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ニューノーマルでも長引く疲れ 自衛隊流の対処法は

元自衛隊心理教官の下園壮太さんに聞く(下)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

新型コロナ禍という有事をどう乗り越えていけばいいのかを、元・陸上自衛隊心理教官で心理カウンセラーの下園さんに3回にわたって伺うシリーズ。最終回の今回は、今、心の疲れとともに高まりやすい「自責感」を掘り下げます。

いつもとは違う日常が続き、先行きへの不安で気持ちが消耗することは、ある程度、避けられないこと。だからこそ、「ため込まないうちに、こまめにケアする」ことが大切です。疲れをケアし、エネルギーを回復するコツは、「慣れ親しんだ、心地よいこと」をすることだと下園さんは話します。

「なんとなく悪いことをしている感じ」が強まってくる

編集部:新型コロナはまさに「有事」と先生はおっしゃいましたが、ニュースやネットに流れる情報、街の風景も一変しています。マスクをつけたり、人との距離をとるという生活には慣れてきたものの、なぜだか気持ちが沈む、といった人も多いようです。

下園さん:前回、「うつ状態になると、無力感、自責感、負担感が過剰になる」とお話しましたね。おっしゃるとおり、今、新型コロナによって社会は、漠然とした不安に包まれている状態です。特に今は「自責」が強まってきているのではないでしょうか。

自責は、言い換えるなら、「なんとなく悪いことをしている感じ」です。

何に対して悪いことをしていると感じるかは、人それぞれです。

今の時点で多いのはこんな感覚です。

▼なんとなく、自分が人を感染させてしまうのではないか。それで身近な人が死んでしまったらどうしよう、周囲から責められたらどうしようという自責感 
▼テレワークで仕事をしているが、なんとなくさぼっているような気がする自責感 
▼楽しいことをしては良くないという自責感 
▼懸命にがんばっている人がいるのに、こんなときに休んでいてはダメだという自責感 
▼イライラを身近な人にぶつけてしまう自責感 
▼ストレス解消に、ついSNSをしすぎたり、ゲームをしすぎることによる自責感

不安やイライラを止められない自分は、今の事態にうまく対応ができていない。病気に対して何もできていない。経済も、自分ではどうしようもない。こういった「無力感」も高まっています。

人のいない町中を歩いたり、感染拡大を防ぐために行動を制限しているだけでも、警戒心によってエネルギーが削られています。

通勤する必要がなくなり、仕事の予定がキャンセルになって意外と自由な時間が増えている人もいます。しかし、その代わりに、外に自由に出られない我慢の苦しさが高まっているのです。

人間にとって一番苦しいのは、「幽閉されること」。だから、世界共通の罰は、監獄に入れられることなのです。閉じこもるだけでも、人は辛い。監獄に入っている人に「暇でいいな」とは言わないでしょう。今の状態は、堂々と、辛いといっていい状態なんですよ。

外出制限が解かれた後に、重くて長引く「五月病」が増える?

編集部:日々の環境が大きく変化し、自由を制限されているだけでも相当に疲れるのだ、と認めることで、イライラしてしまうことにも納得ができる。休んでいることへの後ろめたさも鎮まる、ということですね。

下園さん:そうです。そもそも、不安という感情は、短期戦に備える気持ちです。今やらなきゃ、しかも焦って今やらなきゃ、というモードでエネルギーを動員させます。

しかし、「100メートルのつもりでダッシュしたのに、1キロあった」というのが今の状態。長期戦、というイメージに書き換えないと、エネルギーが持ちません。

自衛隊や軍隊では、「エネルギーの消耗」について優先的に考える、という話は前回もお話ししました。長期戦になるとともに、疲れは拡大していきます。

軍隊でも、医療従事者は戦闘や災害派遣といった出来事において、「直後のストレス反応」に注目しますが、継続的に現場の責任を負わなければならない指揮官は、むしろ「兵士の疲労」をしっかりとケアします。

というのも、しばらくたって、危機が落ち着いた頃に、調子をがくっと崩す人が多くなるからです。

編集部:どうして、危機が落ち着いて解放された頃に調子を崩してしまうのですか。

下園さん:危機の最中は、危険に対処するためにアドレナリンが分泌して、疲労を感じさせないように体が働きます。しかし、その間にも、ふだんより「過剰」になったぶんの疲労は蓄積されていきます。警戒レベルが高いときは、戦場でも兵士はむしろ元気です。しかし、一段落したときに、隠されていた疲労が表面化するのです。

今、みなさんにも消耗が出始めています。

例年、4月に大きく環境が変わり、その疲れがどっと出た結果「五月病」が起こるのですが、今年は、休校や活動の自粛が解除された後に、新たな環境変化に直面し、そのときに通常よりも重たくて、長引く「五月病」が増えるのではないかと危惧しています。新型コロナもいつかは終息します。終息したときに「もう終息したのに、どうしてこんなに落ち込んでしまうんだろう、起き上がれないんだろう」という矛盾を感じたら、「それだけ疲れをためていたんだ」と認めてほしい。学校も、職場も、遅れたぶんを取り戻そうとしてハイペースに、バタバタになるでしょう。それが予測されるからこそ、今は、疲れをむやみに蓄積しないようにしておきたいのです。

「タスク系、理屈系」よりも「雰囲気系」で疲れをケア

編集部:消耗を加速させないために、今心がけたいのは、「不安感情を認める」のと同じように、「疲れた自分を認める」ことでしょうか。

下園さん:そうです。しかも、すぐには回復できない、と知ることです。疲れ切ったとき、人間は何もできません。できるようになるまでは時間がかかるし、ある程度疲労がたまってしまった状態となると、ゆっくりとしか回復していくことができません。

編集部:なにか、日々取り入れられる習慣はありますか?

下園さん:こういったときは、「タスクを課す」ことは避けたほうがいいです。それができなかったときに、より「自責」を刺激することになるからです。

時間があるから語学学習をしようとか、家中をきれいにしようとか、うっかり考えてしまいがちですが、こういうときは「慣れた行動」のほうが集中でき、かつ気分転換になります。いつもやっていることで、楽しく集中できることは何かな? と探してみてください。

ゆったりと自分をケアするときには、「タスク系、理屈系」よりも「雰囲気系」、と私は言うのですが、リラックスできる、脱力できるようなことがいいのです。音楽を聴く、心地よい布団にくるまる、ペットをなでる、ごはんをよくかんで味わう。猫の癒やし動画やお笑い動画もいいですね。10分ぐらいでコンパクトにできるリフレッシュがお薦めです。

編集部:心がざわざわしたときは、紙に気持ちを書き出すのはどうでしょう。

下園さん:とてもいいですね。「何が今、一番不安なのかな」と自分に問いかけてみるといいでしょう。安心できる人とディスカッションしているのと同じような感じで、浮かんでくる気持ちをどんどん書き出すのです。

編集部:じつは、書き出す、ということを先日、やってみたのです。「これまで貯金をしてこなかったから今こんなに不安なんだ」とか「気持ちが沈んで、家族の盛り上げ役ができない」とか、自責がたくさん出てきました。書き出してみて、「盛り上げ役とか特に誰も期待してないよ」と自分で突っ込みました(笑)

下園さん:そういったことも、表現してみないと気づきもしないで、じわじわと自分を責めているのですから、書くことの効果はそこにあるんですよ。

感情は、一瞬のうちに恐怖や不安といった特性のイメージを抱かせて、そのイメージから離れられなくします。抽象的には、なかなか言葉が出てこないことがあります。

しかし、取り出して見て、洗い出してみると、「その考えは、そこまで自分を持続的に消耗させる必要がないテーマだな」と気づいたりします。一人でずっと考えるより、書くことで、人と話しているような効果が得られる。書くことには、カウンセリングと同じような効果があります。

とはいえ、「今の悩みが100%解決する」というような、過大な期待はもたないこと。「まあ、たいしたことないかな、と少し思える」、「そこまで今、焦ることもないか」と思える、というふうに心のプロセスが少しだけ進むことに、効果の本質があります。そうやって感情をなだめることで、感情の勢いも、感情を抑え込もうとするエネルギーも節約できることによって、本来の冷静な思考が回りやすくなってきます。

今回お伝えしたことは、新型コロナ禍のような大きなストレス状況はもちろん、日常で疲れがたまったとき、イライラしたときなどにも共通して役立つ対処です。ぜひ、読んで「分かった気になる」だけにとどめず、行動に落とし込んで、その効果を確かめてみてくださいね。

まとめ
疲れは自責感を呼ぶ。新たなことはなるべく避けて、
慣れた日常を過ごして長期戦のエネルギー消耗を減らそう。

(ライター 柳本操、インタビュー写真 菊池くらげ)

[日経Gooday2020年5月26日付記事を再構成]

下園壮太さん
心理カウンセラー。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。心理幹部として多くのカウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援を元に理論を展開。NPO法人メンタルレスキュー協会理事長。『自衛隊メンタル教官が教える 50代から心を整える技術』(朝日新書)など著書多数。

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