社長になろうとしないが社長の近道 自分の仕事に全力セコマ 丸谷智保会長(下)

地盤を大切にして困難を乗り越える

――人材育成はどう考えていますか。

「セコマは食品製造から物流、小売りまで、サプライチェーン全体をグループでカバーしているので、それぞれの事業のプロフェッショナルが必要になります。そこでもっとも大切なのが教育です。例えば、食品メーカーの機能を持つ製造営業の業務は専門性が強く、とても大変です。商品の知識も豊富でなくてはいけないし、厳格な品質管理も求められます。そこは丁寧に教育することで対応しています。食品工場の工場長には、外部の研修をたくさん受けさせています。品質を管理する会議を開いて、事例研究で成功例を共有しています」

「お客さんと直接接する小売部門では、パートタイマーの従業員は約1万7千人在籍していて、全員を教育しています。ワークショップ形式での教育に加えて、入店時のトレーニングも内容を充実させています。店舗スタッフに求められるのは、レジの打ち方だけではありません。お客さんがうれしいと感じていること、いやだと思っていることを知っていなければ、良い接客はできません。スタッフを率いる店長も同じです。毎日のように来てくれる地域の固定客にどう応対するのか、そうした接し方も学ぶ必要があります。特に地震などの非常時に、こうした教育の成果がお客さんからの信頼感につながるのです。お客さんに必要とされているから店を開ける、という考え方を従業員全員に強く根付かせること。これが小売業のリーダーの大切な仕事だと考えています」

――金融業界で働いていたときに得た経験は現在生きていますか。

「大学を出て北海道拓殖銀行に入ったのですが、後に破綻しました。その時に得た一番の教訓は『企業は潰れてはだめだ』ということです。いくら社会の役に立つ企業でも、潰れてしまっては意味がない、と心の底から思いました。会社を継続させる上で大切なのは、地盤を持つということです。どんなに苦しいときでも、しっかりとした地盤を持っていれば困難を乗り越えることができます。足元のグリップ力。今、北海道という地盤になる地域を大切にしているのにはそういった経験が生きていると思います」

「その後、シティバンク、エヌ・エイに移ったのですが、シティは営業停止の制裁を受けたことがありました。私はちょうど、札幌支店長から本部の営業統括になった時期でしたが、一度落ち込んだ業績を戻すのに丸々1年かかりました。今、新型コロナウイルスの影響で売り上げを落としている小売業は多いと思いますが、回復には時間がかかると覚悟しています」

地域を大切にすることが店や会社を支えることにつながると信じている(2019年、北海道池田町での新店開業イベント)

――金融から小売りへ転職した時、壁を感じませんでしたか。

「外から見ると全くの別業種ですが、私はあまりハードルがあると感じませんでした。私は銀行では、個人金融部門などの担当をしていました。これは紛れもなくリテールです。お客さんからみれば、業種で店舗を区別するような意識はあまりないでしょう。ドラッグストアであろうが、コンビニであろうが、『小売りは小売り』でしかないのです。金融でも小売りでも、結局は『人』を相手にする仕事です。お客さん、ユーザーが必要としているものが何かを考えて、それをどう効率的にシステムにのせて提供できるか。金融も小売りも、何も違いはありません。金融から転職してきた時、『セコマはすごい会社だな』と思いました。どこまでもお客さん目線で商品を提供しよう、と取り組み続けているからです。それと、前にいた会社と比較しないよう気をつけています。新しい会社にいったら、良いところを見つけてその会社を好きになることが大切ですから」

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