アサヒ、Zoomで1000人飲み会 見えてきたのは

日経クロストレンド

アサヒスーパードライが4月25日に開催した「いいかも!オンライン飲み ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR」の様子。写真は乃木坂46の秋元真夏
アサヒスーパードライが4月25日に開催した「いいかも!オンライン飲み ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR」の様子。写真は乃木坂46の秋元真夏
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コロナ禍で外出自粛が続く中、企業はリモート技術を使った新たなビジネス戦略を模索している。アサヒビールは4月から5月にかけて、1000人が参加できる「オンライン飲み会」を4回にわたり開催した。

アサヒビールが開催したのは、「いいかも!オンライン飲み ASAHI SUPER DRY VIRTUAL BAR」と銘打った1000人のオンライン飲み会。米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのビデオ会議サービス「Zoom(ズーム)」を使用し、最大1000人が参加できる。4月25日に開催した第1回には、抽選で選ばれた1000人のうち、約700人が参加した。

イベントの狙いは、大規模なオンライン飲み会を通じて「新しい飲みの方法」を提案することだ。それにより、「一緒に飲むことで人と人をつなげられるというビール本来の価値を伝達したい」と企画した。

モノからコトへの大転換を体現する取り組み

同社はくしくも20年に「モノからコトへ」事業方針を転換し、物性訴求が中心だったマーケティング戦略を、情緒に訴えてビールの飲用価値をアピールする施策に切り替えたばかりだ。低迷が続くビールの売り上げ回復を目指して、若年層の掘り起こしや新たな需要の創出に力を入れ始めている。

そんな折に新型コロナウイルスの感染が拡大。飲食店の営業自粛などで飲み会需要が減る中、少しでも状況を挽回しようと新技術を用いた大規模オンライン飲み会の開催に踏み切った。人と人との接触が制限される中でも、前述の事業方針の大転換を体現した形だ。

第1回の開催当日は、お笑いコンビの三四郎がMCを務め、乃木坂46の秋元真夏、イメージキャラクターの高田里穂が参加した。飲み会は午後6時にスタート。乾杯の後は、高田がおいしいビールの注ぎ方をレクチャーしたり、4択クイズに全員でチャレンジしたり、AR(拡張現実)を用いたエンターテインメントコンテンツを試してみたりと、約1時間の飲み会中にさまざまな仕掛けを用意していた。双方向性も重視しており、参加者が飲み会中にハッシュタグをつけてツイッターで発言すると、MCの三四郎がそれを読み上げる場面もあった。

4択クイズのシーン。参加者は正解と思う色の壁紙に替えて回答する。事前に壁紙のダウンロードを指示されていたため、混乱はなかった
ARを用いたコンテンツも紹介

大規模オンライン飲み会の課題

飲み会終了後のツイッターには、「わちゃわちゃ感、最高でした!」「オンライン飲み会楽しすぎた!!!!」といった感想が書き込まれており、参加者からは好意的な意見が多かった。

アサヒビールは、「数年前には成立しなかった新しい飲みの方法が提案できた。『グダグダ感含めて楽しかった』という声もあり、皆さんのご意見を前向きにとらえてさらにブラッシュアップしていきたい」と手応えを見せる。

一方で、この初めての試みから見えてきた課題もある。まず、参加者へのマナーの周知、徹底だ。開始前には、画面に「合図があるまでカメラや音声をオフにする(ミュート)」との注意書きが出ていたものの、ずっと顔が映ったままの人が多く、マイクがオンになっているためにノイズを立てる人がいた。

2つ目は、双方向性の強化だ。相互にやり取りができるビデオ会議システムを使ったからといって、それだけで双方向のコミュニケーションが成立するわけではない。今回の飲み会では、4択クイズなど全員を参加させるための工夫も見られたものの、タレントたちだけが会話を進めて参加者はその様子を観客として見ているだけという時間が長かった。参加型というよりは、視聴型のコンテンツという印象は否めない。例えば、ラジオ番組のように事前に参加者からメールで質問やテーマに沿ったメッセージを募り、当日はMCが投稿者を指名してミュートを解除し、会話する、といった形にすれば、ビデオ会議システムを生かした双方向性の高い企画が実施できるだろう。

3つ目が、適正人数の問題だ。今回は、ビールを一緒に飲むことで人と人がつながれるというテーマのもと、参加者数をZoomが使用できる最大人数1000人に設定した。だが、実際に画面に1000人を映すのは不可能。結果的に、多くの人は画面を見ているだけになり、それも参加者を「観客」の感覚にしてしまう原因になったのではないか。

画面に一度に表示できる数が多過ぎれば一体感が薄まってしまう可能性もある

アサヒビールとしてもこれらの課題は認識しており、「今後は双方向性を一層向上していく考えだ。これらのイベントを起点に、オンライン飲み会で広く使ってもらえるような盛り上げコンテンツの開発や価値訴求にも注力していく」という。実際に、5月4日の第2回、16日に開催した第3回と回を重ねるにつれオンライン飲み会ならではの楽しみを見いだしつつある。第3回では、タレントがお題を出して参加者が絵を描き、それを参考に他のタレントが当てるといった、より双方向性の高いイベントも盛り込んだ。

課題はありつつも、新しい取り組みにチャレンジすることは大きな転換期においてはより重要だ。試行錯誤を繰り返した先に、ともにビールを楽しむ新たな飲み方を確立し、ビールの宅飲み需要回復の起爆剤となれるかが鍵だ。

(文 北川聖恵 画像提供 アサヒビール)

[日経クロストレンド 2020年5月26日の記事を再構成]

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