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事業支援特集

2020/6/15

事業支援特集

実際の問い合わせが多いのは、労働基準法38条2第1項の「事業外みなし労働時間制」で、労働安全衛生法とは異なる経営上の注意が必要だ。会社にとって、原則として残業支払い義務がないというメリットに加え、社員の生産性向上を促しやすい面もある。(1)業務が自宅で行われる(2)パソコンが常時通信可能でない(3)随時・具体的な指示がない――などが、事業外みなし労働時間制の「労働時間が算定しがたい場合」として適用できる。ただ単純に「白か黒か」の判断は難しいと末氏はクギを刺す。「裁判例でもケースバイケースで判断されている」(末氏)としている(※2)。しかも、仕事のやり方が変われば結論も変わりうる。末氏は「専門家の意見を聞いて基準を設けておき、適宜見直すことが望ましい」とアドバイスする。

深夜手当や通勤費は?

テレワーク普及が、これまでの給与体系にも影響することは確実だ。末氏は、いずれ人事評価制度の見直しも必要になるとみる。みなし労働時間でも、社員からの申告を前提に「深夜割増賃金、休日割増賃金」を支払う必要はある。一時的に「在勤手当」や「リモートワーク飲み会代」を支出するケースも増えている。メルカリは4月、自宅での勤務環境構築やオンライン・コミュニケーションなどのために6万円(半年間)の在宅勤務手当の支給を決めた。

一方、通勤費は出社状況に応じて削減できる。在宅勤務中の水道光熱費なども公私の区別はつきにくい。末氏は「当面は社員負担になるケースが多いだろう」とみる。その一方で、オフィスコストの減少などを勘案して、新たな社員手当などでの配慮を促している。

派遣社員の処遇は?

新型コロナウイルスの感染でクローズアップされているのが、派遣社員の処遇だ。中小企業でも派遣社員を受け入れたり、フリーランスのデザイナーらに仕事を発注することは珍しくない。他方、自社が派遣元になっている中小も少なくない。出社が困難になり、テレワークによらず休業をさせる場合の休業手当の扱いなどは派遣元・派遣先・派遣労働者の利害対立が生じやすい。

とりわけ機械の保守・メンテナンスなど、現実的にテレワークになじまない業種での対応は難しい。さらに派遣先に常駐してシステム開発するエンジニアも、取り扱うデータのセキュリティー確保が悩ましいなどハードルは高い。末氏は「現状は労働法規と民法の交錯する問題をどう解決するかがポイントだ」と話す。

現実的には、派遣契約の解釈問題、労働基準法の60%の休業手当支払い義務、民法上の不可抗力の場合の給与請求権の消滅、使用者側に責任がある場合の100%の支払い義務などが、それぞれ錯綜しかねない。「派遣先、派遣元、派遣社員の三者で、将来的な見通しを踏まえた上で利害調整するほかない」と、末氏は一方的な法的解釈を戒めている。現在は個々の企業にとってのテレワークに関する課題が、浮き彫りになってきている時期だと末氏は説く。

中小企業のテレワーク導入は大企業に比べ遅れているとみられ、国や地方自治体は助成金制度など通じ導入を後押ししている。テレワークを導入できれば、生産性向上、離職防止、コスト削減、事業持続性の確保などが期待できる。しかし末氏は、テレワークのデメリットにも目を向ける必要があると指摘する。(1)公私の区別が曖昧になる弊害(2)出社しないことによる業務効率低下(3)組織の一体感の喪失(4)セキュリティー上の懸念――などだ。ウィズコロナの時代もテレワーク普及の流れは止まりそうにない。末氏は「経営トップはメリットの最大化とデメリットの最小化を常に考えて事業計画を策定すべきだ」と説いている。

※1 末氏は「は「最高裁の『平成28年(2016年)2月19日判決』(山梨県民信用組合事件)に示されているように、重要な労働条件の変更の場合、形式的な同意があるからといって、ただちに変更が有効になるわけではない。合理的な変更であることが肝要だ」と注意を促している。

※2 参考になるのが平成26年(14年)1月24日の最高裁判決(阪急トラベルサポート事件)だ。海外ツアー添乗員の場合を(1)添乗員の携帯電話が常時電源オン(2)詳細・正確な添乗日報(3)事後報告義務――などで「労働時間を算定し難い」とはいえないとした。他方、営業社員については情報通信機器などで労働時間の把握が可能であっても「過重な経済的負担を要する、煩雑に過ぎるといった合理的な理由がある場合」には、算定し難い場合にあたると判断された(東京地裁平成30年1月5日、控訴審東京高裁6月21日判決)。

(松本治人)

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