内打ち合わせはしません。時間を取って別室でやりとりをする、なんてことは、まずないのです。
では、どうしているのかというと、常時、密にコミュニケーションを図っているのです。例えば、僕はクライアントや社外のスタッフとの打ち合わせの合間に、少し時間を空けておくようにしています。その時間を使って、スタッフに声をかけるのです。
社内で(会社の規模によっては部署内で)「改めて」打ち合わせが必要、というのは、裏返せば、それだけコミュニケーションが密にできていない、ということなのかもしれません。常時コミュニケーションを図っていれば、打ち合わせは必要なくなります。
僕は、外出先や打ち合わせからオフィスに戻ったときに、「どう?」「できてる?」「チェックするものある?」と声をかけていきます。それこそ、通りすがりにスタッフが作ったものをどんどん見て、「OK、これで行こう」「ここは、もうちょっとこうしたほうがいい」などとアドバイスしていく。
一人につき、せいぜい2、3分です。これを積み重ねていくのです。長期で出張に行くときを除けば、打ち合わせと打ち合わせの合間の時間などをいつも活用しています。
僕のスケジュールは社内でオープンになっていますから、何時から何時まで僕がオフィスにいることは、スタッフもみんな知っています。その時間に、僕も声をかけますし、スタッフも用意をしています。
「今、見てもらってもいいですか」とスタッフが声をかけてくることもあるし、「ラフでもいいよ。見せられるものを見せて」と僕から声をかけることもある。「今はちょっと見せるものがありません」というスタッフもいますが、それはそれで構わない。