1953年デビューの初代から受け継がれてきたFRレイアウトをミドシップに一新し、生まれ変わった「シボレー・コルベット」。「C8」と呼ばれる8代目のパフォーマンスやハンドリング、そしてライバルとの違いを、米ラスベガスからリポートする。
FRは限界だった?
コルベット史上、最大の問題作であることは間違いないだろう。なにしろ通算8世代目にして、ずっと貫いてきたFRからミドシップへの大転換を果たしたのだから。
ファンにとって気がかりなのは「それでもコルベットと呼べるクルマになっているのか?」ということだろう。さらに言えば、ミドシップ化によってどれだけのパフォーマンス向上を果たしているのか、ライバルとなるのはどんなモデルかということも気になるところだ。
それゆえに、いつにも増して楽しみにしていた試乗のチャンス。2月末にラスベガスで開催された国際試乗会では、はやる気持ちを抑えて、まずは開発メンバーに疑問を直接ぶつけてみた。コルベットは、なぜ今ミドシップ化せねばならなかったのだろうか?
「先代ではFRレイアウトで可能な限界に到達できたと考えています。これ以上の走り、そして感動を実現するにはミドシップ化しかない。今回はそう決断したのです。」
振り返ればコルベットは5世代目の「C5」からトランスアクスルレイアウトを採用して前後重量配分の均等化、後輪荷重の増加を図ってきた。昔のイメージで売り続けるつもりならば、大パワーでリアタイヤを思い切りホイールスピンさせてもよかったかもしれないが、コルベットは世界のスポーツカーを相手に、パフォーマンスを高める道を選んだのである。

この頃からコルベットが、モータースポーツ活動を強化していたことも無関係ではないだろう。結果、ルマン24時間レースで優勝を飾るなど、じわじわとアメリカ以外の地域でもアピールする存在になってきていたのだ。
よって新型が、その路線を踏襲、発展させるのは当然だった。最高峰の「ZR1」ですでに766HPに達していたパワーをさらに上乗せしていくには、もはやFRでは限界。レースを考えても、同カテゴリーの「ポルシェ911」ですら「RSR」でミドシップレイアウトを採用しているなか、FRでは勝算は大きくなさそう。そう考えれば、まさしくミドシップこそコルベットが取り得る、唯一の道だったわけである。

秀逸なパッケージング
アルミを中心にCFRP、マグネシウムなど軽量素材を組み合わせて新設計された車体の、キャビン背後に積まれるエンジンは伝統のV型8気筒OHV。FR時代に異例なほどのボンネットの低さを可能にしていたドライサンプのOHVエンジンは、ミドシップでも低重心化に大いに貢献している。トランスミッションは8段DCTを組み合わせる。
エンジンがなくなったフロント部分だけでなく、リアにも取り外した脱着式のルーフトップ、あるいはゴルフバッグを最低1セット収める余裕が欲しかったからだろう。全長が優に100mm以上伸ばされたボディーは、一方でノーズが短くキャビンフォワードで、従来とは大きくイメージを違えている。ディテールには従来型から継承されてきたモチーフも多く使われているのだが、個人的には「C6」や「C7」に比べて最新のC8は、ちょっと子どもっぽいかなと感じてしまう。
