「新しい仕事服様式」 ここに注意

西さんはドラマや映画での登場人物をスタイリングするとき、「その人物の職業やキャラクター、置かれている環境とともに、今後どのような人生を歩き、どのような人間になっていくのかという未来像を考えている」と話す。西さんには、前田さんと宝金さんが考える「10年後」をあらかじめ伝えている。

前田さんは「周囲から変わっていると言われる子どもでも、居場所が持てるような場作りに貢献したい」との夢を持つ。宝金さんは「子どもや若い世代の成長の一助となるような発信ができるよう、地位にこだわらず、ずっと働き続けたい」と思っている。

これも踏まえ、西さんはどのような点を意識したのだろうか。

【前田さんのポイント】

「ファッションの自由度を探ることに少し疲れて、無難な型にはまっていると感じました。ただ、未来像を聞くに、周囲の目ではなく自分自身の価値観をしっかりと持つことを大事にしています。ファッションでも、自分の価値観を大切にしていくことを心がけてほしい。誰がなんと言おうと『私はこれが着たい』という、自分の心の声に正直になってほしいのです。今回、朱赤の入ったスカートを選んだように。自分がワクワクする服を着るという意識を続けていれば、それが自分の生き方や考え方を発信するツールになっていくでしょう」

【宝金さんのポイント】

西さんのコーディネートでモデル顔負けのポージングをする宝金さん。コーヘンのニット(2万7000円)、ルシェルブルーのスカート(2万4000円)、マルコマージのバッグ(1万4500円)、コンバースのスニーカー(1万5000円)

「『これは私には似合わない・似合う』と、自己規制が強いように思いました。ただ、自分の評価に閉じこもっていては、それ以上は進めません。宝金さんの将来像からは『いつまでも自分らしくいたい』というメッセージが伝わってきます。ただ、宝金さんが思う自分らしさと、他人が思う宝金さんらしさは違うかもしれません。殻を破って、自分らしさを探すことに挑戦してほしいと思い、絶対に選ばないだろうスカートを合わせてみました。友人と一緒に洋服を買いに行き、他人の意見を聞いてみるのもいいかもしれません」

“変身”取材を終えて

前田さんと宝金さんが、変身するビフォーアフターで、別人のように生き生きしていることが、写真からでも伝わってくる。「久しぶりに、洋服を買いたくなった」「予定調和的な制服化した自分がつまらなく感じた」「食事会のときはきれいな色の服を着ようと思う」。コーディネート後の2人の高揚した会話を聞き、「テンションが上がる服」が持つパワーに圧倒された。西さんが持論としているスタイリングに対する考えは、まさにビフォーコロナから進化するための「新しい仕事服様式」といえるだろう。10年後の2人の姿が楽しみだ。

「新しい仕事服様式」のススメ
○自分のテンションが上がるものを毎日1つ取り入れる。
○シンプルすぎるファッションは、人生をつまらなくさせると心得る。
○日々の暮らしだけを見ていると、「着る」というルーティンが苦痛になると知る。
○長期的に「なりたい自分」をイメージし、ファッションはその自分に近づくための「表現の場」ととらえる。
○「この服を選んだ理由は、こんな考えから」と自分で言葉にしながら服を選んでみる。
○スタイリングを楽しむ!
西ゆり子
1950年生まれ。『MISS』『non-no』などの雑誌や広告のスタイリングを手がけた後、『11PM』『なるほど!ザ・ワールド』を皮切りにテレビの分野に活動を広げ、テレビ番組におけるスタイリストの草分け的存在となる。ドラマやCM、映画での洞察力あふれるスタイリングは高い評価を得ており、指名する女優も多い。これまで手掛けた作品は「のだめカンタービレ」「セカンドバージン」「家売るオンナの逆襲」「時効警察はじめました」など。

(編集委員 木村恭子)


(取材協力)そごう千葉店、「キートゥースタイル」「モードプラス」「ミハマ」「ビジンネス バイ サザビー」。ピアスは持ち込み。ピアスを除く写真掲載の商品は同店(043-245-2111)にお問い合わせください。すでに売り切れの場合もあります。ピアスはメスモ(055-269-5426)まで。

(取材は3月実施)

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