ひそかに、プレミアムブランドのコンパクト4ドアが増えてきている。その中でも特に走りとスタイリングに力を入れた、ひと味違う「4ドアクーペ」が、新型BMW2シリーズ グラン クーペだ。日本人向きともいえる小さな欲張りスタイリッシュカーを、小沢コージ氏が斬る。
裏にはコンパクトクラスのFF化戦略
プレミアムブランドのコンパクト4ドアが盛り上がってきた。どれも判を押したように全長4.5m前後と日本でも扱いやすいサイズ。これまでこのクラスの定番は5ドアハッチバックだったが、4ドアのセダンタイプが登場しているのだ。一番の古株は14年に上陸したアウディ「A3セダン」だが、19年にメルセデス・ベンツはコンパクトクラスで初めてのFFセダン「Aクラスセダン」を発売。そしてBMWからも「2シリーズ グラン クーペ」という新作が今春登場した。
コンパクトな4ドア車が相継いで登場している背景には、彼らの新FF(前部エンジン・前輪駆動)戦略がある。以前からFF車や4WD(四輪駆動)車を中心としてきたアウディはともかく、かつてはリア駆動のFR(前部エンジン・後輪駆動)車がメインだったメルセデスやBMWも、コンパクトクラスは徐々にFFにシフトしてきた。
メルセデスは12年にコンパクトな5ドアハッチバックのAクラスを今まで以上にスタイリッシュに変貌させて人気を集め、FRにこだわり続けてきたBMWもついに14年、ブランド初のFFコンパクトハッチバック「2シリーズアクティブツアラー」を発表した。19年には、従来FRを採用してきたコンパクトハッチバックのBMW1シリーズもFFに変更。そして今回、その4ドアクーペ版ともいうべき2シリーズグランクーペが登場したのだ。
クルマには、いわゆる高級車=リア駆動というクオリティ信仰が存在する。マグロの本命がクロマグロであり、高級赤ワインの産地といえばボルドーであるように、高級車の王道は後輪駆動車だった。しかし今、その図式が少しずつ崩れようとしている。