泉「売れませんでした。爆発したのは米国で、テレビCMがきっかけでした。アイスホッケーの選手が氷上にパックのように置かれたGショックを激しくシュート。キーパーがキャッチしてみると、そのGショックが時を刻み続けているという内容です。耐衝撃性を訴えるこのCMがブームを巻き起こし、アウトドア愛好家や消防士、警察官らが支持しました。そしてアメリカで流行しているよね、と日本でも話題になって、逆輸入的な感じで人気に火が付きました」


スポーティーな時計にヒットの予感 90年代と共通点
――樹脂で覆ったタフなGショックは、90年代のストリートファッションとともに、若者に大ヒットしました。
石津「ちょうどスニーカーブームに重なりますよね。そういえば最近もスニーカーブームの再来、オーバーサイズのスポーツウエアの流行があって、90年代の状況と似ています。Gショックのようなスポーティーな時計が再注目されそうだね」

――ところできょうは、石津謙介さんが使い続けたカシオのデジタル時計をお持ちいただいています。
石津「おやじはカシオのデジタルウオッチの大ファンでした。70年代後半から80年代前半、Gショックが出る前のカシオのデジタルを愛用していました。僕や息子が受け継いで今でも現役。おやじはそれまでロレックスやユリス・ナルダンのシンプルな時計をしていたのだけど、根っからの新しもの好きで、カシオのデジタルに飛びついちゃった。ちょうどそのころ、第2次オイルショック後で省エネが言われて、ファッションもいっとき、チープシックがはやった。おやじは車もベンツから燃費のいいホンダに変えたんだけど、ファッション界でデジタル時計をしている人は珍しかっただろうなあ」

泉「そのころカシオトロンというオートカレンダー機能付きのデジタル時計がありました。カシオ計算機は電卓から始まった会社で、時間は1秒ずつの足し算である、と考えてデジタル技術を応用した時計を開発したんです。カメラ付きや電話帳機能付きなど多機能時計を発売した時期もありました」
石津「おやじは、軽くて実用的で数字で時計を見る、という、機械としてのカシオの時計にほれ込んでいました。デザインとかおしゃれさに憧れるのとは全然違う商品が登場したのだから」