検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

眠りの悩みとことん解消する寝具 布団もカスタマイズ

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

日経クロストレンド

京都市の大東寝具工業は全従業員が「睡眠健康指導士」の資格を持ち、「寝具」というより「眠りの悩みを改善する商品」を目指して開発体制を見直した。寝具を中心に寝室や住まいの空間に関わる新規事業も展開。売上高を低迷期の2倍以上にした。

「睡眠健康指導士」とは、一般社団法人日本睡眠教育機構が認定する資格。布団や寝具を開発する大東寝具工業では企画の担当者以外にも経理や営業、総務、製造といった業務に関係なく、25人の全従業員が睡眠について学んでいる。「ものづくり」「知恵」「睡眠の知識」が顧客の睡眠環境の改善につながると考えるからだ。

創業は1925年(大正14年)。2006年は3億6000万円だった売上高が、良品計画の「無印良品」やIKEA(イケア)などでも布団や寝具の扱いが増えるにつれ、10年には2億円まで低下した。

そこで開発体制を大転換し、「眠り」という視点で付加価値を高めるようにした。その結果、取引先が大手百貨店や宿泊施設などにも拡大。京都市の高級旅館として知られる俵屋旅館でも使われるようになった。

海外からの注文も多く、19年の売上高は4億2000万円と好調に推移している。55%を占めるのがBtoB向けで、次に多いのは20%のECサイトでの売り上げ。実際に店舗で販売する小売事業は3.5%程度。その他、比率的には大きくないが、建築事業も始めている。

社長の大東利幸氏は3代目。「我々の使命や事業ドメインとして定めているのは、快眠とくつろぎで世界を元気にしましょうということ」と話す。布団の卸売りと製造・販売だけを手掛けてきたが、モノからコトへと発想を変えて「寝具」というより「眠り」を重視するようにした。コンセプトとして掲げるのは「Sleep Lab Factory」という考え方だ。

例えば、大東寝具工業のオンラインストアを見ると、「暑くて眠れない」「なかなか寝付けない」「途中で目が覚める」など睡眠の悩みに応じて商品を表示している。例えば「暑くて眠れない」理由は「…大量に汗をかくためです。寝床の温度が理想とされる温度32度、湿度50%の…」と説明がある。これに合わせて同社が開発した吸汗・調湿性に優れる「京和晒綿紗」「睡楽上布」という独自素材によるシーツ類を紹介する他、寝具の構成を層(レイヤー)に分けて寝床を構成する同社の「スリーピングレイヤーシステム」を薦めている。

「途中で目が覚める」理由は寝床の温度が一定に保てない点。そこで温度を保つ同社の羽毛布団「OZGO」や「京和晒綿紗」「睡楽上布」によるパジャマなどを提案する。ユーザーの体に応じ、カスタマイズできるようにして眠りに結び付ける「カスタメイク敷布団」もある。逆流性食道炎や睡眠時無呼吸症候群に向け、寝る姿勢を保持できる寝具も開発した。寝られない原因に応じたさまざまな寝具を開発しているのが同社の強みであり、コンセプトが意味するように研究・開発型の企業へと変わった。

「眠り」から派生した商品開発や新規事業も推進している。「テトラ」というクッションは寝具の開発で培った知識を生かした商品の1つで、テレビ番組の小道具やスタジオジブリ(東京都小金井市)とのコラボレーション、地元の西陣織を用いた商品への展開など、さまざまな分野に広がっている。京和晒綿紗という独自素材のシーツやパジャマ、ベビー用品も主力製品の1つに育った。12年には建設業の許可を得たことで「SOYA」とブランド名をつけた京町家のリノベーションや家具作りなども手掛けるようになった。

この他、「地域の人々の健康の下支えを睡眠でしよう」という考えから、子供や働き盛りの世代、さらに65才以上と、世代別の読本も医師の監修を加えながら自社編集で作っている。睡眠のワークショップなども開催し、地域に根ざした活動も推進している。19年からは「眠りの宅配便」というサービスを開始した。高齢化が進み、一部の顧客が店舗まで足を運べなくなったためだ。自社の睡眠健康指導士が要望に寄り添って枕を選んだり、寝室の模様替えの相談を受けたりしている。

「眠り」とは何かを考えて商品開発につなげる

大東氏が大学卒業後に勤めたのはダイエーで、1990年に家業である大東寝具工業へと戻ってきた。2000年から代表を務めているが、家業へ戻ってからの日々は、決して順調なものではなかったという。90年当時の社長は、現在会長である大東氏の母だったが、「経営状況が、こんなひどくなっているとは思わなかった」と大東氏は当時を振り返る。「債務超過になっていたけれど、債務超過の意味が分かる人すらいなかった。損益計算書も、財務諸表の見方も分からない。最初の5、6年は本当にひどい状態で、税理士からアドバイスを受けながら、なんとか売り上げをつくろうとした。もう逃げたかった。もし戻ってくる前に状況が分かっていたら、畳んでもらっていたかもしれない」(大東氏)。

まず意識したのは、それまでの状況を脱すること。商店街の一角で売られるような「布団屋」の布団ではなく、店舗の外観から変えたいと考えた。92年には敷地内の工場の面積を小さくし、インテリアコーディネートショップを意識して店舗を建て替え、その後は「雑貨も売る布団屋」としてリニューアル。数百円~数千円台の雑貨を1階で販売し、2階で布団を販売した。「布団は耐久消費財なので、数年に1回ぐらいしか買い替えないが、雑貨が話題になって訪れる人が増えた。多いときには京都府内で4店舗を構えた」(大東氏)。

その頃、並行して始めたのがEC事業で、2001年に楽天市場に出店をした。布団の業界としては非常に早い時期だったという。大東氏自身が00年に社長を引き継いだこともあり、雑貨をやめて布団に注力した。当時はキーボードすら操作できなかったが、ECサイトの立ち上げはすべて1人で行った。

「面白いほど売れた。始めてから5年後の06年には売り上げの65%が楽天経由になった」と大東氏は言う。その頃は自社の商品だけではなく、他社から安く仕入れた商品のほうを中心に扱っていた。しかし「バブル」は長くは続かなかった。人為的なミスによりECサイトのデータが復旧不可能となり、当時ほぼ1位だった検索ランキングが一気に下降。比例して売り上げもどんどん下がり、同年に手形の不履行も受けるなど最悪の年だったという。一方で、良品計画やイケアなどでも布団や寝具の扱いが増えてきていた。

そこでもう一度、自社の商品を中心に販売していくことに決めた。「当時から試験的に商品を開発してはECサイトに載せ、顧客の反応を見ていた。売れなかったら何が悪かったのか考えたり、1つ2つ売れて反応が来たら、その声に合わせてバージョンアップしたり。インターネットはそういうことができる面白い道具。微々たる売り上げだったが、現在の主力商品の種まき的なことはすでに行っていた」と大東氏は振り返る。そこで顧客の反応などをベースにして商品を開発することを目標に据えた。このため「眠り」とは何かを考えるようになり、11年からは全社員が睡眠健康指導士の資格も取るようにした。すると新しい商品が次々に生まれ始める。注目を集めるにつれて、徐々に大東氏が実感したのはデザインの力だったという。

イーロン・マスクにロケット用の布団として使ってほしい

08年ごろから、展示会に出展し始めた。ある展示会で出会った銀座三越のバイヤーから「もう少し頑張れば、よい商品になるのでは」とアドバイスを受け、「銀座三越のような店舗と取引ができるかもしれないと気づいた。それまではBtoBへほとんど注力していなかったが、やらなければ損だと感じた」と意識を向け始め、デザイナーと協業するようになる。09年のインテリアライフスタイル展で初めて、大東氏は外部のデザイナーに展示会のブース設計を依頼した。「内心、ビクビクしながら取り掛かった。グラフィック、空間、さらに展示会のブース費用と、何でこんなにと思うほどお金がかかった。でもこのおかげで、いろいろなことにつながった」と大東氏は語る。メディアに取り上げられる機会も増えたという。11年ごろからは、インテリアライフスタイル展やギフトショーなどの展示会にもオリジナルの什器(じゅうき)で参加。結果、銀座三越でも取り扱われるようになった。

その後は、国内だけでなく国外へと販路を広げている。自費でロンドンへ渡り、人づてでコネクションをつくった。現地で若手のデザイナーとのワークショップも開催した。そして、あることに気づいたという。「やはり、デザインと経営は同じ発想じゃないといけない。ブランディング、マーケティングも同じ。ただ単に格好いいホームページを作るのがデザインではない。いかにお客さまに選んでもらえるかのストーリーを作るのもデザイン。もはや、どう収益を上げていくか自体がデザインなのだと考えている」と大東氏は話す。

現在は「メゾン・エ・オブジェ」「ニューヨークナウ」など欧米の展示会へも精力的に出展。徐々にディストリビューターも見つかり、今では11カ国で製品を販売している。海外メディアでの露出も増え、米紙「ニューヨーク・ポスト」や米ラグジュアリーライフスタイル誌「デパーチャー」にも掲載された。海外の売り上げはまだ4%程度だが手応えは感じているという。

発想の転換と新規事業への投資により売り上げを拡大してきた大東寝具だが、大東氏には心に決めていることがあるという。「EC事業を始めたときも感じたことだが、中小企業の場合、新規事業は経営者自らが取り組まないとだめ。そうじゃないと必要なことが何も覚えられないし、部下に業務を引き継いでマネジメントすることができない。現在、新しく力を入れているのは海外事業だが、売り上げに占める割合がが5%を超えるまでは僕自身がやろうと思っている」と話す。海外事業の他、現在はライフサイエンス系のグループとも研究・開発を進めているという。「イーロン・マスク氏が打ち上げるロケットの布団として使ってくれないかな」と語るなど、大東氏の野心は尽きないようだ。

(ライター 角尾舞)

[日経クロストレンド 2020年5月28日の記事を再構成]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連企業・業界

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_