文化違えば間違いは当たり前 ビジョン・情熱を伝えるイケア・ジャパン ヘレン・フォン・ライス社長(下)

自宅でも職場でも女性のニーズ満たす

――女性が働きやすい環境づくりや、女性リーダー育成をどう考えていますか。

「女性の職場環境については、まず管理職の評価システムに明確なKPI(数値目標)を設けることが大切です。例えば、1年間で組織のリーダーが10人いるなら、半分を女性が占めるようにします。女性マネジャーは1人だと唯一の存在です。これが2人だと同志ができ、3人になればさらに声をあげやすくなります。これが働きやすい職場づくりにつながるのです。どの組織でも実践できることですが、もちろん時間もかかるし、新しいやり方なのでリスクもあります」

スウェーデン・ルンド大卒業後に出版社に就職、その後イケアに転職した。夫や子どもと共に日本で暮らしており、長期的な目標は若い女性リーダーの育成だという。「人生を通して育成に情熱をささげたい。年を取ればとるほど知識と経験が増えて賢くなると信じています。余裕をもって社会をリードできるようなサポートをしていきたいと思います」

「コロナの感染拡大は自宅での男女やパートナーのあり方を考え直すきっかけにもなりました。家庭でのパートナーの役割を平等にする必要性が浮き彫りになったのです。パートナーがさらに家事に積極的に参加することが求められていますし、してほしい家事が何かを相手にきちんと聞くことも挙げられます。店舗の従業員や管理職、役員といったポストにとらわれず、出産や育児など様々なライフステージにおいて自分らしく働ける柔軟さが求められています。例えば女性が発言しやすい環境、職場のスペースを配慮することや、女性が家庭も仕事も両立しやすい勤務体系にすることが必要です。男女は家庭で人生と成功を分かち合いますが、それは職場でも同じことです。女性のニーズを満たす方法はたくさんあって、そのニーズが理解されて満たされることで、ビジネスの成果が上がるのです。女性は母、妻、そして職場ではリーダーにもなれるのです。もちろん、保育施設が十分にあることや、子どもの学校が再開した後もテレワークなどの働き方ができる環境が整っていることが大前提となります」

――尊敬するリーダーはいますか。

「ビジネスだと、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長です。柳井氏には『人材がなにより財産である』という考えがあるように感じるからです。カジュアル衣料品店ユニクロでは、日本事業の最高経営責任者(CEO)に女性が就任しました。社会の変化には具体的な行動が必要です。男女平等の観点では柳井氏のようなリーダーが引っ張ってくれると期待しています」

「イケア創業者のイングバル・カンプラード氏も尊敬しています。起業家精神にあふれていて、不可能なことなんてない、というファイティングスピリットが旺盛でした。柳井氏には彼と似たものを感じました。また女性リーダーだとニュージーランドのアーダーン首相です。コロナへの対応が印象的で、SNS(交流サイト)を活用して現状を国民に説明しています。国民と密接に関わろうとする姿が尊敬できて、リーダーとして私も参考にしたいと思います」

<<(上)自分も事実もすべて伝える コロナの不安、社長が払う

ヘレン・フォン・ライス
スウェーデン・マルメ生まれ。同国のルンド大卒、1998年イケアグループ入社。インフォメーションマネージャーや執行役員を経て、2011年から中国・深圳店長を経験後、13年に米国法人の副社長に就任。16年から現職。

(聞き手は佐伯太朗)

マネジメント層に必要な4つのスキルを鍛える講座/日経ビジネススクール

会社役員・経営幹部の方を対象とした、企業価値を高める経営の実務に役立つビジネス講座を厳選

>> 講座一覧はこちら

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら