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ハ・ワン著 岡崎暢子訳 ダイヤモンド社

ハ・ワン著 岡崎暢子訳 ダイヤモンド社

会社員を辞めイラストレーターとの二足のわらじ状態から脱した韓国人の著者が、「一生懸命生きない」決断をした顛末(てんまつ)などを、ゆるゆる語る。40年の半生でため込んだモヤモヤとそれを解き放ちたかった気持ちには、誰もが共感するはず。「分かる分かる!」と読み進めるうちに、肩の力が抜けてくる。知らぬ間に狭めていた視界が急に開けて、自分は自由なのだったと気づいたりする。行き着くところは、「他人(社会)の視線に縛られて生きるのはつまらない」という「ありきたりな真理」。なのに新鮮で爽やかな読後感は、著者が今まさにそれを実践しているからだろう。

要点1 結婚、持ち家、車…。本当に必要なのか?

競争社会を生き抜こうと頑張ってきたけれど、状況は悪くなる一方。一生懸命生きるのが嫌になって会社を辞めた。俗世の服を脱いだら気分爽快だ。少し肌寒い気もするが、なんとかなるさと思う。今まで何のために必死に頑張ってきたのかと考えると、世の中の「人生マニュアル」に従ってきたことに気づく。結婚、持ち家、車、年収。年を取るたびに項目が増え、クリアできないと敗北感を味わうことになる。自分の人生なのに、なぜ他人の評価や基準に縛られるのか。本当に恥じるべきは基準をクリアできないことではなく、自分のポリシーや方向性を持たずに生きていることではないのか?

要点2 執着は悲劇の始まり 人生にも「損切り」を

著者はホンデ美術大学(韓国トップの美大)を4回受験してやっと合格。これは何かに執着することによる悲劇の典型例とする。ホンデに入れば人生一発逆転だと思っていたのに、貴重な時間を失っただけで、期待したことはすべてかなわなかった。努力が報われるとは限らないことを忘れてはいけない。頑張ったから成功することも努力なしで成功することも、どんなに頑張ってもダメなこともある。優秀な投資家が上手に損切りする(損失を最小限に抑えるために手じまいする)ように、人生にも失敗を認める勇気が必要だ。

要点3 自分の選択なら失敗体験も有意義

そもそも人生は思い通りに行くことのほうが少ない。なのに我々はたかだか飲食店や映画を選ぶときですら、いちいちネットで評判を確認する。おかげで明らかな失敗は減ったが、その分楽しみも減った。皆が良いと言うものが自分にとっても良いとは限らない。失敗しないと検証された中間以上のものを選んでいるうちに、感性は退化し、いつしか自分の選択が信じられなくなっていく。結果的にそれが最高でなくても、自分で選んだものは記憶に残るし気分をほっこりさせてくれる。自分だけの人生は、いくつもの失敗の上に成り立つのではないか?

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