家電女優の奈津子です。女性向けの美容家電で有名な、美容・健康機器メーカーのヤーマンが、2020年4月に武田真治さんを起用したテレビCMを開始しました。目から下、口以外の顔半分を覆った“黒いマスクのようなもの”を装着した武田さんがとても印象的。それを見た瞬間、黒いマスクが何なのか、同社になじみのない一般の消費者、特に男性はとても気になるだろうなあと思いました。
実はそのマスクの正体は、ウエアラブルEMS美顔器「メディリフト」。電気的に筋肉を刺激する技術「Electrical Muscle Stimulation」(EMS)を利用し、メディカルシリコーン製のマスクにEMSの刺激を発生させるコントローラーを埋め込んだ美容家電です。同社は19年にも、男性モデルを起用した新聞広告を掲載しています。美容家電といえば、これまで女性がメインターゲットの商品でした。でも一連の広告展開から、ヤーマンは男性ユーザーも意識しているに違いない。そう思い、販売戦略や購入者の変化、開発の裏側について同社ブランド戦略本部の吉田誠さんに話を聞きました。
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――ヤーマンといえば女性向け美容家電のイメージが強いのですが、広告に男性モデルも起用したのは、男性の購入者も増えているからでしょうか。
吉田誠さん(以下、吉田) 増えています。メディリフトは18年3月に発売したのですが、19年9月時点のオンラインサイトの購入をみると男女比は2対8です。2割というと少ないと思われるかもしれませんが、女性ユーザーがメインの当社製品としては異例の数字でした。実際、前年同月と比べると、男性は30%増えていました。
――シェーバーなどではなく、美容家電では確かに驚きの数字ですね。どんな男性が買われているのですか?
吉田 年齢別では30代後半がピークで、40代で少し減り、50代で再び増えていました。30代の男性に支持されたのは、所得も上がり、人前に立つ機会も増えるためではないかと推測しています。興味深いのは旅客機の機内販売で購入される男性客が多いこと。これもビジネスマンに支持されているからではないかと考えています。

身に付けるだけの簡単さが男性に受ける
――従来の手持ちタイプの美顔器ではなく、「ウエアラブル」という点も男性に受けた理由かもしれませんね。
吉田 それはあると思います。そもそもメディリフトを開発したのは、これまで多くの美容家電を発売する中で、「続かない」「使い方が難しい」という意見が多かったからです。「それなら、究極の美容家電って何だろう」と突き詰めて考えた末にたどり着いたのが、マスク型でウエアラブルというコンセプトでした。これならお客様は何もしなくても身に着けるだけでケアができます。
――私もメディリフトを購入して使っていますが、両手が空いた状態でも顔のケアができる構造はストレスがなく、家事や仕事と並行しながら使用できるので、忙しい現代人に刺さるだろうなと感じています。しかも使い方が分かりやすいですよね。
吉田 男性に支持されたのは使い方がシンプルである点も大きかったと思います。美顔器に不慣れな男性にとっては、従来の手持ちタイプは手順が多くて、ハードルが高かったのかもしれません。
――広告では「メディリフト アイ」を男性モデルが付けていました。メディリフト アイのほうが男性に支持されているのでしょうか。
吉田 メディリフト アイの男女比は1対9です。販売数としてはメディリフトのほうが多いですね。美顔器で効果を期待するのは主に顔に対するリフトケア効果ですから、そちらが支持されているということでしょう。スキンケア用品では、どんなに高級な製品でも筋肉へのアプローチまではできませんから。ただメディリフト アイも男性に受け入れられる可能性は高いと考えています。年齢が上がると目元のエイジングによる変化を気にされる男性も増えてきます。そういった方々に、この製品の長所をどう伝えるかが今後の課題です。
――ヤーマンの開発チームには男性も多いそうですね。
吉田 開発チームは工学の専門知識が求められるため、男性が約9割です。開発時は男性メンバーも自分の顔で実際に試しています。ただ最近は女性の開発メンバーも増えてきました。営業、広告の女性社員にも協力してもらい、使い心地やデザインなどについての意見を聞き、反映することも多いです。そうやって社内で一通りの条件をクリアした上で、外部の試験機関へ依頼して検証するという形で製品化を進めています。