コロナ後を勝ち抜く接客 先駆け小売業のアプローチ術「コロナが変える小売業」(下) ECエバンジェリスト 川添隆氏

オールユアーズは4月から「プライベートZoom接客」を始めた (同社公式サイトから)

特に3番目の「プライベートZoom接客」では、目と耳でブランド・商品を伝えられるため、ユーザーの購入頻度が高まっているようです。対面の効果と、最適なUIを知ることによる効果だと推測されます。また、ここでは商品情報を伝えるよりも、「コミュニケーションをとること」による安心感を提供することに重きが置かれており、それぞれのユーザーに合わせて接客バリエーションが豊富にあることが非常によい点です。ブランドとしての最適な販売のUIを実現できている形と言えます。

現状は「プライベートZoom接客」を申し込む人はリピーターというよりも、店舗に来たことのない新規客が主で、特に東京以外の遠方のユーザーがこの機会に利用しているようです。

オールユアーズの「プライベートZoom接客」と、店舗でのリアルな接客は大きな違いがあります。まず、店舗での接客よりもオンラインの方が接客時間が短いこと。そして、説明と試着体験の時間・場所が分かれていることです。短時間で的確な商品説明を受け、自宅で試着してサイズを合わせながら悩む時間をもつ。このように「ユーザーが好きなタイミングでコミュニケーションを取れる」ことが、オンラインの特徴と言えるでしょう。

「ビームス」のスタッフが力を発揮できる背景

コロナ以前から「アパレル業界におけるオムニチャネルの代名詞」になっていたのがビームス(東京・渋谷)です。「モノを通して文化をつくる“カルチャーショップ”」が軸にあり、その中で、本部・店舗にかかわらず個性あふれるスタッフがいるブランドです。

間違えてはいけないのは、「ビームスはコロナ禍だからとっぴなことをしたわけではない」ということです。ビフォーコロナから、店舗スタッフそれぞれが能動的にビデオ(ショート動画)、スタイリング、フォトログ、ブログを投稿し、顧客と活発にコミュニケーションをとっていました。各スタッフのコンテンツ経由でのEC売り上げや閲覧数などの数値結果は確認できるようになっていて、各自がPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回しています。6月上旬時点で公式サイトに登場しているスタッフ数は2093人です。

一方で、コロナ禍以降に新たな取り組みとして、顧客とのリアルタイムなやり取りが可能なライブコマースや、ユーチューブのプラットフォームを活用した「BEAMS AT HOME Video」を始めています。

インフルエンサーによるライブコマースも好調なようです。一般に1配信で売上高40万円に達したら良い方という水準の中で、ビームスの初配信では「約1時間の配信で6000人以上が視聴し100万円弱を売り上げた」とのことで、比較的高水準な結果になったと思われます。いずれにしろ、「店舗スタッフ自身のオムニチャネル化」が小売業界の中でもトップレベルで進んでいることにより、今回のライブコマースでも柔軟に対応できたのではないかと思います。

さらに「BEAMS AT HOME Video」では、2つのポイントにおいてビームスの成功要因が見て取れます。

1つ目は「スタッフの視点」です。「デニムの知識」や「靴磨き」のようなファッションコンテンツだけでなく、「ダイエット」「料理」「韓国語講座」「映画」「ベビーヨガマッサージ」など、内容が多彩でカルチャーショップのスタッフならではのコンテンツが充実しています。

そして2つ目は「自宅からの配信」です。これには「ブランドや企業の許容力」と「部屋のファッション性」が重要になってくるため、そう簡単にいくものではないでしょう。しかしビームスは、そのどちらもクリアしています。スタッフがそれぞれの力を存分に発揮できていること、その環境が整備されているところが素晴らしいです。

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
次のページ
「ウィゴー」のリモートワーク×アバターによる接客販売
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら