在宅勤務が進むのは不安著述家、湯山玲子さん

著述家、プロデューサー。東京都生まれ。「女装する女」など著作多数。クラシック音楽のイベント「爆クラ!」を主宰。テレビのコメンテーターとしても活躍。

コロナ禍で在宅勤務となり、メールやテレビ会議などを利用して職場の人たちと仕事のやり取りをしています。ただ、このままテレワークでも仕事は十分ではと理解が進むのは、少々乱暴な結果を生むのではないかと危惧しています。こう考えるのは古い人間だからでしょうか?(東京都・50代・男性)

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ニッポンは、黒船襲来の昔から、外部由来の環境の激変があって初めて、システム革新がなされる文化風土。その一方で現実が変化してしまえば、即適応する柔軟性を持ち合わせてもいます。このコロナ禍のたった2カ月弱で、「出社しない働き方」というリモートワークは現実化。すでに感覚的には当たり前になっている事実にびっくりです。

私自身も会議やテレビのリモート出演、プライベートではリモート飲み会、そして、自宅のPCからゴキゲンなサウンドを流してDJを務め参加者を募って、全員が部屋で踊る「お座敷ディスコ」まで実行済み。

これらを通じて得られたのは、リモートは決して現実の代替えにはならない、ということ。リモート会議ではコミュニケーションの双方向性が強調されていますが、実際は単一方向のモードが強い。語り手はリアル会議よりも、私の感覚では1.5倍、いやそれ以上のパワーが必要であり、多数相手の講演会に近い。

リアル会議では、話者の目は自然と聴き手の態度の情報を得ています。意見に同調する小さなうなずき、表情などの肯定的なフィードバックの追い風を得てこそ、気持ち良く話し続けられるのですが、オンラインではそこが断絶。参加者の顔は映っていても、細かい表情は伝わらず、結果、「自分の意見はみんなに届かなかったかも」と疑心暗鬼に陥ってしまう。

テレワーク会議は、報告と確認ならOKですが、その場の思考の盛り上がりが重要なクリエイティブな会議には不向きです。その手の会議はオープンカフェで気分を変えて行った方がいい結果が出そうなので、いずれにせよ、毎日出社する仕事場はいらなくなるかもしれません。

相談者氏の心配は、在宅では希薄になりそうな会社員としての帰属意識と、アイデンティティーがなくなることの不安だと思いますが、終身雇用制度の更なる崩壊やキャリアデザイン時代には、依存につながるそれらを持ってしまう方が、リスクが高そうです。

フリーランスの人間は納品する仕事がすべてと職業自体にアイデンティティーを持っていますが、今後は会社員もそうしたプロ意識に切り替えるべきでしょう。


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