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ビジネス書棚端の平台に2冊並べて面陳列する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス書棚端の平台に2冊並べて面陳列する(紀伊国屋書店大手町ビル店)

ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している紀伊国屋書店大手町ビル店だ。4月半ばから3週間あまりの臨時休業をへて、この7日、時短営業による再オープンにこぎ着けたばかりだ。久々に営業再開した店頭で一番の売れゆきを見せたのは、経済についての大まかな筋立てを直観的に理解できるように書かれた、理系の独立研究者による異色の経済書だった。

直観的にイメージできる経済学とは

その本は長沼伸一郎『現代経済学の直観的方法』(講談社)。著者の長沼氏は理系の独立研究者だ。1987年、『物理数学の直観的方法』を出版、数学を直観的にイメージさせる独特のとらえ方と書き方で「理系世界に一大センセーションを巻き起こした」と本書略歴にある。今度はその方法を経済に持ち込み、現代経済学の中枢部分を一気に理解できる本を世に問うた。

著者によれば、「経済というものがまったくわからず予備知識もほとんどない(ただし読書レベルは高い)読者が、それ1冊を持っていれば、通勤通学などの間に1日あたり数十ページ分の読書をしていくだけで、1週間から10日程度で経済学の大筋をマスターできる」というスペックである。

そのために著者は経済を一通りマスターするには「9冊でOK」という形に絞り込み、それを9章構成にして、それぞれの内容を入門書でも専門書でもない中間レベルだけに的を絞ってコンパクトに解説するという方法をとった。最初に資本主義の話を置き、それに対置する形で近代以前に広がっていた農業経済の話をし、インフレとデフレのメカニズム、貿易やケインズ経済学、貨幣論や国際通貨論、さらにはブロックチェーンと仮想通貨(暗号資産)にまで射程を広げていく。

9つの章はそれぞれ独立した話として読める一方、大きく「暴走する資本主義をどうやって遅くするか」という縦糸を織り込み、資本主義文明論として読み進められるようにもなっている。パンデミックで経済が止まっている今、資本主義経済がよって立つ構造にまで視点を深めて、出口戦略の先にある世界経済や経済社会について思索をめぐらすには格好の本とも言えそうだ。

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