長澤まさみ、「濃いめ」のキャラで急上昇 CM好感度
2020年4月度 CM好感度月間ランキング
CM総合研究所が発表する4月度の銘柄別CM好感度ランキングで、アサヒ飲料「濃いめの『カルピス』」が3位にランクイン。温泉施設で商品を飲んだ長澤まさみが、幼い頃に兄の制止を振り切って濃いカルピスを作っていたことを思い出す内容。長澤のコミカルな演技やかわいらしい回想シーンが女性を中心に支持を伸ばし、「カルピス」ブランドとして歴代最高順位を記録した。
3月23日からオンエアが始まった「あの頃の味」編は、「濃いめの『カルピス』」として初のTVCM。長澤が友人と訪れた温泉施設で、風呂上がりに商品をひと口飲むと幼い頃の記憶がよみがえる。5歳の彼女が兄の制止を振り切り、「いーの! もっと濃い方がいーの!」と口をとがらせ、カルピスの原液をグラスに注ぐ回想シーンになり、続いて現在の長澤が「いーの!」と幼い頃の口調を再現してみせたり、「いいんだよ~」とおどけたりすると、友人から「キャラも濃いめ」とツッコまれて、「イエース!」と返答する。
「濃いめの『カルピス』」は「カルピスウォーター」の2倍の乳成分を配合した濃厚な味わいが特徴。2016年の発売以降、着実に販売数量を伸ばし、「カルピス」ブランドの中でもカルピスウォーター、カルピスソーダに次ぐ商品として成長してきた。アサヒ飲料マーケティング本部宣伝部クリエイティブグループ課長補佐の楡拓也氏によると、「商品の認知・購入経験率はカルピスウォーター、カルピスソーダと比べると低い状況でした。一方で購入後のリピート率は高いことから、マス広告での製品認知向上・トライアルを喚起することで、商品としてさらなる成長の機会があると考え、初のTVCM制作に至りました」という。
見どころは、「カルピス」ブランドのCM出演が16年目を迎える長澤が、商品のコンセプトである"濃いめ"を印象付けるために、これまでにない濃いめなキャラクターを演じていること。幼少期の自分を全力で再現する様子が笑いを誘う。子役の本間さえちゃんはオーディションで選ばれた。「『いーの!』というセリフがさえちゃん本人の素の自然体な感じでかわいらしく、すてきだったことから出演いただきました」(楡氏)。収録はさえちゃんのシーンを先に撮影して、その演技を見た長澤がキャラ濃いめに演じた。スタジオでは、スタッフから何度も笑いが沸き起こったという。
調査モニターからは、「『いーの!』と言いながらふくれる女の子の顔が長澤まさみに似ていて、思わず笑ってしまう」といった長澤やさえちゃんへのコメントが目立った。「ある!ある!自分でできるようになると濃く入れていた」「カルピス、濃い方が好きだったのを思い出した」と自分の思い出を書く人も多かった。CM好感要因は「出演者・キャラクター」が最も多く、「かわいらしい」「ユーモラス」「商品にひかれた」と続く。50代以上を中心に女性層から高く支持されている。
CM総研の関根心太郎代表は、心をなごませるテイストが高い評価を受けたと分析。「長澤さんのコミカルな演技に加え、5歳の長澤さんを演じた女の子のかわいらしさがヒットの最大の理由だと思われます。また幼い頃、親に内緒で濃いカルピスを作ったことのある視聴者が多かったようで、『自分もやっていた』『懐かしい』などの感想が目立ったほか、『飲んでみたい』と商品への関心を示す声も相次ぎました。不安な情勢が続く今だからこそ、ほのぼのとしたユーモアや出演者のかわいらしさが多くの視聴者の心をなごませ、高い評価につながったのではないでしょうか」
商品の売れ行きも好調だ。「TVCM放映開始から4週間の推計販売規模(インテージSRI調べ:3月23日~4月19日)は、前年同週比で116%となっており、売り上げにも寄与できたと考えています。販促効果は、希釈タイプの『カルピス』にも良い影響があったとみています。新型コロナウイルスの影響で家庭内での需要が上がったこともありますが、前年同週比で売り上げが上がっております。TVCMを見て、実際に濃いめに作って飲もうと思ってくださったお客様もいたのではないかと考えています」(楡氏)。
6種類のキャラクターの声を演じ分け
アサヒ飲料では、5月6日からは「カルピス」ブランドの新CMとして「発酵劇場」編をオンエア。ある日の夏、自宅でカルピスを飲んでいた少年が「『カルピス』ってなんでおいしいの?」と母に聞くと、ナゾのお姉さんが現れて、乳酸菌と酵母の発酵によっておいしさが生まれることをアニメーションで伝える。少年、お姉さん、お爺(じい)さん、お兄さん、乳酸菌くん、酵母ちゃんという6種類のキャラクターの声を長澤が1人で演じ分けている。
「声優としても才能を発揮する長澤さんの、驚くほど巧みな声の演じ分けにぜひご注目ください。監督と1対1で対話を重ね、その場で様々な声色を出し、キャラクター像を作り上げていました。あまりの声のかわいさに、急きょ現場のアイデアで最後の『アサヒ飲料』のナレーションを"乳酸菌くん"と"酵母ちゃん"の声に変更するという一幕もありました」と楡氏は収録の内幕を語る。
CM総研の関根氏は、「カルピス」ブランドの顔としての長澤の存在感に注目。「長澤さんが『CM長いことやってるから』とささやくセリフは、2005年から『カルピス』ブランドのCMに出演している彼女だからこそ、強い説得力を残すことができたと考えられます」と言う。映画・ドラマ・舞台で圧倒的な演技を見せる長澤だが、CMでもその存在感は堂々たるものがある。
(日経エンタテインメント! 小川仁志)
■当月オンエアCM:全2606銘柄
■東京キー5局でオンエアされたすべてのCMを対象に、関東在住の男女モニター3000人に、好きなCM・印象に残ったCMをヒントなしに自己記述してもらい、その得票数を足し上げたもの
■同商品の複数作品にオンエア・好感反応がある場合、代表作品は最もCM好感度の高い作品
■企業・銘柄名・作品名はCM総合研究所の登録名称であり、正式名称と異なる場合がある
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