ニューノーマルでも長引く疲れ 自衛隊流の対処法は元自衛隊心理教官の下園壮太さんに聞く(下)

日経Gooday

写真はイメージ=(c)maru-123RF
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日経Gooday(グッデイ)

新型コロナ禍という有事をどう乗り越えていけばいいのかを、元・陸上自衛隊心理教官で心理カウンセラーの下園さんに3回にわたって伺うシリーズ。最終回の今回は、今、心の疲れとともに高まりやすい「自責感」を掘り下げます。

いつもとは違う日常が続き、先行きへの不安で気持ちが消耗することは、ある程度、避けられないこと。だからこそ、「ため込まないうちに、こまめにケアする」ことが大切です。疲れをケアし、エネルギーを回復するコツは、「慣れ親しんだ、心地よいこと」をすることだと下園さんは話します。

「なんとなく悪いことをしている感じ」が強まってくる

編集部:新型コロナはまさに「有事」と先生はおっしゃいましたが、ニュースやネットに流れる情報、街の風景も一変しています。マスクをつけたり、人との距離をとるという生活には慣れてきたものの、なぜだか気持ちが沈む、といった人も多いようです。

下園さん:前回、「うつ状態になると、無力感、自責感、負担感が過剰になる」とお話しましたね。おっしゃるとおり、今、新型コロナによって社会は、漠然とした不安に包まれている状態です。特に今は「自責」が強まってきているのではないでしょうか。

自責は、言い換えるなら、「なんとなく悪いことをしている感じ」です。

何に対して悪いことをしていると感じるかは、人それぞれです。

今の時点で多いのはこんな感覚です。

▼なんとなく、自分が人を感染させてしまうのではないか。それで身近な人が死んでしまったらどうしよう、周囲から責められたらどうしようという自責感 
▼テレワークで仕事をしているが、なんとなくさぼっているような気がする自責感 
▼楽しいことをしては良くないという自責感 
▼懸命にがんばっている人がいるのに、こんなときに休んでいてはダメだという自責感 
▼イライラを身近な人にぶつけてしまう自責感 
▼ストレス解消に、ついSNSをしすぎたり、ゲームをしすぎることによる自責感

不安やイライラを止められない自分は、今の事態にうまく対応ができていない。病気に対して何もできていない。経済も、自分ではどうしようもない。こういった「無力感」も高まっています。

人のいない町中を歩いたり、感染拡大を防ぐために行動を制限しているだけでも、警戒心によってエネルギーが削られています。

通勤する必要がなくなり、仕事の予定がキャンセルになって意外と自由な時間が増えている人もいます。しかし、その代わりに、外に自由に出られない我慢の苦しさが高まっているのです。

人間にとって一番苦しいのは、「幽閉されること」。だから、世界共通の罰は、監獄に入れられることなのです。閉じこもるだけでも、人は辛い。監獄に入っている人に「暇でいいな」とは言わないでしょう。今の状態は、堂々と、辛いといっていい状態なんですよ。

外出制限が解かれた後に、重くて長引く「五月病」が増える?

編集部:日々の環境が大きく変化し、自由を制限されているだけでも相当に疲れるのだ、と認めることで、イライラしてしまうことにも納得ができる。休んでいることへの後ろめたさも鎮まる、ということですね。

下園さん:そうです。そもそも、不安という感情は、短期戦に備える気持ちです。今やらなきゃ、しかも焦って今やらなきゃ、というモードでエネルギーを動員させます。

しかし、「100メートルのつもりでダッシュしたのに、1キロあった」というのが今の状態。長期戦、というイメージに書き換えないと、エネルギーが持ちません。

自衛隊や軍隊では、「エネルギーの消耗」について優先的に考える、という話は前回もお話ししました。長期戦になるとともに、疲れは拡大していきます。

軍隊でも、医療従事者は戦闘や災害派遣といった出来事において、「直後のストレス反応」に注目しますが、継続的に現場の責任を負わなければならない指揮官は、むしろ「兵士の疲労」をしっかりとケアします。

というのも、しばらくたって、危機が落ち着いた頃に、調子をがくっと崩す人が多くなるからです。

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