チョコ、高カカオ品ほど上昇基調に 背景にはSDGs

新型コロナウイルスの感染拡大に世界の金融市場が揺れています。目先の関心は株価や為替などの動きに向かいがちですが、「ESG」(環境、社会、ガバナンス)に代表される、ビジネスの持続可能性を重視する考え方が着実に広がりつつある点は見逃せません。国連の唱えるSDGs(持続可能な開発目標)とも親和性が高く、SDGsを身近に考えるには、チョコレートがうってつけとの声があります。なぜなのでしょうか?

チョコレートというと、2月のバレンタインが最も売れる時期です。ただ最近、年間の販売額も上がる傾向にあります。5年前と比べて2割増え850億円となっています。

「高カカオ」が人気に

販売額が増えているのは値段の高いチョコ、特にカカオの含有量が多い高カカオなチョコが良く売れるからです。チョコの原料にはほかにも砂糖や粉乳(牛乳)などもありますが、値段に占める割合はカカオが一番高いのです。日経POS情報でチョコの直近の売れ筋ランキングをみてみましょう。

1位が明治 チョコレート効果 カカオ72%。7位も同じ商品のサイズ違いです。カカオに含まれるポリフェノールが美容や健康によいという情報が広まり人気商品になりました。値段は同じ重さで比べると一般的な板チョコの3割増しです。

そんな高カカオチョコの値段がさらに高くなる可能性があるといいます。たしかに原料のカカオの値段のグラフをみると最近は上がっています。

一番の要因は産地の不作です。世界のカカオ豆の約60%はコートジボワールとガーナで生産しています。この地域が天候不順で生産量が落ちたため、値上がりしています。

世界中でチョコの消費量が増えているのも理由です。Mintel社の調査によれば、チョコを一番食べる国はロシア。1年間で10キロ近く食べるそうであす。日本は2キロほどですからおよそ5倍です。チョコは暑いと溶けてしまうので冷蔵庫の設備がある先進国や寒い国の需要が高かった。ただ、近年はメーカーが溶けにくいチョコを開発しています。今、一番チョコの消費量が伸びているのはインドです。中国などアジア諸国の需要も高まって、世界の需要は10年前より約5割も増えています。

カカオが値上がりすると、カカオを多く含む高カカオチョコはより高くなります。カカオの含有量が高いほど影響を受けやすいため、元々高額な高カカオチョコレートの方がもっと高くなる一方、値段の安い、カカオの少ないチョコレートはあまり変わらない。今後、値段の開きが大きくなる可能性があります。

「COPEC」の影響力強まる

「値上がりの原因が天候不順ということは生産が回復すれば、また値段も下がるのでは」と思うかもしれません。ところが、そうでもなさそうです。カカオ市場に対する影響力が強い主産地のコートジボワールとガーナはカカオの頭文字をとって「COPEC(コペック)」とも呼ばれています。原油市場の石油輸出国機構(OPEC)みたいですね。このコペックが協調して昨年10月から生産者に1トンあたり400ドルの割増金を払うよう義務付けた。これが額面通りに実行されればチョコの値段にも響きそうです。

生産者の待遇改善の動き

そもそもなぜ値上げが必要なのでしょうか。最近よく話題にされるSDGs(持続可能な開発)に基づいています。カカオの価格は直近、上がっていますが、実は1980年と同じ1トン2600ドル前後です。当時と比べ世界的に物価は上がっており、今のカカオの値段はむしろ安すぎるといえます。それが、カカオ農家の貧困を産むことにつながっているため、それを改善しようという動きが出ています。

最近は「エシカル消費」というキーワードも広がっています。フェアトレード商品も増えました。チョコ業界は「カカオ農家を搾取している」と国際的に批判されたので、メーカー側でも改善の動きは活発です。ネスレやハーシー、マーズといった大手は「サステナブルカカオ」という持続可能な生産方法で作られたカカオへの切り替えを進めています。日本でも明治が「メイジ・カカオ・サポート」として生産者により高品質なカカオの栽培方法を教えて、高価格で取引できるようにして農家を収益面でもサポートしています。

ただ、現状でフェアトレードのチョコの値段は普通のチョコの3倍くらいします。生産者も喜ぶ価格を追求していくと、今のチョコはまだまだ安すぎるのかもしれません。

(BSテレ東日経モーニングプラスFTコメンテーター 村野孝直)

値段の方程式
BSテレ東の朝の情報番組「日経モーニングプラスFT」(月曜から金曜の午前7時5分から)内の特集「値段の方程式」のコーナーで取り上げたテーマに加筆しました。
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