消費者が持ち帰りたいと言っても、「NO」と語る店側の本音

リクルートライフスタイルの2018年の調査では、消費者の87.6%が料理の持ち帰りに賛成だったが、食品の持ち帰りを実行した人は、料理を残した人の35.4%に留まった。持ち帰らなかった理由は「持ち帰りOKの店かどうか分からない」がもっとも多かった。

実際、持ち帰りNGの店もある。「外食産業が持ち帰りを敬遠するようになったのは、チェーンオペレーションが発達したからです」と、小林さんは話す。

大手外食チェーンには、経験の浅いアルバイト店員も多いため、持ち帰りに対応すると作業が煩雑になり、店が回らなくなる恐れがある。また、持ち帰りすること自体を規制する法律はないが、後の管理が悪く食中毒が発生した場合、責任の所在を明確にするため店には保健所の調査が入る。これによって風評被害を受けるリスクもある。

「1店舗での問題がチェーン全体のブランディングにも影響するため、『原則持ち帰りは認めない』と一律にオペレーションすることにも一定の合理性はあります。ただ、最近では一部のチェーン店でドギーバッグを解禁したり、すでに独自の包装容器を用意したりするなどの動きも見られます。持ち帰り可能であることを店内に掲示する、消費者が心理的ハードルを克服し、『持ち帰りたい』と意思を伝えられるかが課題です」

一方、廃棄物の処理費用は多くの場合定額制で、量が減っても料金は同じだという。これでは、客に持ち帰りを勧めて食品ロスを減らそう、というインセンティブは生まれづらい。

品ぞろえが豊富なスーパーの「欠品恐怖症」

顧客の欠品クレームがスーパーの食品ロス発生のきっかけになることも(写真はイメージ=PIXTA)

スーパーやコンビニなど流通業界でも、膨大な食品ロスが発生する。店が多すぎて競争が激化し、競合店よりも品ぞろえを豊富にしようとするためだ。

小林さんは、食品商社での勤務経験があり、流通の実態を熟知している。特に特売品の場合、流通は欠品を絶対に許さない。台風で通常の供給ルートが断たれた時、利益をはるかに上回る輸送費をかけて、商品を納品したこともあるという。

「顧客のクレームなどを恐れ『欠品恐怖症』に陥っていることも、食品ロス発生に拍車を掛けています」と指摘する。

子育て世代がよく利用する食品の宅配。商品陳列の必要がないので「食品ロス」につながりにくいと思いきや、功罪両面があるという。

「商品を積み上げて売り場を演出する必要がない半面、注文量が予測しづらく、多めに商品を用意してしまいがちです。食品ロスの面では痛しかゆしと言えるでしょう」

食品ロス削減の「カギ」は、意外にもコミュニケーションにある?

小林さんは、事業者の食品ロス削減に必要なのは、消費者との「コミュニケーション」だと強調する。

子ども世代はもう知らないのではないか。青果店や鮮魚店が流通の主役だったころは、店主が少々時間のたった素材の食べ方を客に教えたり、客の反応を見て安くまとめ売りしたりした。

「しかしスーパーやコンビニは、大規模化・効率化の過程でコミュニケーションをそぎ落とし、商品を置くだけの場所になってしまいました。欠品を恐れるのも、顧客に理由を説明し、納得してもらう努力を怠っているためです」

ただ、流通にも変化の兆しはある。関東地方でスーパーを展開するサミット(東京・杉並)には、食品の調理の仕方などを教える「案内係」の店員がいる店舗もあり、彼らを目当てに来店する客も多いという。

関東を中心としたディスカウントスーパーのオーケー(横浜市)は、商品が天候不順で欠品・高騰した時などに「長雨の影響で、レタスの品質が普段に比べ悪く、値段も高騰しています。しばらくの間、他の商品で代替されることをお薦めします」などと提案する「オネスト(正直)カード」を掲示している。

「流通業界が、量を確保して余ったら捨てるというやり方から、消費者との関わりを深める質的な競争に転換することで、食品ロス対策も進むのではないでしょうか」と、小林さんは言う。

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「食品ロス」をなくすため、私たちが家庭でできること