釣りやゲーム… 趣味増えた人誘う 上質な道具の世界

Kavaのセットにはオイルや調整ドライバーのほか指を切ったときのばんそうこうも
Kavaのセットにはオイルや調整ドライバーのほか指を切ったときのばんそうこうも

新型コロナウイルス感染防止のための家ごもりで、趣味の時間が増えた人も多いだろう。この機会に職人の手による上質な「遊び道具」の世界に目を向けてみてはいかがだろう。こだわりが詰まった道具たちを知るだけでも心が豊かになってくる。

釣りの毛ばり自在にカット

理美容ハサミ専業メーカー、水谷理美容鋏製作所(千葉県松戸市)の水谷裕一社長のもう一つの顔は、フライフィッシングに用いる毛ばり専用ハサミ(タイイングシザーズ)の開発者だ。趣味が高じた結果だという。

1921年に東京・浅草で創業した同社の製品はすべてハンドメードで、クオリティーの高さから国内外の理美容師の信頼が厚い。釣りが趣味の水谷さんは、仲間から「そそのかされて」タイイングシザーズ製作を考えるようになったという。髪だけをカットする理美容ハサミと違い、柔らかな羽毛から硬い獣毛、化学合成素材まで自在に切らねばならないタイイングシザーズは勝手が違う。

水谷さんはフライフィッシング専門ショップの店員や専門誌編集者らに理想のシザーズについての意見を聞くことから始めた。「本体デザイン、ハンドルのサイズ、刃の長さや厚みなど多くの注文が出た。それがモノづくりにつながった」(水谷さん)

プロトタイプをいくつも作り、約2年の試行錯誤を経て2013年に完成したのが「Kava(カヴァ)」だった。

Kavaを使って北海道のニジマス釣り向けの毛ばりを丹念に仕上げる

一般的なタイイングシザーズは1000~3000円だが、Kavaの価格はなんと2万円。しかし一度その切れ味を体験した愛好家は何としても欲しくなるのだという。東京都あきる野市在住の安藤賢治さんもその一人。釣り具イベントに出品されていたKavaで「直径0.5ミリメートルに満たないヘラジカの毛を縦方向にスパッとカットできた」ことに驚いてその場で購入した。「毛ばり作りでここぞという仕上げ段階に欠かせない」と安藤さん。

Kavaの最大の特色は理美容ハサミと同様に研ぎ直しができることだろう。「30年は使える」と水谷さんは自信をのぞかせた。

一方、日本有数の家具生産地である福岡県大川市の家具メーカー・商社の関家具。1968年創業の同社はこの1月、ゲーミングチェアの新ブランド「Contieaks(コンティークス)」を生み出した。ゲーミングチェアとは長時間ビデオゲームを楽しむため専用の椅子のことだ。

専用の椅子でゲームに熱中

プロゲームプレーヤーやヘビーユーザー向けの「アイガー」

多くのゲーミングチェア同様Contieaksは車のシートを思わせるデザインだ。しかし同社eスポーツプロジェクト課長の山本信彦さんは「中身はまったく違う」と話す。たとえば本物のカーシートはペダル操作を容易にするため座面前側にふくらみがあるが、Contieaksはフラット。長時間遊んでも脚が血行障害を起こさず、コントローラーの操作性でも有利という。

同社にはこれまでのソファやオフィスチェアの製作を通じ、座面構造や日本人の体格についてのノウハウの蓄積があった。「Contieaksの開発では多くのゲームプレーヤーから意見を聞き、約3000件のネットレビューを参照して従来製品の不満を解消した」と山本さん。

Contieaksが出している競技者向けの「アイガー」と座面をソフトに仕上げた一般ユーザー向けの「ルセル」の2製品の価格はいずれも3万円台前半。学生がアルバイトして買える価格に抑えてある。

今後は家庭のインテリアと親和性のあるファブリックのモデルや座椅子タイプも追加するという。さらに同一ブランドとしてゲーマーやクリエーター、ユーチューバー向けのデスクの開発も計画中だ。

なぜゲーミングチェアなのか聞くと「若手社員の声を積極的に取り入れ、時代に合った商品開発をするため」と山本さん。今年から地元の九州などのeスポーツ団体やプロチームの支援も本格化させていくという。

こだわりの道具は遊びの世界を広げ、深めてくれる。今のような時期だからこそ、一生付き合える道具をじっくり吟味してみたいものだ。(ライター 大谷 新)

[2020年5月23日付 日本経済新聞夕刊]

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