「現在、通信会社が5Gで取り組んでいるのは、データ量が大きくなる『VR(仮想現実)』や『AR(拡張現実)』などのコンテンツですね」(佐野氏)
3月9日、神奈川・カルッツかわさきで開催された高城れに(ももいろクローバーZ)のライブ『高城の大感さ祭』。新型コロナの影響を受け、ソロコンを延期して無人で行われたこのライブを、VR映像で中継したのが「REALIVE360」。4K/8Kの高画質映像でVR配信を行うサービスだが、現在はWi-Fi環境での使用を推奨している。しかし大容量通信が可能な5Gなら、外出先などでも気軽に楽しめるようになる。
AKB48は3月18日発売の57枚目シングル『失恋、ありがとう』でソフトバンクと共同でミュージックビデオの制作を行った。ARの技術を使い、35人のメンバーそれぞれとその場にいるかのような写真や動画が撮影できるなどのコンテンツを展開したが、その背景には5Gをユーザーに具体的にイメージしてもらいたいという狙いがあった。
「今まで実現できなかった体験を打ち出すことで、イメージしづらい5Gというキーワードを一般ユーザーに分かりやすい形でお伝えできればと考えました。その上で、大きく3つの取り組みを実現しました。それが『VRで臨場感のある“超神席”体験 』『ARで高品質アバターをお手元に』『18人全員主役のミュージックビデオ』です。どれも5Gの大容量通信が前提のコンテンツです」(ソフトバンク広報の阿部裕介氏)
5G活用の新型ライブも
前述の佐野氏が注目するのは「ネットワークの低遅延」を生かしたコンテンツだ。
「17年11月、NTTドコモが打ち出したプロジェクト・FUTURE-EXPERIMENTではPerfumeの3人が東京、ロンドン、ニューヨークとそれぞれ別の場所にいながら中継でつなぎパフォーマンスを披露するという実証実験を行いましたが、こういった企画は、5Gならではのイベント。このような試みも、今後5Gが発展するにつれ、増えていくことでしょう」
4月18日に日本でも配信された特別番組『One World: Together at Home』。新型コロナウイルス感染症との闘いを支援するグローバル・ストリーミング・コンサートだが、参加したザ・ローリング・ストーンズの4人は、それぞれ別のカメラの前で演奏した。こういった試みも、低遅延の5Gが普及すればリアルタイムで行うことができるわけだ。
特に現在は新型コロナウイルスの影響で、ライブの開催が難しくなっている。REALIVE360を手掛ける西日本電信電話(NTT西日本)の笹原貴彦氏は「これまで以上にライブ配信事業が注目されている」と感じているという。「アーティストが直接ファンの皆さまにライブを届けられるプラットフォームの役割にREALIVE360がなれればと思っています。その上で5G回線の普及には大きく期待しています」
ライブ会場でスマホを活用
一方で、5Gは配信だけでなく、ライブそのモノを変える可能性を秘める。例えば会場でスマホを使い、様々な角度から楽しむマルチアングルだ。「マルチアングルも扱うデータが大きいので、5Gの長所を生かせます」(佐野氏)