文化違えば間違いは当たり前 ビジョン・情熱を伝えるイケア・ジャパン ヘレン・フォン・ライス社長(下)

未知の世界に踏み込む勇気必要

――米国や中国でも働いています。グローバルで通用するリーダーに求められるものは。

「まず、その国の人と文化に対して、強く深い興味と好奇心を持つことでしょう。異文化と接するとき、これまで自分が慣れてきた環境とは全く異なるのだ、と認識することも重要です。自分が育った文化と、その国を比べてしまうと、多様なやり方や生き方を受け入れづらくなってしまいます。私は様々な文化、環境下で働いてきました。それを『学びの旅』と呼んでいます。常に心を穏やかにして、言葉にならないサインや行動を見逃さず、相手を理解し配慮するよう気を配ることです。具体的な例を挙げると、相手の国の言葉が分からなかったら、まずボディーランゲージや表情を注意深く観察するのです。それを続けていけば、口から発する以外の(ノンバーバルの)新しい言葉として理解できるようになりますよ」

中国・深圳店の店長時代にリーダーが情熱や理念を伝えることが大切と学んだ(右から3人目がライス氏)

――そう考えるようになったきっかけはありますか。

「2011年から12年に、中国・深圳の店舗で店長をしていたときのことです。雑貨などを売る1階のマーケットホールというエリアを改装する案件が持ち上がりました。ただ、改装完了までの期間が非常に短かったのと、(成長市場であるため)その後の売り上げ目標など高い期待がかかっていました。改装すると決まった時、中国のことは中国人が一番分かると考えて話し合いましたが、どうも意見が折り合わないのです。そこで、お互いの文化的な背景は深くわかり合えなくても、イケアのやり方やビジネスのやり方は伝わるはずだ、組織のマインドセット(思考様式)が重要だと気づきました」

「そのためには、企業のビジョンと情熱、そしてそれを伝えるリーダーが必要です。文化が違うのだから、間違いが起こるのは当たり前と考えて、受け止めなければいけません。グローバル企業ならば、なおさら重要な事柄です。そして、ポジティブな考え方を共有することも重要でした。物事に挑戦するにはポジティブ思考が欠かせません。よく言われる例ですが、半分だけ注がれたグラスを見て『半分も残っている』ととらえるか、それとも『半分しかないと』と見るか。私はリーダーとして、『半分も残っている』とポジティブに捉え、従業員の皆にもポジティブ思考をしてもらうように伝えました」

――デジタル化など技術革新のスピードが増しています。

「この時代、リーダーに求められる条件は新しいものを学ぶ姿勢と、未知の世界に踏み込む勇気です。そして同時に、技術を活用して古いやり方から脱却することです。企業トップなどのリーダーが個別の技術革新や変化を詳しく理解するのは難しいでしょう。現場のトップや担当者が深く理解してくれればよいのです。一方でリーダーには、会社が技術的な成長を遂げられるようサポートする役割もあります。専門知識を持つ従業員と、対話しながら『私も分からないので学びたい』という姿勢を見せることが大切です。自分より知識がある人々に任せることが、リーダーとしてとるべき唯一のやり方だと思います」

「技術革新が進むことは家具企業のリーダーとして、商機でもあります。これまで以上に自宅が重要になっているためです。人はテクノロジーに囲まれていると、疲れてしまいます。自然とテクノロジー、人間性とテクノロジーのバランスをどう取るかが重要になってきました。自宅はこれまで以上に、よりリラックスできる空間、快適でソフトな大切な場所になっていくでしょう」

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
次のページ
自宅でも職場でも女性のニーズ満たす
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら