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新型コロナで広がるストレス 不安と戦う心理作戦は

元自衛隊心理教官の下園壮太さんに聞く(中)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

長期化する新型コロナ禍。今、私たちは、「情報を集めてずっと考えるストレス」、「日常生活の自由が制限される我慢のストレス」、「人間関係のストレス」「経済的なストレス」と、積み重なるストレスに直面している、と心理カウンセラーの下園壮太さんは言います。

陸上自衛隊で心理教官として20年間、震災の災害現場や紛争地への派遣、自殺や事故のケアという過酷な現場で多くの人をメンタル面で支えてきた下園さんに、新型コロナ禍という有事をどう乗り越えていけばいいのかを伺うシリーズ、前回(「コロナで不安」感情の正体は 元陸自心理教官の教え)に引き続き今回は、「この先、自分は、社会は、いったい、どうなるの?」という、先が見通せない不安を乗り越えていくヒントを伺います。

病気への脅威以上に「ストレス」も拡大している

編集部:2月から始まった「新型コロナストレス」下の状況が続いています。今の状況をメンタル面から見てどのようにとらえていらっしゃいますか?

下園さん:みなさん、明らかに疲れが出てきている時期です。不安は通常、ネガティブ情報を選んで拾い続けるために、オーバーになりやすい、ということは前回もお話ししました。不安は、エネルギーをとんでもなく消耗する感情です。今は、新型コロナウイルスに感染するかもしれない、という病気そのものへの脅威はもちろんですが、みなさんが抱えている「ストレス」は、病気の脅威と同じぐらい、いや、それよりももっと影響をおよぼしているのではないでしょうか。

編集部:具体的に、どういったストレスでしょうか。

下園さん:不安の情報を集めて、不安についてずっと考え続けるストレスがあります。政府やメディアは、国民の行動範囲を制限させようとして、"不安を感じずに行動を自粛しない人"に対して不安をあおる方向で発表や報道をします。一つの報道であっても受け取る側によって受け取り方はまちまちです。ただでさえ不安がりの人は、より濃厚に、不安情報を拡大して受け取り、不安を強めます。

それから、自由が制限されるストレス。仕事の見通しが立たず、足踏み状態の人もいるでしょう。また、気の置けない人とご飯を食べる、ジムで体を動かすといったストレス解消の手段も奪われた状態です。

そんな環境下でみんながイライラすることによる、人間関係のストレス。マスクをつけていない人、子連れで買い物をする人が怒鳴られるような事例が増えているのは、他者のことを許容できなくなっている証拠です。

今後は、ますます経済的なストレスが拡大していくでしょう。こうやってストレスが蓄積するごとに、私たちは、エネルギーを消耗しています。消耗の連鎖を止めないと、うつになる人がどんどん増えてくるのでは、と危惧しています。

疲れがたまると、イライラする。傷つきやすくなる

編集部:「不安疲れ」「消耗疲れ」が、うつ状態を招くのですね。自分、あるいは身近な人がその状態かも、と察知するための目安はあるのでしょうか。

下園さん:疲労を感じても、疲れを自覚して、眠ることによって回復できる状態であればひとまず大丈夫です。心身のストレスは、生きている以上避けられませんから、休めば回復できる状態であることが、人間にとってはとてもありがたいことなのです(疲れの第1段階、と呼びます)。

ところが、疲れがたまってくると、一段階進んで、これまでと同じストレスでも、受けるダメージは2倍になり、回復するにも2倍の時間がかかるようになります。このような状態を私は「うつっぽい状態(疲れの第2段階)」と呼びます。うつっぽい状態では、自分にとって負担となる課題を避けるようになり、何かをするのがおっくうになり、イライラして、傷つきやすい状態になります。ただ、まだ表面的には頑張るエネルギーが残っているので、頑張り屋の人は、無理をして、いつも通りに振る舞おうとしてしまいます。「疲れているでしょう」と人から言われても、自分では認めません。しかし、そのまま疲れを麻痺(まひ)させていると、さらに進行して、「うつ状態(疲れの第3段階)」となってしまいます。

「うつ状態」になると、無力感、自責感、負担感が過剰になります。こうなると、傷つきやすさも疲れやすさも、元気なときの3倍になります。ダメージからの回復にも、3倍の時間が必要となります。うつになると、回復するまでには半年から1年間はかかります。

編集部:疲れを放置すると、知らないうちに、うつに向かってしまうのですね。

下園さん:うつ的な性格になっていくのは、感情と同じメカニズム、つまり「自分の安全、命を守るための変化」ととらえてください。

イライラしやすくなるのは、それ以上、自分に負担を強要する人や危険な事態を近づけないようにするためです。難しい仕事を避けたがるようになるのは、それ以上のエネルギー支出を避けて自分を守るための、感情の働きなのです。人はどうしても、疲れの影響を知らないと、「やる気がない」「たるんでいる」というふうに自らを評価しがちですが、ほとんどが疲労、つまり、エネルギー不足の問題であることが多いのです。

子どもや、学生であっても、それぞれに不安や生活環境の変化によるストレスで、疲れています。「ずいぶんイライラしているなぁ」と気づいたら、叱る前に、疲れをためているせいではないか、と気遣えるようでありたいですね。疲れがたまっているときは、いつも以上に睡眠をとることが大切。いつもより1時間でも2時間でも多く眠るということを最優先にしてください。回復度合いは、全然違いますよ。

どこで決心するか、時期を決める

編集部:疲れは、ためすぎないうちにケアすることが大切なのですね。

もう一つ、日々、仕事を進める中で、当初決まっていた仕事や流れが中断され、予定が延期になったり白紙になったり、という事態が続出しています。自分ではどうしようもない「先行きの不透明感」とはどう向き合えばいいのでしょう。

下園さん:これまで生活を支えてきたことが、これまで通りに頑張るだけでは立ちゆかなくなる。社会が一変している今、残念ながら、希望的観測だけではやっていけない局面も多々あります。

大切なのは「変えられること、変えられないこと」を切り分けることです。

情勢の全体像は、まだ、見えません。世の中の変化は、コントロールできない、つまり「変えられないこと」。

しかし、あなたの考えや行動はコントロールし、「変えること」ができます。

自衛隊や軍隊で、ある難しい作戦が遂行されるとします。その1カ月前から、不安を抱き、起こりうる危険について考えて考えて、いざ作戦が実行されるときに疲れ切っているようでは意味がありません。そんなとき、私たち心理教官は、「悩みそのものはいったん置いておいて、悩む時期を決める」ように指導をします。

今から1カ月後までずーっと悩んで消耗し、削られっぱなしで決断の時期を迎えるのか、それとも、「今はあがいてもどうしようもない、1カ月後に悩もう!」と思ってエネルギーを温存するかで、いざ、大きく行動するときのあなたの充電レベルはまったく異なるのです。金銭的な対策を考え、今の状態でもできる準備はやっておく、という「行動」によって不安の拡大を抑えつつ、「1カ月後に決めると決めた」ということも、対処の一つですから、何もしていないわけではない。この意味でも、不安を抑えられます。

編集部:確かに、悩んでいる間はずっとエネルギーが削られているのだ、と理解すると、「問題を棚上げ」することは決して逃避ではなく、とても有効な対処であることがわかります。

下園さん:戦術、としてものごとをとらえるとき、私たちはエネルギーレベルを重要視します。エネルギーが枯渇すると、体力だけでなく判断力も落ち、命の危険が増すからです。戦いのスキルにおいて最も重要なのは、「どこで決心するかを決めること」です。

予防と自粛の「行動」をしたら、あとは忘れる

編集部:「決心の時期を決める」以外に、日常をどのように過ごすと「先の見えない不安感」をなだめていけるのでしょう。

下園さん:生活の中でも、「できること、できないこと」の切り分けをするといいでしょう。

うがい、手洗いで予防する。自分の体調を管理する。むやみに外に出ない、人が密集するような場を作らない、といった感染予防のための行動は、必要なこと。感染拡大を止めるために、一人ひとりが行わなくてはいけないことです。感染への不安は放っておくと拡大しそうになりますが、そうやって自分サイズに行動を落とし込むと、「自分はちゃんと行動している」と、不安感情も理解し、なだめられてきます。

予防や自粛を行動として行ったら、後は、忘れましょう。

「感情は、命を守るための感情」だと第1回でもお話しましたね。外に猛獣がいるかもしれない、という状況で1カ月間過ごすとしましょう。外の様子をうかがい、ずっと壁に耳を付けておびえ続ける人と、「自分の空間から出なければ安全だ」と、閉じられた空間で慣れた作業をしたり、ときどき息抜きしたりして過ごした人は、1カ月後の消耗具合がまったく異なります。テレワークだと、やることも限られる。完全に「いつも通り」は「できないこと」、なぜなら今はそういうときなのだから、と、受けいれる。

家の中で過ごす時間が多くなるこの時期をどのように過ごしけばよいかというヒントや、コロナストレスによって増している「自責感」については、次回、お話ししましょう。

まとめ


「できること」「できないこと」を切り分ける。
「決断する時期」を決めることで過剰なエネルギー消耗を防ごう。

(ライター 柳本操、インタビュー写真 菊池くらげ)

[日経Gooday2020年5月22日付記事を再構成]

下園壮太さん
心理カウンセラー。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。心理幹部として多くのカウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援を元に理論を展開。NPO法人メンタルレスキュー協会理事長。『自衛隊メンタル教官が教える 50代から心を整える技術』(朝日新書)など著書多数。

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