寝坊するほどいやされる 炭酸系入浴剤でストレス発散
パソコン作業でこった肩、一日中立ちっぱなしでパンパンに張った脚――。そんな症状に悩み、セルフケアの時間もない人に向けた入浴剤が人気を集めている。体を温めるだけでなく、疲労回復や美肌効果をうたうものなど種類はさまざま。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛でストレス発散が難しい今、入浴剤で気分転換するのも良いのでは。
「炭酸の強さが今いちばん自分に合っている」。花王の入浴剤ブランド「メディキュアシリーズ」の使い心地を、利用者の一人がそう説明する。従来の「バブ」と比べ、含まれる炭酸ガスの量は10倍で、実勢価格は750円前後。
バスクリン(東京・千代田)が展開する高濃度の炭酸が含まれる入浴剤「きき湯ファインヒート」(実勢価格900円程度)も人気が高い。同社は冷え性やだるい疲れなど対応する症状別の製品ラインアップを増やしている。
市場調査会社のインテージによると、2019年の入浴剤市場の規模は、前年比25億円増の432億円と拡大基調にある。タイプ別に見て最も売り上げが伸びたのは、体を温めるだけでなく冷えや肩こり、疲労などへの効能をうたう「薬泉・保温」型だった。
疲労回復には炭酸ガス入りの入浴剤が効果的といわれる。湯中で発生した炭酸ガスは皮下組織に入る。炭酸を排出しようと血管が拡張することで、血行が良くなり体温が上昇する。バスクリンは「きき湯ファインヒートを入れた湯船につかれば、さら湯につかるよりも温浴効果が高まる」と説明している。
SNS(交流サイト)上でも、炭酸にこだわる入浴剤が人気だ。中でもTWO(東京・渋谷)が販売する「BARTH(バース)」には「深く眠りすぎて寝坊した」などの投稿がある。バースは開発者がドイツの中性重炭酸泉から着想した入浴剤で、ドイツなど世界で数カ所しかない湯の性質を再現しているという。30錠入りで税抜き2500円。
バースを入れた湯の特徴は中性であることだ。有効成分は炭酸ガスの泡ではなく、炭酸ガスが湯に溶け込んで発生する重炭酸イオン。炭酸ガスによって湯が酸性になると、重炭酸イオンも一緒に気化してしまうので、バースは独自の方法で中性の湯を再現している。担当者は「重炭酸イオンが多く溶け込んだ湯につかると、さら湯の場合より血行量が大幅に増加する」と説明した。
紹介された効能は疲労回復、肩こり、にきび、しっしんなど17種。論より証拠と記者も半信半疑で使ってみた。
1回の入浴で白い錠剤を3つ入れる。溶けきるまで15分ほど。無香料無着色で泡はきめ細かい。湯につかって10分ほどたつと、じんわりと温まってきた。ふだん記者は長風呂でのぼせるのだが、バースを入れた風呂に30分ほどつかっても不思議とのぼせなかった。ほどよく汗をかき、気持ちよく布団に入れた。
バースは9錠、30錠、90錠入りが用意され、1回にかかる金額は200~300円。重炭酸イオンの効果は24時間続くとされ、家族全員が順番に入っても効果を実感できるのもうれしい。
400グラム入りで税抜き4900円と、少々高級な入浴剤も登場した。マザーアース・ソリューション(東京・港)の「CLAYD(クレイド)」は、米カリフォルニア州の砂漠の下の粘土を原料とする入浴剤。さらさらした粉を湯に混ぜ込む。付属のスプーンで1さじ。ゆっくりと湯が濁るが、溶けないためしばらくすると沈殿する。
クレイドには温浴効果に加え、肌をうるおわせる効果があるという。女性だけでなく男性からの人気も高く、「汗のにおいが気にならなくなった」との声が聞かれるという。パッケージにもこだわっており、和とじで冊子型にしたものは手作業でつくられている。マザーアース・ソリューションの羽田賀恵代表は「疲れを癒やしてほしい相手へのプレゼントに購入する人も多い」と説明する。
店頭やインターネットのサイト上にはたくさんの入浴剤が並ぶ。新型コロナで気が抜けない日々が続くが、こんな時こそ自分に合う入浴剤を見つけてリラックスしたいものだ。
(五十嵐沙織)
[2020年5月16日付 日本経済新聞夕刊]
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