日経ナショナル ジオグラフィック社

2008年のリーマン・ショック後、オフィス勤務の仕事が増加し、オープンなレイアウトは費用を抑える方法としてますます人気となった。自然光とデスク間のスペースを重視したライトの本来のコンセプトとは異なり、現代では小さなスペースに人をぎゅうぎゅう詰めにするためにオープンオフィスが採用されることが多い。結果、従業員の集中力は低下した。

英国王立協会が2018年に発表した研究では、職場をオープンなレイアウトにした時の従業員の行動変化が調査された。様々な場面で、面と向かったコミュニケーションは70%減少し、デジタルなやりとりが増加することが示された。他の人の迷惑になることや話を聞かれてしまうことを心配して、従業員たちは「社会的に引きこもり」始めたからだという。また、同年に発表された別の研究では、感染への恐怖から、混みあった場所により強い心理的ストレスを感じることが示された。

「個人的には、この街に来たばかりだったので、コワーキングスペースにいるのは好きでした。人との出会いや触れ合いの機会がありますので」。そう話すのは、ウィーワーク社が運営するコワーキングスペースにオフィスを構えるIFLサイエンスのレポーター、マディソン・ダプチェヴィッチ氏だ。しかし、ダプチェヴィッチ氏の会社では1月以来リモートワークとなっており、今となっては感染のリスクがある共有スペースに戻ることは心配だと言う。

職場に潜む、感染のリスク

韓国疾病管理センターが最近発表した調査では、人が密集したオフィスではいかに新型コロナウイルスが広まりやすいかが示された。216人が勤務していたコールセンターの1フロアにおいて、94人が検査で陽性と判明したのだ。このアウトブレイクは20年2月21日に始まり、16日間かけて起こったと考えられ、また、感染者の90%以上がオフィスの中でも特に人が密集するエリアに集中していた。

韓国ソウル市のあるオフィスビルでは、コールセンターの1フロアに勤務する人々のうち43.5%が新型コロナウイルスの検査で陽性(赤い席)だった(JASON TREAT, NG STAFF. SOURCE: PARK AND OTHERS, EMERGING INFECTIOUS DISEASES, 2020)

「人と人の間の距離を空け、合わせて適度な換気と殺菌をしていれば、それなりに安全な空間にすることができるはずです」。米メリーランド大学の感染の専門家、ドナルド・ミルトン氏はそう話す。

パーテーションは咳が向こう側に飛ぶことを防ぐことはできるが、感染力のある飛沫がパーテーションの内側にとどまり、そのスペースに入ってきた人が触れてしまう可能性がある、と同氏は言う。4月初めに発表されたマサチューセッツ工科大学の研究によると、くしゃみによって感染力のある飛沫が現在の社会的距離のガイドラインよりもはるかに大きく、最大8メートルも飛ぶことがあるとされている。

また、コーヒーポットやドアノブなども感染拡大に一役買っている。「New England Journal of Medicine」誌に発表された最近の研究によれば、新型コロナウイルスはプラスチックなどの表面で3日間、感染力を保つことがあるという。

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「健康的」な建物を目指して
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