アイサイトの認識イメージ。人間の目と同じように2つのカメラで前方を立体的に捉えられるため、目の前の物体が「衝突の可能性がある道路を横切る立体物」なのか「地面に描かれた(衝突の可能性がない)模様」なのかを判別できる。

ステレオカメラにこだわる理由

大音 他社には単眼カメラとレーダーを組み合わせたシステムもありますが、スバルがステレオカメラにこだわってきたのはなぜですか。

丸山 ステレオカメラは、人と同じ2つの目で見ることで、画像の識別と、視差による距離測定ができる優れたシステムなんです。「クルマは人が運転するのだから、目と同じ仕組みのステレオカメラでも運転ができるはずだ」という考えで開発してきました。

ただステレオカメラを量産化するには、高いハードルがあります。製造の精度が高くないと正確な距離が測れないからです。ここが非常に難しいのですが、それでもスバルがステレオカメラを続けられたのは、元々計測機として開発してきた経験も大きかったと思います。

編集部 センサーとして見ると、レーダーにもメリットはあるのではないですか。

丸山 もちろんです。例えば、粉雪が舞うようなドライバーの視界が悪い状況では、電波を使うレーダーのほうが先行車を捉えやすいという強みがあります。ただしレーダーも、カバーに雪が付着してしまうと使えません。一方、室内に設置されているステレオカメラは、フロントガラスの雪をワイパーで取り去ることが可能ですから、状況によってはステレオカメラのほうが雪に強いケースもあります。

ステレオカメラは正面から直射日光が当たる状況ではうまく作動できない場合もありますが、現在はこの点も大幅に改善されています。レーダーとステレオカメラはそれぞれ一長一短がありますが、総合的な評価では、ステレオカメラは悪環境にも強いほうだと思います。

編集部 スバルとしては弱点が少なく最も効率が良いものが、ステレオカメラだとお考えなのですね。

丸山 そうですね。もちろんセンサーを追加すればするほど精度は高まりますが、やはり買っていただける価格に抑え、お客様に使っていただくことが大切ですから。

編集部 現行車種ではどのくらいが装着しているのですか。

丸山 スバル製のほぼ全車種に標準搭載しています。設定がないのは、スポーツカーのBRZとOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けている車種だけです(※OEM元が提供する先進安全機能が設定されている)。

編集部 それは驚きですね。やはり先進の安全運転支援システムを気にする人は増えていますか?

丸山 クルマ選びにおいて優先順位の上位にあるのは、間違いありません。

後編ではアイサイトの強みや今後の方向性について、引き続き丸山氏に聞く。

フロントウインドー上部に設置されるアイサイトのカメラ部分。手前にあるスマートフォンと比べてもコンパクトに収まっていることが分かる
大音安弘
 1980年生まれ、埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に転身。現在は自動車ライターとして、軽自動車からスーパーカーまで幅広く取材している。自動車の「今」を分かりやすく伝えられように心がける。