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プロが教えるアイデア練習帳

2020/6/3

プロが教えるアイデア練習帳

はじめに、テークアウトやデリバリーなどの切り口です。これらの着眼点は、実は共通しています。一言で言えば、「食べる場所をずらす」ということです。

お店で食べるのが難しければ、自宅で食べてもらうしかありません。そこで考えられるアイデアの着眼点の1つが、「食べる場所をずらす」ことです。この着眼点のもとに、取りに来てもらう「テークアウト」という切り口と、直接届ける「デリバリー」という切り口の2つがあると考えられます。

次に、先払いサービスのアイデアについて考えてみます。このアイデアは、「食べる時間をずらす」という着眼点に基づいています。自粛期間においては、「今」は店舗に集まることが難しい。それならば時間の軸をずらして「未来」に来てもらおう。そのための切り口として、先払いするというアイデアが生まれたのではないでしょうか。

一方、背景画像を購入するというアイデアは、上記の二つとは着眼点を発見するアプローチがやや異なります。これまでのアイデアは、飲食店が最も得意である「お店の味」を届けるために時間や場所をずらしていました。しかし、背景画像を購入するというアイデアは、たとえ購入したとしても、お店の味を味わうことはできません。

このアイデアの着眼点は、お店の味ではなく、お店にいるような「雰囲気を届ける」ことです。オンライン飲み会で、自分がお気に入りのバーや居酒屋の背景画像を使えば、飲み会の雰囲気を作ることができる上に、「そのお店はどこ?」といった会話のネタにもなり、新しいお客さんとの接点にもなります。お店の味を届けることはできなくても、お店の「雰囲気を届ける」ことで、オンライン飲み会を盛り上げる一助になっているといえます。

「着眼点」からアイデアを広げる

アイデアを着眼点と切り口の2つの視点で整理すると、大きく3つの着眼点があることがわかりました。

・食べる「場所」をずらす
・食べる「時間」をずらす
・雰囲気を届ける

このように着眼点を言語化しておくと、さらにアイデアを広げたいときの足がかりになります。例えば、以下のように考えることができます。

・食べる場所は、これまで自宅中心だったけれど、これからはオフィスで食べる機会も増えそうだぞ。オフィス需要に対応したアイデアを考えよう
・食べる時間は、季節や記念日と組み合わせて、もっと定期的なものにできないだろうか
・オンライン飲み会に「雰囲気」を届ける方法は他にもありそうだぞ。実際にやっている人たちにインタビューしてみよう

新しいアイデアに出会ったときに、その着眼点が何かを自分で言語化することは、アイデア発想力を高める良いトレーニングになります。切り口ではなく着眼点のレベルでアイデアを分析することが、発想力を高める第一歩だと言うことができます。

着眼点を発見する第一歩は、行動観察から

また、新しい着眼点を発見するには、顧客の行動を観察することが重要です。

例えば、背景画像を販売するアイデアは、「飲食店に行きたくても行けない人は、代わりに何をしているのか」「どうやら、オンラインで飲み会をしているらしいぞ」「オンライン飲み会では、背景画像を変えて楽しんでいるらしい」という、顧客の行動が大きなヒントになっています。

著書「プロが教えるアイデア練習帳」には、着眼点を見つけるために顧客の行動を観察して新たな着眼点を見つける「行動観察法」が登場します。社会の変化が激しく、どんなアイデアをすれば良いのか迷うときこそ、「お客さんの喜ぶことをする」という基本に立ち戻ることが重要です。

飲食店業界に限らず、これからも様々なアイデアが生まれてくると思います。

この連載では、アイデアを切り口のレベルだけで捉えずに、「このアイデアの着眼点は何か」と分析することで、アイデアの発想力が高めるヒントを見つけていきたいと思います。

岡田庄生
博報堂ブランドイノベーションデザインディレクター。1981年東京都生まれ。国際基督教大学卒、2004年博報堂入社。PR局などを経て、現職。14年に日本PR協会「PRアワード2014」優秀賞受賞。共著に『博報堂のすごい打ち合わせ』など。

プロが教えるアイデア練習帳 (日経文庫)

著者 : 岡田 庄生
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 935円 (税込み)

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