新型コロナで広がるストレス 不安と戦う心理作戦は元自衛隊心理教官の下園壮太さんに聞く(中)

日経Gooday

写真はイメージ=(c)maru-123RF
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日経Gooday(グッデイ)

長期化する新型コロナ禍。今、私たちは、「情報を集めてずっと考えるストレス」、「日常生活の自由が制限される我慢のストレス」、「人間関係のストレス」「経済的なストレス」と、積み重なるストレスに直面している、と心理カウンセラーの下園壮太さんは言います。

陸上自衛隊で心理教官として20年間、震災の災害現場や紛争地への派遣、自殺や事故のケアという過酷な現場で多くの人をメンタル面で支えてきた下園さんに、新型コロナ禍という有事をどう乗り越えていけばいいのかを伺うシリーズ、前回(「コロナで不安」感情の正体は 元陸自心理教官の教え)に引き続き今回は、「この先、自分は、社会は、いったい、どうなるの?」という、先が見通せない不安を乗り越えていくヒントを伺います。

病気への脅威以上に「ストレス」も拡大している

編集部:2月から始まった「新型コロナストレス」下の状況が続いています。今の状況をメンタル面から見てどのようにとらえていらっしゃいますか?

下園さん:みなさん、明らかに疲れが出てきている時期です。不安は通常、ネガティブ情報を選んで拾い続けるために、オーバーになりやすい、ということは前回もお話ししました。不安は、エネルギーをとんでもなく消耗する感情です。今は、新型コロナウイルスに感染するかもしれない、という病気そのものへの脅威はもちろんですが、みなさんが抱えている「ストレス」は、病気の脅威と同じぐらい、いや、それよりももっと影響をおよぼしているのではないでしょうか。

編集部:具体的に、どういったストレスでしょうか。

下園さん:不安の情報を集めて、不安についてずっと考え続けるストレスがあります。政府やメディアは、国民の行動範囲を制限させようとして、“不安を感じずに行動を自粛しない人”に対して不安をあおる方向で発表や報道をします。一つの報道であっても受け取る側によって受け取り方はまちまちです。ただでさえ不安がりの人は、より濃厚に、不安情報を拡大して受け取り、不安を強めます。

それから、自由が制限されるストレス。仕事の見通しが立たず、足踏み状態の人もいるでしょう。また、気の置けない人とご飯を食べる、ジムで体を動かすといったストレス解消の手段も奪われた状態です。

そんな環境下でみんながイライラすることによる、人間関係のストレス。マスクをつけていない人、子連れで買い物をする人が怒鳴られるような事例が増えているのは、他者のことを許容できなくなっている証拠です。

今後は、ますます経済的なストレスが拡大していくでしょう。こうやってストレスが蓄積するごとに、私たちは、エネルギーを消耗しています。消耗の連鎖を止めないと、うつになる人がどんどん増えてくるのでは、と危惧しています。

疲れがたまると、イライラする。傷つきやすくなる

編集部:「不安疲れ」「消耗疲れ」が、うつ状態を招くのですね。自分、あるいは身近な人がその状態かも、と察知するための目安はあるのでしょうか。

下園さん:疲労を感じても、疲れを自覚して、眠ることによって回復できる状態であればひとまず大丈夫です。心身のストレスは、生きている以上避けられませんから、休めば回復できる状態であることが、人間にとってはとてもありがたいことなのです(疲れの第1段階、と呼びます)。

ところが、疲れがたまってくると、一段階進んで、これまでと同じストレスでも、受けるダメージは2倍になり、回復するにも2倍の時間がかかるようになります。このような状態を私は「うつっぽい状態(疲れの第2段階)」と呼びます。うつっぽい状態では、自分にとって負担となる課題を避けるようになり、何かをするのがおっくうになり、イライラして、傷つきやすい状態になります。ただ、まだ表面的には頑張るエネルギーが残っているので、頑張り屋の人は、無理をして、いつも通りに振る舞おうとしてしまいます。「疲れているでしょう」と人から言われても、自分では認めません。しかし、そのまま疲れを麻痺(まひ)させていると、さらに進行して、「うつ状態(疲れの第3段階)」となってしまいます。

「うつ状態」になると、無力感、自責感、負担感が過剰になります。こうなると、傷つきやすさも疲れやすさも、元気なときの3倍になります。ダメージからの回復にも、3倍の時間が必要となります。うつになると、回復するまでには半年から1年間はかかります。

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