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目指す場所があることの幸せをかみしめて(井上芳雄)

第68回

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NIKKEI STYLE

井上芳雄です。自宅での生活が長く続いて、家で映画を見る機会が増えました。今回は最近見た作品の感想を紹介しようと思います。映画からは教えられたり、助けられたりすることがたくさんあります。エンタテインメントは生活に欠かせないものだということをあらためて感じています。

前回の連載から2週間たちました。僕は相変わらず自宅で過ごしています。打ち合わせや飲み会もオンラインという日々ですが、話している内容は少しずつ変わってきました。先に向けてできそうなことが、オンラインでの計画を中心に具体的になってきています。

そうやって仕事を進めながら、家でよく映画を見ています。オンライン飲み会をしていても、「最近どんなのを見た?」という話になります。新型コロナウイルスの流行が始まって、最初のころに見たのが『コンテイジョン』です。未知のウイルスによる感染の流行を描いた2011年のアメリカ映画で、今のコロナの事態を予言していたかのような内容です。まだ舞台のけいこをしていた2~3月のころから、周りの役者さんの間でも話題になっていました。僕も見てびっくりしました。医療崩壊や都市封鎖、買い占め騒動といった今、現実に起こっていることが次々と出てきます。10年も前に、この状況を克明にシミュレーションして映画にしていたことが驚きです。逆に言うと、予測できていたことなのに自分は何も知らなかったんだなと気づかされました。

映画自体はフィクションですが、未知のウイルスがどこで発生して、どんな感染経路をたどって、どうやって収束するのかが描かれています。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、最後は希望が見えるストーリーです。僕が見たのは、コロナが大変なことになってきたのを感じながらも、どうやって始まって、どういうふうに終わる可能性があるのか自分でも分かっていない時期だったので、その入口と出口が分かったという点で参考になりました。感染症の専門家が監修しているので、教科書のような映画でしたね。もちろん映画としてもハラハラドキドキして、とても面白かったです。

僕はパニックものやホラーは怖いので、普段はあまり見ません。でも、『コンテイジョン』で火がついたというか、今の状況に浸るような気持ちになって、ネットや交流サイト(SNS)の感想を参考にパニックものを何作か見ました。

そのうちの1作が、スティーヴン・キング原作の『ミスト』(07年)です。ある日、町が謎の霧に覆われて、人々が混乱していく話です。『コンテイジョン』に比べるとファンタジーの要素が強いのですが、急に極限状態に陥るという点は一緒ですね。スーパーの中にいた人たちの間で状況がどんどん変わっていったり、派閥が生まれたり、対立したりするのを見ると、結局、人間が一番怖いんだなと感じました。

韓国映画の『グエムル-漢江の怪物-』(06年)は、突然現れた怪物(グエムル)が人間を捕食しながら暴れ回るというパニックものでした。監督は今年のアカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』を撮ったポン・ジュノです。怪物にさらわれた娘を助けようと父親や家族が戦うのですが、怖いだけじゃなくて、コメディーっぽい場面があって笑えたり、家族愛だったり、社会風刺だったりといろんな要素があって、すごく面白かった。怪物の発生にからんでウイルスが拡散しているという描写もあって、噂だったり真偽のあやふやなものに人々が振り回される様子は、今の状況にも通じます。僕は韓国映画をあまり見たことがなかったので、こんなに素晴らしい作品があることにも驚きました。

今は何を見ても、自分たちの状況に結びつけてしまいますね。刑務所を舞台にした名作『ショーシャンクの空に』(94年)を再見したときもそう。刑務所の中で長く暮らしていたので、出られるとなったときに怖いと思う人の姿を見て、自分たちも早く元の生活に戻りたいと思いつつも、外に出るのが怖いという気持ちもあったりするのかなと感じました。

舞台や音楽に関連した映画では、『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』を見返しました。ミュージカル『コーラスライン』のキャストオーディションの舞台裏を追った08年製作のドキュメンタリーです。日本人では高良結香さんが出ています。彼女を含め、厳しい競争を勝ち抜いて、ブロードウェイの舞台に立つ人たちの姿を見て、みんな人生をかけて舞台を目指してたんだなと、あらためて感動しました。僕もそうだったし、自分がステージに立つ日を夢見て努力を重ねるのですが、その場が急に全部なくなってしまうなんて、これまで考えたこともなかった。なので以前この映画を見たときとは、また違う思いがこみ上げ、目指す場所があることの幸せをかみしめました。

今ニューヨークの劇場街はずっと閉鎖されています。現地の知人と先日話をしたら、経済活動が再開したとして、劇場が開くのは最後の段階じゃないかと言っていました。そこに向けて、関係者がいろんな話し合いをしているようです。知人が落ち込んでいないか心配していたのですが、けっこう元気そうでした。クオモ州知事の会見が毎日あって、「コロナの後は、さらによりよい街になるんだ」というようなことを言って鼓舞してくれるそうです。ニューヨークやブロードウェイの人たちはやっぱり強いというか、常に前を向いて生きてるんだなと感じました。

ミュージカル曲のソロはテレワーク向き!?

ミュージカルや音楽系で言うと、テレワークでみんなが歌ったのを集めたオンラインコンサートが盛んです。僕が見た中でよかったのは、『スウィーニー・トッド』『イントゥ・ザ・ウッズ』などの作詞・作曲家スティーヴン・ソンドハイムの90歳の誕生日祝賀コンサートです。ブロードウェーの俳優たちが、テレワークで彼の曲を歌って祝福しています。『Take Me to the World: A Sondheim 90th Birthday Celebration』という映像をYouTubeで見ました。

このコンサートは、歌っている人たちの表情がすごくよかった。テレワークはたいていカメラに向かって歌いかけるのですが、ポップスの曲だと表情がすごく変わることはないように思います。でもミュージカルはお芝居だから、歌っているうちに表情がどんどん変わっていって1曲ちゃんと見られる。だからミュージカル曲のソロって、実はテレワークに向いているのかなと気づいて、それは新たな発見でした。

もうひとつテレワークで難しいのは、伴奏をどうするか。ピアノを弾ける人が近くにいればいいけど、多くの人は録音した曲に合わせて歌っていると思います。ソンドハイムのコンサートでは、ある俳優は屋外で全編をアカペラで歌っていました。公園をテーマにしたミュージカルの曲だから外で歌ったのだと思いますが、とてもすてきでした。

映画に話を戻すと、映画館の多くが休業のため、配信で見られるようになった新作もあります。僕は5月に入って、『ジュディ 虹の彼方に』と『スキャンダル』を見ました。どちらもすごく面白かった。『ジュディ~』は『オズの魔法使』で知られるジュディ・ガーランドの生涯を描いた伝記映画です。僕は本人のことも、晩年もあまり知らかったので驚きのストーリーでした。ジュディ役でアカデミー主演女優賞に輝いたレニー・ゼルウィガーの素晴らしい歌声とともに印象深い内容でした。『スキャンダル』は16年にアメリカの放送局FOXニュースで実際に起こったセクハラの告発事件をシャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーの共演で描いた映画です。最近の実話が基なので、よく作れたなと感心したし、「#MeToo」のムーブメントにつながっていったことも分かりました。

それぞれ昨年の映画で、今年のアカデミー賞を受賞して日本では2~3月に劇場公開されたばかりの新作です。それが早くも配信で見られるのはうれしいけど、複雑な気持ちもあります。休業が長引くと、劇場は死活問題です。新作の公開延期も相次いでいるし、業界自体が立ち行かなくなるようなことにはなってほしくない。映画に助けられたり、教えられたりすることはたくさんあります。生きていく上で必要な、大事なものですから。

井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。5月は第5土曜も掲載、第69回は2020年5月30日(土)の予定です。

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