どうなる「新しい日常」のビジネスマナー 名刺交換は「新しい日常」のスタンダード(下) プレゼンスコンサルタント 丸山ゆ利絵

「名刺交換のマナー」は日本だけのもので、様式美ともいえる交換の所作は日本以外では見られません。海外では「私のビジネスカードです」と片手でぱっと渡し、受け取る方も「ありがとう」と片手で気軽に受け取る程度。日本では、名刺のようなモノに対しても精神を見出し大切に扱う独特の感性と、儀式で書面を渡すときの所作がミックスされたのだと考えられます。

名刺交換はどうなる?(写真はイメージ)=PIXTA

業務としての合理性からいうと、オンラインのほうが簡単でスピーディーで、整理しやすい利点があります。ただ、マナーやエチケットというものは、知っている、ということが「必要な礼節を有している人間である」「必要な敬意を表している」と認められるサインになるのです。丁寧な所作だけに急にやめてしまうと、自分がないがしろにされているような気分になる人もいるでしょう。

感染拡大の恐れがまた強くなれば、接触行為は自ずと避けることになりますし、「オンライン交換で十分だ」という声が多くなれば自然になくなっていきます。ただ、その過程では「~という訳で、名刺交換は簡単にさせていただきます」「名刺交換はオンラインとさせてください」といった言葉がけが必要なシーンは生まれるでしょう。少なくとも今のところはきちんとできる所作を身につけた方がよく、適切な言葉がけができるように、相手の気持ちに配慮する姿勢はもっておいていただきたいと思います。

握手もしなくなるのでしょうか?

日本人同士ではまだポピュラーではありませんが、外国人も他人との接触を避けるため、握手に代わる挨拶をするようになったと、よく報道されています。グータッチ、ひじを合わせる、合掌、足先を合わせる、目を見てうなずく、片手を上げる、片手でサインをつくる、日本風のお辞儀――。いずれも、お互いを励ますような感覚でやっているようで、ビジネスフォーマルの場面で本気で使われそうなものは見当たりません。

握手は便利な挨拶です。もとは右手に武器を持っていないと伝え友好を示したものだったそうですが、お互いの手を握るという行為は親密な雰囲気を生みます。手の差し出し方や握り方で自分の人となり、思いを示し、逆に相手の思いを感じることもできます。自然にやっていた行為だけに、事態が落ち着き、安全性が担保されれば復活しそうな気がします。

しかし、一方で握手に代わる挨拶としてアジア風な所作も今よりポピュラーになるのではないかと思うのです。例えば日本風のお辞儀です。お辞儀は所作がきちんとした人がすると、美しく品があります。握手のような親密さは表現できませんが、角度や所作で人となりや思いも伝えられます。相手が日本人であっても外国人であっても、思いを込めて、美しいお辞儀ができるようにしておくことをおすすめします。

在宅ワークのマナーも次々生まれています

以前「テレワークのプロトコル」と題して振る舞い方について述べましたが、それ以降さまざまなテレワークの「見え方」や「マナー」の話題をみました。在宅ワークやビデオ会議が日常に急速に入り込み、マナーの整備が進んでいるのでしょう。

時間や場所を共有する相手がある限り、マナーの整備は必要です。ただ一歩間違うと、お互いに行動が規制されて不自由さを覚えるばかりです。マナーの根底にあるのは相手への思いやりと、相手に不快感を与えないこと。それが社会の中で空間や時間を多くの人と共有し、円滑に生活していくための知恵だったからです。

何もかも「マナー=決まり」とひとくくりに考えると、メリットが分かりにくくなります。

先日、私が、ビデオ会議が終わった後に相手に「どうぞお先に退出してください」と言ったときのことです。私としては、一種の思いやりのように考えていた行為なのですが、「それはマナーですか?」と聞かれてとまどいました。

テレワーク時代には、どんなビジネスマナーが生まれるのだろうか(写真はイメージ)=PIXTA

なぜそうしたのか。オンラインだった人が画面から突然いなくなると、ポツンと寂しい感じを覚えるので、相手にその寂しい感じを与えたくなかった、という単純な気持ちからでした。ビデオ会議では人が画面からぷつんと消えて余韻がなく、取り残されたように感じるものです。ですから相手に「お先に切ってください」と言っていただけでした。

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